ハレ便り2018


空港にて


 2009年度に在外研究で1年間ハレに滞在したが、2018年5月15日から9月9日まで約4ヶ月間、再び在外研究でハレに住むことになった。まずは到着時からお話ししたい。関西空港でチェックインする際、ルフトハンザの職員から、4ヶ月の滞在であれば、入国の際理由を説明できるようにしておいてくださいと言われた。2週間の旅行と言えばいいですよねと私が言うと、とまどいの表情を見せていた。航空会社の助言に従う必要もないと思うが、フランクフルト空港での入国審査では、4ヶ月滞在しますと正直に言った。とたんに審査官は目の色を変えて関心を示し、隣で業務をしている別の審査官までがこちらに顔を向けて話に加わってきた。だから言わんこっちゃない。「日本のドイツ領事館で聞いたら、そのまま入国していいと言われた」と説明すると、3ヶ月以上滞在すると罪になる(strafhaft)と言う。どうやら何もしないで4ヶ月いると思われているようだ。「もちろん、できるだけ早く外国人局に行って、滞在許可を取ります」と言うと納得してくれた。その間、研究のための滞在であるといったことをあれこれ説明もした。
 フランクフルトから国内便に乗り換えてライプチヒ・ハレ空港まで行くので、再び手荷物検査がある。毎年2週間くらいの滞在で来るときは、スーツケースのほか肩掛けカバンを持ってくるだけだが、今回は小型のプリンター(Canonのip100)があるので、肩掛けのほかにリュックサックを背負っている。以前は手荷物検査でパソコンの電源を入れてみろと言われたことがあったが、最近は多くの人がパソコンを持ち歩くようになったからか、面倒なことは言わなくなった。ところがプリンターはそうはいかない。ip100の外見は金属の箱で、プリンターらしくない。何か入っているかと聞かれたので、インクが入っていますと答えたら、検査官はぷっと噴き出したが、それでも疑惑は拭えぬらしく、同僚に相談するので待ってくれと言った。同僚が来るまで滞在の目的などを聞かれた。どこに住むのかというので、ハレ(Halle an der Saale)だと答えると、それはどこだと言う。ドイツ人にも知られていない町なんだなととまどいながら、ドイツ東部(Ostdeutschland)だと答えた。やがてやってきたのは警察官の服装をした人だった。最初の係員がいろいろ説明している。爆薬(Sprengstoff)が入っていると困るのでねと言いながらも、やっと解放してくれた。もし電源を入れてみろと言われていたら大変だった。ACアダプターはスーツケースに入れてあって飛行機の中だからである。
 手荷物検査が終わると、国内線に乗り換えるだけである。ここまで来ると緊張が解け、ほっとする。国内線となると飛行機は簡素なものになるが、乗客も気軽な気持ちで乗っている。アジア人は私しかいないが、それがまたいい。1時間の(精神的に)快適なフライトである。ゲート前の待合室に来ると、アナウンスをしていた。aus technischen Gründen(技術的な原因で)という言葉だけが聞こえた。カウンターの人に「単なる遅れ(Verspätung)ですよね」、と聞いたら、「だといいんですけどね」と笑いながら答えてくれた。カウンターの人も待っている人たちも落ち着いているようで、案の定まもなく搭乗することができた。