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2005年05月18日

先端流通産業のメガトレンド:日本と世界(田村 2004)

要約
 この論文では,まずイトーヨーカ堂などに代表される日本の先端流通産業の特質を明らかにするため,カルフールなどの世界の先端流通産業と企業規模構造,市場シェアの変化という点で比較分析することで検討している。また停滞に悩む日本の先端流通産業の原因を明らかにするため,日本・世界の先端流通産業での業態構造の変化,国際化への対応の相違を比較することでそれを検討している。

Ⅰ,日本の先端流通業の特質
 まず,企業規模の分布を世界流通業と比較した結果,世界流通企業のトップ100の全体の売上高は日本の6.2倍,最大企業の売上高は7.6倍,最小企業の売上高は4.9倍になり、さらに最大企業の成長率は7.5倍となる。この結果は,日本流通業は世界流通業に比べて,大手の流通企業への経済集中が遅れていることを示している。
 次に,1990年から2002年までの売上シェアの変化を比較すると,世界流通業では上位企業になるほど売上シェアを伸ばしている一方,順位クラスが下がるとともに売上シェアの増加率は減少している。これに対して,日本流通業では上位20位のシェアの伸びは低いが,順位クラスが下がるとともに成長率は伸び,70位以降は再び減少している。このことは,日本流通業の経済集中の過程は,世界流通業とまったく異なり,売上シェアでは,上位企業と後続の企業との差が縮まってきていることを示している。
 また市場シェアの構成員について,世界流通業では上位のシェアを構成する企業は激しく入れ替わっているが,日本流通業ではその入れ替わりは安定している。このことは,日本流通業での競争は,世界流通業と比べて静態的であることを示している。
Ⅱ,日本の先端流通産業の停滞要因
 まず,世界と日本の業態構造の相違から,この問題を検討する。「世界流通業の先頭集団を牽引しているのは廉売型量販店チェーンである。しかし,日本流通業では,廉売型量販店の先頭集団牽引力は停滞し,百貨店や専門店が台頭しつつある」(24ページ)また,百貨店や専門店は伝統的業態であり,スーパーマーケットやハイパーマーケットなどの成長グループと対照的に非成長グループという業態構成に区分されることから,日本の先端流通業の停滞要因の一つは,上位企業の中に百貨店などの非成長グループが多い点にある。また,国際化への対応の相違について考察すると,1990年代に世界流通業は市場開放に合わせて,海外市場外へ参入することによって,外国売上依存率を高めた。それに対し日本流通業の国際化への対応は,百貨店などの海外での日本人旅行者を主に標的としたもので,多くの流通企業は国際化への対応に遅れをとった。このことは,世界流通業は海外市場の開拓という非ゼロ和ゲームを行っているのに対し,日本流通業は主に国内市場を標的としたゼロ和ゲームを行ったため,国際舞台において停滞したことを示している。  
 
結論は以下の通りである。日本流通業の特性は,上位企業のシェア成長率は鈍化しているが、その構成要員の入れ替わりは静態的であり,その結果,日本流通業での大手への経済集中は世界流通業より遅れていることである。また,日本の先端流通産業の停滞は,業態構成員の成長率の低さと国際化への対応の遅れに要因があるとしている。最後に,日本の流通業はなぜ国際化への対応に遅れをとったのか,分析することを今後の課題としている。

出典:田村正紀(2004),「先端流通産業のメガトレンド:日本と世界」『流通科学研究所モノグラフ』No.069。

投稿者 02umeda : 2005年05月18日 14:38

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コメント

「世界流通業の先頭集団を牽引しているのは廉売型量販店チェーンである。しかし,日本流通業では,廉売型量販店の先頭集団牽引力は停滞し,百貨店や専門店が台頭しつつある。」(24ページ)についてですが「・・・・である。」←閉じカッコの句点はとる。を参考にして変更してください。

投稿者 02daigo : 2005年05月18日 18:03

余分な空間があるので訂正してください。改行は1行です。他の人のアップを参考にして

投稿者 02daigo : 2005年05月20日 17:53

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