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2005年05月17日

国際広告とイメージ(真鍋 1998)

目次
第12章 日本人論の検証
第13章 日本人の内容分析

 日本人論は古くからさかんであり,ここ10年ほどは外国人による日本人論が多く現れ,それがまた日本人による日本人論に拍車をかけた結果,日本人論ブームというべき長期的な現象が起こっているとしている。しかし,発表された多数の著作において,「それらを実証的に検証するという作業はほとんどなされておらず,したがってそれらの多くはどこまでも仮説の段階にとどまっているといわなければならないのである」(286ページ),「大量観察的な『社会調査』にもとづく実証的データの蓄積が十分になされていない」(286ページ)としている。こういった点から,これらを実証的に検証することには意義があるとしている。また,「現在,実証的研究においては,分析作業の手続きに関して厳密かつ詳細な記述を試みることが重要な課題となってきている」(364ページ)という考えから,調査方法や作業の手順などが極めて詳細に述べられている。
 
 第12章では「日本人論の諸命題がどの程度人びとに浸透-認知度と共感度-しており,そのことが人びとに対してどのような機能を果たしているかを捉えること」(288ページ)を目的として,質問紙調査を行っている。まず,単純集計というデータ解析法によって調査結果を記述している。次に,「質問諸項目群ごとに『スケール』を作り,それに被験者の『バックグラウンド変数』(『デモグラフィック変数』と『対外経験変数』)を加えて,それら諸スケールと諸項目の相互間の関係をPearsonの『積率相関変数』によって示した『相関マトリックス』を作成」(351ページ)し読み取るという手法を用いている。これらの作業から,「①日本『人・文化・社会』の単一性・同質性・ユニークネスという命題,②外国(人)と日本(人)はまったくちがうという『特殊主義的な』命題,③血のつながりの影響についての『決定論的な』命題,④外国人の社会参加を制限しようとする『閉鎖的な』命題,⑤日本人論である(になる)ための条件についての『硬心的な』命題」(354ページ)といったような日本人論の諸命題が現在でも多数の人に信じられていることがわかったとしている。そして,「このような諸命題を信じ込むことから日本の文化的ナショナリズムが生み出されてきているということである」(354ページ)としている。また,「どこまでも『仮説』の段階にとどまっていたもののある部分を『知見』の段階にまで引き上げるという役割を果たしたといえる」(351ページ)としている。
 
 第13章では,「日本人論の検証の準備作業として,日本人論のさまざまな記述を分類・整理することを試みたい」(356ページ)として,日本「人・社会・文化」に関する18の外国人によって書かれた文献を「雪だるま方式」と「総当り方式」によって収集し,日本「人・社会・文化」に関する記述を姉妹型カードに抜き出し,KJ法的整理で分類し,大きな枠組みとして経済・政治・社会・文化・国民性(自然を含める)の5つの基準が採用されている。

出典:真鍋一史(1998),『国際イメージと広告-国際広告・国際イメージ・文化的ナショナリズム』 日経広告研究所,281-432ページ。

投稿者 : 2005年05月17日 18:14

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