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2005年07月12日

消費者の視点からとらえたマーケティング・コミュニケーションの影響過程(堀内 2001)

 ここでは,マーケティング・コミュニケーションを「消費者行動にかかわるコミュニケーション全般」(20ページ)としている。従来の広告効果研究が1つの広告を対象にした送り手からの1直線的なモデルであることに対し,消費者は多様なマーケティング・コミュニケーションに接しているし,必ずしも1直線的な影響を受けるわけではないとし,消費者の視点から「マーケティング・コミュニケーションの影響過程について検討する」(20ページ)としている。

 まず,モデルを構築するために適用可能な理論や考え方を検討している。製品星座,自律的空想的快楽主義,消費経験論を取りあげている。製品星座からは日常において消費者は複数のマーケティング・コミュニケーションに接触し,それらの組み合わせで捉えているという考えが,自律的空想的快楽主義からは消費者が製品やサービスの使用場面を想像し,その場面を実現するものとして個別ブランドを欲するという考えが,消費経験論からは消費者のマーケティング・コミュニケーションへの接触経験という考えが,従来の理論や考えを基にマーケティング・コミュニケーションの影響を考えるために置き換えられ,今回の研究に適用されたものである。さらにマーケティング・コミュニケーションへの接触経験では,それを長期的視点で捉えること,なかでも接触時期の異なる複数のマーケティング・コミュニケーションと購買のかかわりを検討できるとしている。これらの考えを基に,消費者の視点から捉えたマーケティング・コミュニケーションの影響過程についてのモデルが示されている。モデルの命題として,①「消費者は,多様なマーケティング・コミュニケーションに接触して1つの購買に至ることがある」(22ページ)②「マーケティング・コミュニケーションの影響過程のうち,マーケティング・コミュニケーション接触から具体的な購買欲求喚起までは,非連続的に移行することがある」(22ページ)③「マーケティング・コミュニケーションによる購買欲求喚起の効果は長い期間をかけて生じることがある」(22ページ)の3点が挙げられている。

 当該製品を購買した理由,購買に至るまでの経緯,必要と感じた時には補足説明を自由回答形式のインタビューによって収集している。そこからいくつかの事例を紹介し,それぞれの命題の妥当性を吟味していくとしている。命題①に関しては,新種のボイス・レコーダーの存在を知ってから注文に至るまでの事例と,最寄り駅に隣接したホテルに話題の衣料品店がオープンし家族の洋服を購入した事例が紹介されている。これらの事例から,日常生活において消費者は,「多様なマーケティング・コミュニケーションに接しながら購買欲求を喚起され,1つの購買に至る」(23ページ)ことがあり,購買欲求の喚起には様々な種類のマーケティング・コミュニケーションがかかわることがあるとし,これらは命題の妥当性を示していると言えるとしている。命題②に関しては,既に紹介されたボイス・レコーダーの事例と,大学生のグループによる旅行会社の選定の事例が紹介されている。これらの事例から,マーケティング・コミュニケーションへの接触から購買欲求喚起に至るのに非連続的移行が認められたとしている。よってこれらの事例は命題の妥当性を示していると考えられるとしている。今回の研究で見出された非連続的移行は,購買欲求を喚起された特定ブランドを入手することが不可能な必然的なものと必然的でないものとに大別でき,後者はさらに2つに分けられるとしている。消費者の知覚マップに有力ブランドやロイヤルティの高いブランドが存在する場合と,2つ以上(同一の刺激でなくてもよい)のマーケティング・コミュニケーションに接触した場合であるとしている。命題③に関しては,命題①で紹介された事例を取りあげ,「数ヶ月,数年にわたるマーケティング・コミュニケーションへの接触が購買欲求を喚起することがあると言える」(25ページ)とし,命題は妥当性があると考えられるとしている。

結論と課題
 消費者の視点からマーケティング・コミュニケーションの影響過程を検討した結果,多様なマーケティング・コミュニケーションに影響されて1つの購買に至ることがあること,影響過程は非連続的であることもあること,影響が長期にわたることなどがわかったとしている。一方で,残された課題として製品星座の考えを適用したマーケティング・コミュニケーション星座とIMCの関係を明らかにすること,製品カテゴリーレベルでの欲求が既に存在した時の影響過程についての検討,マーケティング・インプリケーションの可能性の検討が挙げられている。

出典:堀内圭子(2001),「消費者の視点からとらえたマーケティング・コミュニケーションの影響過程」『日経広告研究所報』,第35巻6号,20-25頁。

投稿者 : 2005年07月12日 18:39

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