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2005年07月12日

Country Image : Halo or Summary Construct? (Min 1989)

要約
 この論文では,カントリーイメージの効果について研究がなされている。ここでは,2つの仮説が挙げられている。1つ目は,後光モデル仮説と呼ばれるもので,製品評価に対してカントリーイメージが後光効果を及ぼすというものである。2つ目は,構成概念モデル仮説と呼ばれるもので,カントリーイメージがひとつの構成概念としての役割を果たすというものである。
 検証の結果,消費者が当該国の製品をあまり知らない時,カントリーイメージは消費者が製品属性について評価を行う際に後光効果をもたらし,製品評価を通じて,消費者のブランドに対する態度に間接的に影響を与えることが明らかにされている。
 逆に,消費者が当該国の製品をよく知るようになると,カントリーイメージは製品属性に対する消費者の信念を要約した構成概念となる。そして,ブランドに対する態度に直接に影響を与えることが明らかにされている。 

仮説
 この論文では,カントリーイメージの効果について2つの仮説が挙げられ,検証がなされている。
 後光効果仮説によると,カントリーイメージは製品属性に対する消費者の信念に直接に影響を与えるとし,さらに消費者の信念を通じて間接的に消費者の製品評価・ブランドに影響を与えるとされている。
 構造関係は,カントリーイメージ→信念→ブランド属性となる。
 構成概念仮説によれば,消費者は製品情報を通じて,カントリーイメージを形成するとされている。そして,カントリーイメージは直接的にブランドに対する態度に影響を与えるとされている。
 構造関係は,信念→カントリーイメージ→ブランド属性となる。
 
検証と結果
 この論文での検証では,米国,日本,韓国におけるTVセットと小型自動車が取り上げられ,電話によるインタビュー調査が行なわれ,116人の回答者からの回答を基に検証がなされている。 
 この調査から,製品評価の際にカントリーイメージが重要であるということが明らかにされている。
 消費者が当該国製品についてあまり知らないとき,カントリーイメージは消費者が製品属性を評価する際の後光として作用し,消費者の信念を通じてブランドへの態度に対しても間接的に影響を与えることが明らかにされている。
 これに反して,消費者が当該国製品についてよく知っていれば,カントリーイメージは,製品属性についての信念を要約する構成概念となる。そして,ブランド属性に対して,直接に影響を与えるということが明らかにされている。
 これらのことから,カントリーイメージと製品属性,ブランド属性の間に構造的な相互関係があることがわかる。
 
インプリケーション
 今回の論文から,カントリーイメージと製品属性,ブランド属性の間に構造的な相互関係があることがわかる。このことは,メーカーや国際的マーケターに重要な示唆を与える。カントリーイメージが構成概念として作用するということは個別企業と当該企業の属する産業の間での利益の対立が起こることを意味している。個別企業は消費者に好意的なカントリーイメージを利用することで劣等な製品を販売でき利益をあげることができる。
 しかし,このやり方がまかり通れば,その国のイメージは下落し,産業内の他の企業にも影響を与える。なぜなら消費者は製品の情報を通じてカントリーイメージを形成しているからである。
 したがって,製品品質の水準管理は政府レベルと同じく産業レベルでも必要である。水準を満たしている輸出者には,税制優遇や補助金などで輸出を奨励し,逆に水準を満たしていない輸出者に対しては,輸出関税や輸出許可の停止などの罰則を課すことで,製品水準を維持していく必要である。

出典:Han, C. Min (1989), "Country Image : Halo or Summary Construct?" Journal of Marketing Research, Vol. 26, No. 2, pp. 222-229.

投稿者 02daigo : 2005年07月12日 15:47

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