ハレ便り2018


送った荷物が届かない



 たった4ヶ月とはいえ、夏休みに2週間くらい滞在するのとは異なり、手荷物だけでは足りないので、衣類や靴などを小包1個に入れて、事前に送っておいた。これが1週間過ぎてもなかなか届かない。10日目ごろに1通の手紙が届いた。荷物は税関に留め置かれているようだ。中身を説明して、引き取ってこなければならない。大家さんが車でメルゼブルク通りにある税関(Zollamt Halle)に連れていってくれた。余談だが、通りを進んでいくとメルゼブルクという町に出る。ここは1000年以上前のドイツ語で書かれた「メルゼブルクの呪文」の写本が保管されていることで有名である。
 さて、大家さんとはこの9年間ずっと付き合いが続いており、毎年ドイツへ来るたびに、いろいろなところへ連れていってもらっている。一昨年、ゼミ生が薬草の歴史を卒論のテーマにするというので、植物に詳しい大家さんに本を借りて日本に持ち帰った。それを昨年航空便で送り返したのだが、それが税関で止められた。日本はEUに入っていないからと言うが、多くの小包が日本からドイツへ送られているはずなので、運が悪かったのだろうと思っていた。ところが今回もまたである。
 大家さんは、「あなたは何も言わなくていいから、私にまかせなさい」と言う。去年の経験があるのだろう。建物に入るとあまり人はおらず、すぐ話をすることができた。担当は比較的若い男性で、大家さんとの会話はスムーズに進んだ。日本の郵便局で書いたものの控えを見せると、この数字は何だと聞くので、日本円ですと私は答えた。中身はズボンやパジャマ、靴、そして本である。私は何もやましいところがないので、開けてみせれば手っ取り早いと思うのだが、開けてみろとは言わず、これは新品かと聞く。即座に大家さんは、いや古いもので、自分で使うのだと説明する。それじゃ、ここにサインをしてくれと言われ、サインをし、小包を受け取った。
 大家さんの話では、去年は苦労したという。税関には多くの人がいたために待たされた、彼らの多くは商人で、他国から送った商品をめぐって、係官と激しいやり取りをしていたという。新品を売りさばくために持ち込んだ場合、お金を払わねばならないのだろうか。ともあれ、新品ではなく、古いものだと言わなければならないと大家さんは言う。ちなみに、私がドイツから日本へ小包を送ると、半分くらいは開けられて、再び無造作にテープで閉じられている。ドイツではあくまで納得のいく説明をすることを求めるのだろうか。