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2005年06月06日

「ブランド評価と広告」調査分析―2―ブランド評価形成における業種間差異(土山 1998)

1.全商品ブランドによる評価形成の流れ
2.業種別の評価形成パターン
3.企業ブランドによる評価形成の流れ
4.まとめ

1.全商品ブランドによる評価形成の流れ
 本稿では,ブランド評価形成の流れを導き出すために175個の商品ブランドに相関係数,因子分析を行い,4つの因子に測定項目をくくれると判断し「これらによって共分散構造分析を行うことにした」(37ページ)。その4つの因子とは広告が思い浮かぶ,新聞広告で見かける,テレビCMで見かける「広告接触」と名前を知っている,製品のデザインが思い浮かぶ,いろいろなイメージが思い浮かぶ「ブランド認知」と他にない特徴をもっている,品質面で特に優れている,買って間違いがない「品質認知」と憧れを感じる,親しみや好感を感じる,自分にふさわしい「愛着」である。この4つの因子間で「品質認知」と「愛着」,「広告接触」と「ブランド認知」,「ブランド認知」と「品質認知」の関係が強く結びついており,「『広告接触』が『ブランド認知』を促し,次いで『品質認知』を深め,さらに『愛着』へと発展するという流れを指摘することができる」(38ページ)。この形成過程はブランド評価が形成される基本的な流れを表すものである。

2.業種別の評価形成パターン
 耐久消費財や嗜好品が全く同じような流れでブランドの評価が形成されていくとは限らなく,業種によって形成過程に違いが存在するため,ここでは業種別に評価形成の流れを調べている。基本的な流れを表す全商品ブランドの流れと同じ結果だったのが国産乗用車と住宅であった。しかし,同じ乗用車でも国産と輸入車では異なった結果が出ており,輸入車と腕時計の場合,4つの因子の流れに違いはないが「品質認知」の項目に色々なイメージが思い浮かぶ,憧れを感じるが移動している。これは輸入車の場合「品質認知」に「性能,機能だけでなく車がもつ独自のイメージや,さらにそれから喚起される憧れの気持ち」(38-39ページ)が存在するからである。また,腕時計の場合「ブランド名やデザインが同時にそのブランドの特徴と認められ,品質への評価」(39ページ)同時に憧れへの気持ちへとつながるからである。次にファッションのブランド評価形成の過程で,輸入車と腕時計の場合と比較すると「ブランド認知」と「品質認知」の経路が逆転している。これはファッションの場合,判断や確信のステップを先に踏むことによって「ブランド名やロゴマークを購買時や話題にするときに扱っている」(39ページ)次にビール評価形成の流れは「広告接触」→「ブランド認知」→「イメージ」→「確信・愛着」となっており「ブランド名を覚えた後には,そのビールの漠然としたイメージが形成される」(40ページ)。たばこの場合,「確信・愛着」が先で最後に「イメージ」となる。これは広告媒体により自分の好みのブランドを決定し,そのブランドイメージの広がりがブランド優位性を示すからである。ブランド評価形成過程において殆どの業種で「広告接触」が最初に位置するが,パソコンだけは「品質認知」が最初で「広告接触・認知」「愛着」の3つの因子の流れになる。これは「ブランド名を覚えるよりも先に,使ってみて品質や特徴を評価したうえで,広告などによってブランドをしっかりと心の刻みつけることが多いと思われる」(40ページ)からである。そして「広告接触」と「ブランド認知」が同じ因子になったのは広告によってブランド名がより強く認知されるからである。

3.企業ブランドによる評価形成の流れ
 ここでは企業ブランドの評価形成の流れを調べるため114企業を対象とした。その結果,若干の相違は見られたが全商品ブランドの時と基本的に同じになった。この理由としては「企業名を認識したうえで商品ブランドを評価することが多いこと」(40ページ)が挙げられる。また,パソコンの企業ブランドの評価形成過程も商品ブランドと同じように「品質認知」から始まる流れになっている。

4.まとめ
 業種間のブランド評価形成の流れにおいて,輸入車や腕時計,ファッション,ビールやたばこ,パソコンなどは独特な過程であるが,殆どの業種で全ブランド評価形成過程を示しており,商品ブランドと企業ブランドの評価では多少の違いはあったが基本的に同じ過程を示していた。また「広告は認知の足掛かりであることに加えて,ブランドアイデンティティー育成に影響を及ぼしている」(41ページ)と論じている。

出典:土山誠一郎(1998),「『ブランド評価と広告』調査分析―2―ブランド評価形成における業種間差異」『日経広告研究所報』,32(1),37-41ページ。


投稿者 : 2005年06月06日 19:46

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