ハレ便り2018


デモ行進で路面電車動かず



 
 ハレの地図を広げると南北に長い。私の生活圏は北半分で、地図では真ん中あたりにある中央駅は、私にとっては最南端である。そこから少し北へ行くとMarktplatz(中央広場)があり、ずっと北上するとReileckという場所がある。多くの路面電車が行きかう分岐点としてにぎわっている。最初「ライレック」と読んでいたが、Reilという人にちなんでつけられた角地(Eck)らしいので、「ライルエック」が正しい。ただ発音してしまえばほとんど同じである。余談だが、ある旅行ガイドブックに「ラタウス通り」とあったが、よく見るとRathausと書いてあり、「市役所通り」である。これはさすがに「ラートハウス通り」と書いたほうがいいのではと思ったが、これも発音すると「ラタウス」になるのだろうか。
 さて、中央広場から北部にある私の住まいまで帰るとして、Reileckはだいたい中間地点である。中央広場より一つ前の停留所で帰りの電車を待っていると、停留所のスピーカーが盛んに何か言っている(比較的大きな停留所には電車があと何分で着くかを表示するモニターがあり、スピーカーもついている)。Demonstration(デモ行進)という言葉しか聞き取れない。この時点ではまだ電車は行き来している。ただそうこうしているうちに、私の乗る1番線の表示が消えた。デモのために交通が乱れているのだろう。3番線の電車が来たので飛び乗った。少なくともReileckまでは連れていってくれる。中央広場を過ぎ、2つ目の停留所Moritzburgring(モーリッツブルクリング)に来たとき、停留所のモニターに1番線の表示が見えた。復活したかと喜び勇んで、乗り換えるために降りた。すると私をあざ笑うかのように表示がまた消えてしまった。今度はすべての電車の表示が消えていき、待っていた人々も少しずついなくなっていく。若い二人の男女が通りかかり、デモのために電車は来ないよと言った。「歩かなければなりませんね」と言って私も北へ向かって歩き出した。
 歩いていると、前方からパトカーが道の真ん中をゆっくり走ってくる。しばらくすると音楽を鳴らしながら、デモ行進がやってきた。こいつらのおかげで歩くはめになってしまったのだと思いながらも、興味を持って眺めていた。彼らをやり過ごしたあとも歩き続け、Reileckまで来た。やや北東方向に歩いていくと、パウルス地区である。とても美しいパウルス教会(Pauluskirche)があり、そこから放射状に道が出ている。この近くには数年前まで大学の独文科があった。今は移転しており、独文科についてはいずれお話ししたい。9年前は下宿先からここまで歩いて通っていた。そんなわけで、Reileckまで来れば、家まで歩いて帰ることができる。昔の記憶をたどりながら、さらに歩いてようやく家にたどりついた。
 大家さんに言わせれば、南から北に向かってはのぼりなのできつい。北から南へは下りなので、昔は家から中央広場まで歩くこともあったという。歩いて帰ってきてとんだ災難だったと言っただけなのだが、まってましたとばかりに、昔は80キロを自転車で走ったとか、一日40キロ歩いたとか、しばらく昔話を聞かされた。

写真1:路面電車があと何分で到着するかがモニターに表示される。路面電車はいろいろな顔を見せてくれて楽しい。できればいつかフォトギャラリーのようなものを作ってお見せしたい。
写真2、3、4:パウルス教会。ここから放射状に道が出ているので、写真4のように、どこからでも教会が見える。逆に、教会からどこかへ行こうとするときは、道を間違えるととんでもない方向へ行ってしまう。どの道も同じに見えるのである。

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