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2005年07月16日

The development of foreign retailing in Taiwan: The impacts of Carrefour(Tsuchiya 2003)

要約
 この論文は台湾におけるカルフールの成功要因とカルフールが現地流通システムにもたらした影響について述べられている。ここでは台湾におけるカルフールの事例を通じて流通外資がどのように現地市場に参入し,現地流通システムにどのような影響を与えるのかという問題について考察することを目的としている。

1.カルフールの成功に寄与した要因
 カルフールにおけるオペレーションは成功と見なされており,その成功の要因について述べられている。まずは台湾の経済環境について,1980年代後半に台湾の経済が急成長を遂げたことや,シンガポールとは異なりしっかりとしたチェーンオペレーションを持つと同時に台湾のGNPが多くのアジア諸国と比較して高いことが述べられており,このことがカルフールが参入し成長するための十分な機会を与えたとしている。次に台湾におけるハイパーマーケットの低開発について述べられている。台湾における流通機構は1986年の外資に対する規制緩和以前は十分発達していなかったとしており,デパートだけが大規模小売業を構成していたと述べられている。また,スーパーマーケットチェーンは存在していたが,それらの多くは中小規模の店舗だったと述べられている。この状況のもと,カルフールが台湾市場に参入した時には現地における大規模な競合他社はなく,そしてハイパーマーケットは流通革命によりもたらされた新しく大規模な小売フォーマットとして受け入れられたとしている。次に現地ビジネスパートナーについて述べられている。カルフールが台湾に参入した際,政府の規制によりジョイントベンチャー方式を採用したと述べられている。パートナーは台湾で最大の食品会社であるUPEであり,UPEとその子会社との提携がカルフールにとって好都合だったとしている。カルフールはもしたくさんの所有する店舗を展開することができなければ,規模の経済と低価格での供給を通じて成功することができないと述べられており,そのため店舗数の急速な増加は競合企業のいない未発達市場における成功のための一つの重要な基準であるとしている。しかしながらこの急速な発展はたとえハイパーマーケットの発展のための費用がデパートの費用と比べて比較的安かったとしても,小売企業にとって財政上の重圧の原因となりかねないと述べられている。台湾におけるカルフールのケースは現地企業の堅固な資金力を背景に,その店舗網を急速に発展させていったことが示されているとしている。もう1つのメリットは現地パートナーの政治的つながりであり,UPEの政治的影響力によってカルフールは優良な土地を円滑に手に入れることができたとしている。そしてこのことが小売業国際化プロセスにおける慎重なビジネスパートナー選択の重要性を示唆すると述べられている。カルフールの成功要因として更に現地流通システムとの関係について述べられている。台湾においては外国貿易業者との取引を除いて,中間業者を除く一般的傾向があり,台湾製造業者と小売企業間での直接取引が好まれる傾向にあるとしている。このことが製造業者から直接購入するカルフールの発展を裏付けるように働いたと述べられている。

2.現地流通システムにおける影響
 カルフールは台湾において最も影響力のある流通業者となったとしており,この影響は小売業と製造業の間の関係の発展に影響を及ぼしたと述べられている。大規模小売業者による影響の一つに流通システムにおける主導権が製造業から小売業へと移行したことがあげられており,台湾における新たな流通システムは強力なバイイングパワーを強みとした小売業にコントロールされたチャネルに特徴付けられるとしている。ハイパーマーケットの展開によってカルフールが圧倒した情勢は総売上高と店舗数の増加に見ることができるとしており,その上大部分が小規模の製造業者である供給業者に対する取引上の姿勢が次第に侵略的になったとしている。供給業者はカルフールとの契約において様々な費用を要求されたと述べられており,サービス料金やリベート,祝祭における販売促進料金,陳列料金,折込み広告料金,テレビ・新聞広告料金など様々な費用を支払わされているとしている。カルフールの要求は年々厳しくなったとしており,供給業者はカルフールと取引をすることによって何も利益を見出せないという程度まで取引関係によってこれらの厳しい金融負担を受け入れさせられたと述べられている。しかし,カルフールが中小製造業者にとって魅力的な巨大マーケティングチャネルを供給していることは真実であるとしている。

3.カルフールと供給業者間の論争
 カルフールのふるまいは数年に渡って供給業者との摩擦を引き起こしたとしており,ニュージーランドの牛乳製造企業のように,様々な料金に対して要求する額が高額すぎるために利益が見出せないとしてカルフールとの取引を取りやめる企業もあったとしている。台湾の主要企業の数社も同様に商品を撤退させたが,国際的ブランドを持ち大規模流通に抵抗できる立場を維持できるP&Gや他のグローバル企業とは異なり,台湾の大部分の企業は弱すぎて大規模流通と交渉することができないと述べられている。カルフールは供給業者との取引において問題や論争を巻き起こしたとしており,公正取引委員会はこの状況を深刻に捉え,そしてサービス料金や祝祭における販売促進料金などの料金をより詳細に調査し始め,相当な要求や余分な徴収,供給業者の厳しい財政が強調され,カルフールは優位な市場地位を利用して円滑な取引を侵害しているという結論に達したと述べられている。この調査は独占禁止法が改正された後の「不公正費用」の初めの重要な統制であることが述べられている。

 結論は次の通りである。台湾における市場開放政策は小売業者がチャネルをコントロールする時代が来たことと同意であり,ハイパーマーケットの出現は明確に製造業者と小売業者間の関係性について元の流通システムの改革を引き起こしたとしている。そして,公正な取引を実行可能にするビジネス環境を確保するルールが必要とされているとし,台湾のケースは大規模外国小売企業を受け入れるための市場開放政策と競争政策の法の欠乏が不公正な競争の原因となり得ることについて提案している。


J.Dawson, Masao Mukoyama, Sang Chul Choi and Roy Larke “The development of foreign retailing in Taiwan: The impacts of Carrefour” The Internationalization of Retailing in Asia, Routledgecurzon Advances in Asia-pacific Business, pp35-48.

投稿者 02takenaka : 2005年07月16日 21:03

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