(2024年度)

 
  



   
   
    
    
   
    


 









 



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対立・衝突から共生へ――21世紀のトレンド



共生の時代

 「多文化共生」、「自然との共生」、「共生社会」というキーワードが日常生活、新聞雑誌、テレビ、企業のキャッチフレーズでもよく目にするようになりました。その裏には文化摩擦、環境破壊、高齢化社会、格差社会があって、これらが喫緊の課題であるからです。それゆえわたしたちは、共生というテーマをいま現代、しっかりと受け留めなければならないと思います。文化共生学専修では、文化の視点から共生の問題を考察しますが、その具体的な内容は、「教授目標」や「カリキュラム内容」で示すとおりです。

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 現代社会はグローバル化し、資本の進出や国際間の人的交流の進展にともない、異文化との接触がますます増大しています。その際、外国の文化構造の本質を把握することが異文化を理解する前提となります。そこからどのようにすれば共生が可能となるかを考えなければなりません。それが現代の多文化社会における衝突や摩擦を回避し、未来への展望を切り開く第一歩となるからです。

 たしかに、異文化間には文化的な差が当然存在しますが、重要な論点は、文化間の優劣はないということです。日本では明治時代以降、欧米文化を導入してきましたので、欧米文化優位という先入観がありました。しかしこのような古い先入観を棄てる必要があります。また現在でも、とくに「先進国」といわれている国々では、文化ナショナリズムや文化優位性をふりかざす傾向が強いといえます。しかしその視点じたいが、対立・衝突を生みだす根源ではないでしょうか。

 かりにそのような人が北極圏で生活をしたとします。するとイヌイットの人びとのほうが、はるかにすぐれた生活の知恵をもっていることを思い知るでしょう。砂漠地域で住んでいる人びとの場合でも、同様な生活の知恵を身につけています。文化優位性をふりかざしても、とてもそのような人間は過酷な自然の中では生きていけません。それぞれの文化は、営々と積み重ねられてきた文化の伝統をもっているのです。

 それでは、具体的に文化共生学に対して、どのように取り組んでいけばいいのでしょうか。たとえば、みなさん方が外国へ留学したり、旅行したりしますと、だれしもカルチャー・ショックを受けますね。その際、日本文化と比較しながら、文化の差を認識します。これが一種の比較文化論ですが、それを前提にして「異文化理解」を深めていくと、文化の壁や共生の問題が浮かんできます。このような各人の文化観を出発点として、そこからどうすれば共生をはかることができるかを、自分の頭で考え出していただきたいのです。

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 本専修は2006年に設置されましたが、従来、文学部の専修が扱ってこなかった学問領域にもウイングを広げ、新しい研究分野を掘り起こす試みをおこなってきました。おかげさまでわれわれの専修に関心を示す学生が増えてきたことは、専門領域が時代のニーズに合致するからだと理解していますが、ありがたいことと思っています。

 まずわれわれの専修では、1年次生に対し、効果的な導入教育をすることによって、学生のみなさんの知的好奇心を刺激します。2、3年次にそれを専門的なテーマに定着させ、4年次の卒業論文につなげるというカリキュラムの有機的なつながりを重視しています。とくに専門科目の演習では、知識を受動的に受け入れるという学生ではなく、みずから積極的・能動的に考え、行動する人材を育成することを目標においています。そして社会的評価の高い文学部卒業生を世に送り出したいと願っております。