関西大学文学部英米文化専修 小林剛ゼミ

Department of Cross-Cultural Studies, Faculty of Letters, Kansai University

リンク:ツーリズム

6.ツーリズム
現在様々な形でグローバリゼーションが進んでいますが、観光業もその影響を受けているといえるのではないでしょうか。リゾート開発や最近ニュースでも話題になっている医療ツーリズムなどがその一例だといえるでしょう。技術の進歩やインターネットの普及により、国を超えて旅行をすることが容易になりましたが、それによって現地で生じている問題について考える必要があるのではないでしょうか。

医療ツーリズム
医療ツーリズムとは、自分が住む国とは異なる国を訪れ、医療サービスを受けることをいいます。近年注目されている医療ツーリズムでは、安価な手術代、高度な医療技術、あるいは整形手術などを受けることが主な目的となっています。自国では技術や法律上治療が困難なもの、または自国では高額で受けることのできない治療を受けるため、先進国の患者や発展途上国の富裕層の患者などが他国へ渡り、受診するものが中心となっています。渡航先には医療技術が優れ、さらに医療費が安いインドをはじめ、シンガポールやタイなどが多く選ばれています。医療ツーリズムに訪れる人は、滞在期間が長く、またその見舞い客も訪れるなど恩恵が多いため、現在多くの国が医療観光への参入を目指しています。

しかし、ここには様々な問題も生まれています。押して
医療ツーリズムが進んでいるタイでは、すでに問題が表面化しています。欧米から一流の専門医を数多く集め、高級ホテル並みの設備を持ち、莫大な医療収入を稼ぐ首都バンコクの民間病院に対し、地域医療をになう地方の公立病院は深刻な医師不足で、700人の外来患者と60人の入院患者を6人の医師(4人は大学卒業後3年未満)が担当しているという現状です。また、タイでは、民間病院と公立病院の医師の所得格差が5倍あり、国の予算がつかないため、公立病院は設備も老朽化しており、「医療ツーリズム(医療観光)」のお金を国民に還元すべきとの声が高まっているようです。
クローズアップ現代(2011/07/11)
http://topicsnow.blog72.fc2.com/blog-entry-891.htmlより

日本でも医療ツーリズムを推進しようという動きが活発になっていますが、その動きに対して、日本医師会は国民皆保険制度の崩壊につながる可能性があると指摘をしています。
国民皆保険の崩壊につながりかねない最近の諸問題について
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20100609_2.pdf#search
社団法人 日本医師会 (2011/07/11)


リゾート開発
リゾート地の代表として、ハワイやグアムが挙げられますが、ハワイやグアムと聞けば、多くの人は青い海、白い砂浜、また高級ブランドショップでのショッピングなどを思い浮かべるのではないでしょうか。これらのリゾート地は日本人に非常に人気であり、グアムに至っては、全観光客のおよそ8割が日本人なのです。しかし、私たちは、美しい南の島という創られた<イメージ>しか知らずに、観光をしているのではないでじょうか。その裏にある問題や戦争という歴史を知る必要はないのでしょうか。


『グアムと日本人 戦争を埋立てた楽園』 山口誠著
出版:岩波書店 (2007年)
『イメージの<楽園>観光ハワイの文化史』 山中速人著
出版:筑摩書房 (1992年)
『ハワイの歴史と文化 悲劇と誇りのモザイクの中で 』 矢口祐人著
出版:中央公論新社(2002年)

Posted by yui| 2011-08-03 (Wed)