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2005年06月21日

テレビ広告がブランド構築に与える影響(上)-商品やカテゴリーの関心・知識はどう作用するか?-(阿部 2005)

 この論文は,テレビ広告がブランド構築に果たしている役割を探るために,広告のクリエイティブ評価のあり方を再検討し,CMテストで収集できる項目を変数とし,消費者行動研究の成果も取り入れながら,「広告が,ブランド構築への寄与という観点からも評価されうるような枠組」(13ページ)を提示することを目的としている。

 既存CMテストの限界を考慮して,①クリエイティブの短期的効果と長期的効果の測定,②関与や処理能力といったオーディエンス特性が広告とブランドそれぞれへの態度形成に与える影響,③自由回答法でのデータ収集と分析,に着目したCMテストを提案するとしている。広告が態度に与える短期的効果と長期的効果をそれぞれインプレッションとイメージの構築とし,[CMへの接触]-<短期的効果>→[インプレッション]-<長期的効果>→[イメージの構築]という2ステージ広告モデルが考えられるとしている。オーディエンス特性は短期的効果,長期的効果に影響を及ぼすと考えられ,特に長期的効果に影響があると予想されるとしている。これは,精緻化見込みモデルにおいて高関与で,処理能力が高い場合は中心的経路で処理されるためである。
 CMテストを行うにあたり,2ステージ広告モデルに基づき研究課題を仮説として提示している。具体的には,①CMへの接触はブランド・イメージの構築を促すか,②インプレッションがイメージに発展するという2ステージ広告モデルの妥当性,③クリエイティブ要因とオーディエンス特性は,ブランドに対するインプレッションにどう影響するか,④クリエイティブ要因とオーディエンス特性は,イメージの構築にどう影響するか,⑤クリエイティブ要因とオーディエンス特性は,インプレッションとイメージの構築のどちらにより強く影響するかの5つである。
 この研究では,ブランドとしてトヨタが使われている。自動車カテゴリーではメーカー名とブランド名は同等と認識されているので,それらを同義語とみなすとしている。①についてはCM接触前と2ヶ月後のブランドへのイメージを比較するが,データ収集間にトヨタの広告に接触する可能性を考慮し,被験者を実験群と統制群に振り分けている。まず,オーディエンス特性として,デモクラフィック情報,自動車への関心と知識,トヨタの純粋想起度,トヨタが1番好きな自動車メーカーかを尺度評価で収集し,トヨタのブランドと広告へのイメージを自由回答法で答えてもらい,広告刺激として実験群にはトヨタの企業CM6本,統制群には他の自動車メーカーのCM6本を用意し,リアリティーを高めるため,それぞれのグループにメルセデス・ベンツのCM2本を加えた合計8本を見せたとしている。CM接触を3回繰り返し,3回目の視聴で1本1本を見終わるごとに感想を自由回答法で,CMが好きかどうかを5段階尺度でそれぞれ評価させ,すべてのCM視聴後1時間たってからトヨタ・ブランドへのインプレッションを自由回答で答えてもらい,長期的効果を測定するために2ヶ月後に再びトヨタのブランドと広告それぞれへのイメージを自由回答法で収集したとしている。②~⑤については,①で検証された広告効果にクリエイティブ要因とオーディエンス特性が短期的効果であるインプレッション,長期的効果であるイメージの構築にどう影響を与えるかを調べるために実験群だけを対象に分析を進めるとしている。サンプル数は脱落者などもあって最終的に実験群35人,統制群34人である。
 実験に使われたCMの内容や,質問項目,予備分析として自由回答法で収集したデータを数量化し集計したものを表などにして記載しているが,問題の核心を探るには非集計レベルでの分析が不可欠だとしている。集計された記述統計の分析は,関心や知識などの「個人の異質性に絡んだオーディエンス特性」(19ページ)が広告効果に与える影響を考慮していないこと,実験群と統制群をランダムに割り振ったが両者が同質の対ではないことがその理由としてあげられている。
 非集計レベルでの分析,分析結果からの仮説の検証,広告戦略に対するマネジリアル・インプリケーション,研究の限界と課題は本論文の(下)にて紹介するとしている。

出展:阿部誠(2005)「テレビ広告がブランド構築に与える影響(上)-商品やカテゴリーの関心・知識はどう作用するか?-」『日経広告研究所報』,第220号,13-19頁。

投稿者 : 2005年06月21日 22:26

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