留学と語学力/中野葉月
どんどん更新しようと思いつつ、日々の勉強に終われていたら、学期も終わり、気づけば年が明け、実はもう帰国しているという状態です。「第一回とか書いているのに、第二回以降はどこにある?!」なんて探されていた方、申し訳ありません。
さてさて、今回の第二回目は「留学と語学力」という題でお届けしたいと思います。私も留学前はそうでしたが、「留学をすると語学力は伸びるもの」なんて幻想を抱いている方、結構多いんじゃないでしょうか。特に、語学留学ではなく、関大の交換派遣留学など、向こうの大学で現地の学生と肩を並べて学ぶスタイルの留学に対してあまりに大きな理想を持ちすぎてはいませんか?
私が留学を経験していえることは、実際、語学習得はそんなに甘い物ではありません。そのことをまずみなさんには理解していただきたいです。甘くないといいましたが、厳密に言うと、リスニング・リーティング力(インプットの力)は時間とともに伸びてくると思います。しかし、「英語力」というのはあくまでも4つの能力(リスニング・スピーキング・リーディング・ライティング)の総合力を指すことは言うまでもありません。単に真面目に大学に通って、授業をこなすというだけでは、アウトプットの力はほとんど伸びないと言っても過言ではないと思うのです。(語学留学の場合、状況は異なってくるはずですが…)というのも、私の経験から、大学の授業はむしろ「教授と私」もしくは、「テキストと私」といったような世界に近いということを学んだからです。
つまるところ、アウトプットを行う環境を自分で作らない限り、大学の授業ではスピーキング力・ライティング力を伸ばす環境は整えられていないということです。それではどうしたらいいの?なんて思う方、ちょっとしたtipsを紹介したいと思います。
まずはライティングから紹介しましょう。私の留学していたオーストラリアのアデレード大学にはLanguage centerがあり、語学の問題等でいろいろとアドバイスをする機関となっています。そのcenterのベテランの方は「ライティング力はリーティングの量に比例する」と強く言ってらっしゃいました。それはネイティブスピーカーが書いた物(言語的模範)をたくさん読み、それを時には模倣することによって、自分の表現の幅が増えるということでしょう。そして、私が自分のライティング力を伸ばすのにとても有益だったなと思う方法は、ネイティブスピーカーの人にProof reading/Editingをしてもらうことです。ただチェックしてもらうだけでなく、自分も隣に座って自分の文章がどう直るかという過程を見るというのが決め手です。というのは、ライティングの場合、自分の言いたいことが分かっていて、且つそれが正しい英語の表現に直るので、Proof reading/Editingのプロセスの過程でその両者の間につながりができることになります。その結果、ライティング力(強いては英語での表現力全体)を伸ばすにはとても役立つということになります。
そして、おそらくみなさんが一番気をもんでいるのはスピーキングでしょう。ライティングはProof reading/Editingについては協力者が必要ですが、後は自分の努力の問題になってきます。しかし、スピーキングになると、これは相手なしにはどうにもこうにも進みません。スピーキングはやはりできるだけ多く喋って、人が使っている表現をマネする(盗む)ということが大変重要になってきます。そして、自分の間違いを指摘してくれるような友だちがいればもっと理想的かもしれません。(失敗を正すことによって、より正確な語学能力が身に付くようです)ですが、ある程度英語力がつくと、自分の間違いを自分で気づくようになっていくので、とりあえずはたくさん喋って、今まで知らなかった、あるいは、聞けば分かるけど自分の表現にはなっていなかったというものを自分のものにしていくところから始めるのが理想的だと思います。
これまたベテランの(その道30年以上)ESLの先生が「リスクテーカーは伸びが早い」と言っていました。つまり、間違いを恐れずに、たくさん話し、自分の間違いを直して行くことが一番の近道ということなのでしょう。
そして、ESLの先生から教わったもう一つ心強いtipは、「インプットの力は常にアウトプットの力を上回る」ということです。これは、超初級者とネイティブに近い人にはあてはまらないことだそうですが、少なくともこれを読まれている、留学に興味を持っているであろうと思われる人はまさしくこの対象となります。「アウトプットの力がインプットに比べて劣っている…私ヤバいかも?」なんて心配しないようにして下さい。それは当たり前のことなのですから。
大人の第二言語習得の過程は子供の言語習得の環境とは全く異なるのですが、この場合、共通点がたくさん見受けられます。リスニング・スピーキングでは、最初は全く言葉を発することができませんが、大人の話す言葉を聞いて自分の中に貯めます。そして、簡単な言葉や表現から話すことができるようになりますが、きちんと言語を使えるようになるまでにはまだまだ十分ではないので、やはり大人の話す言葉を模範にし、表現力や単語力を付けて行くわけです。リーディング・ライティングは文字が読めるようになってからの話しになりますが、やはり読書と文章力との間には密接な関係があるのはお分かりだと思います。小学校1年生と2年生、1年違うだけでも知っている言葉の数や文章力も格段の差があります。それは読んでいる量の差と、その読み物で使われている言葉のレベルの違いがあるからだと思います。そして大切なことは読み物のレベルです。あまりに簡単すぎてもいけないですし、あまりに難しすぎて理解ができないとなるとリーディングをしているとは言えません。そこを気をつけて自分に適したレベルを選ぶことが重要になってきます。(Language centerの人のアドバイスだと、ハイティーン向けのもので、内容が面白いと思えるものからスタートするのがいいとのことです。)とりあえず、さらっと状況を比較してみた上で、類似点をたくさん見つけれたことと思います。
少し話しは変わって、次は、日本人がもう一つ思いがちなことについて指摘させていただきましょう。「日本人は文法やリーディング、ライティングはしっかりやっているから大丈夫。リスニング・スピーキングだけ留学先で勉強すればいい」ということです。留学すれば分かると思いますが、全く十分なんてことはありません。リーディング、ライティングについては比較的早い段階でそのことに気づくだろうと思われますが、悲しいかな、どうしても受験の名残なのか、なぜか日本人は文法力には並みならぬ自信を持っている人が多い印象を受けます。私が英語習得の過程で気づいたのは、日本の英語教育で習得した文法の力は素晴らしいけれども、決して完璧ではないということです。それを頭に入れて、ある程度謙虚な気持ちで「文法」に対して接して欲しいです。
長々とあーだこーだと述べてきましたが、取り違えないで欲しいのは「留学をしただけでは英語は伸びないから、英語“を”勉強しないといけない」ということです。(語学留学をされる場合は別ですが…)実際、私の留学生活を振り返ってみると、英語“を”目的として勉強したとは思えません。これをしたから英語力が伸びるというものではなく、日々のちょっとしたことの積み重ねが最終的には積もり積もって、総合的な英語力として目に見えてくるのだと思います。長々と書きましたが、一番大切なことは対象の言語にどっぷりと漬かってその場で吸収できるものをどんどん吸収して行くことだと言えるでしょう。
次回は早めに更新するように努力しますので、また読んでいただければ幸いです。