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2005年07月11日

広告表現評価の尺度開発(上)―「おっ!」「なるほど!」と思われる広告―(鈴木・安田 2003)

要約
 本稿では,クリエイターとマーケターがともに納得でき,共有できる広告表現評価の指標を開発しようとするのが本研究の試みである。

1.はじめに
 新聞を見る場合,広告業務に関わる人々は広告から目を通す習慣が少なからずあるかもしれないが,一般の人々は行きずりの人であるため広告よりも記事一般を無意識的に優先している。したがって,広告を無視し素通りさせる方が圧倒的に多く,しかも広告に目を通したとしても広告の平均処理時間は2秒間であると言われている。そこで,広告読者を獲得するためにはこの2秒間で「おっ」と言わしめる必要がある。また,広告読者になってくれた,注目されたからと言って,商品やサービスが必ず売れるわけではないが,まず注目されなければその先はなく,広告接触時での生存率が重要である。しかし,広告読者を獲得したとしてもその広告を読んで「なるほど」と思わず,期待に反するものであれば広告主に対する失望感が生まれ,広告主へのマイナスイメージが増えるばかりである。したがって,広告表現が「どのように広告読者を獲得し,どのように広告読者に評価され,そして商品あるいはサービスの販売にどのように力を発揮できるかを検証することは,広告業務に携わる人にとって常に大きな関心事」(3ページ)であり,クリエイターやマーケターにとって広告表現がどのように広告読者の心をつかみ理解されるかはビジネスの関心事である。しかし,戦後の長い広告の歴史の中で見てもクリエイターとマーケターが表裏一体となって存在することは難しく,企画と調査が乖離した状況が続いていた。そこで,本稿では両者が理解できる一定の客観性の指標を開発することやクリエイターが意図したように広告読者は受け止めているかを調査により検証していくことを視野に入れている。

2.<広告表現>評価に関する先行事例について
 広告表現効果の先行事例としては,広告効果を商品の売上から切り離し,「知名度」「理解率」「行動率」といったコミュニケーション目標で広告効果を測ろうとした「目標による広告管理」である「ダグマー」を始め,広告表現,デザインに関する注目率調査の記述やデザイン要素の注目率調査により客観的評価が難しい広告表現をデータ化した記述,アイカメラを用いて眼球運動測定を行った広告効果測定や眼鏡などを一切装着することのない最先端のアイカメラであるアイ・スコープを用いて視聴者が広告を見た瞬間からの視線の動きをリアルタイムに捉えることができる広告効果測定,または最新の認知心理学や脳生理学の知見に基づき広告表現を検証することを主張するものなど様々な広告表現の効果測定がある。

3.本研究の仮説  
 本研究の最大の目的は,「広告表現を読者の視点から評価する『尺度(モノサシ)』を得ることであり,研究的関心と同時に,クリエイティブワークの現場において実際に参照される(利用される)ことを目指している」(6ページ)であり,その結果を得るため以下の3点を仮説要因としている。第1点は細分化したデザイン素材などの表現アイテムは言及要素とせず,広告原稿全体を対象とした結果としての評価測定を行うこと。第2点は一般的に広告効果として考えられる累積効果の側面(継時的時間要因)は排除し,その広告に対する接触時点を考慮する(広告接触は短期記憶,ブランド認識・イメージ形成は長期記憶)。第3点は評価を2つの側面から観測すること。つまり,「おっ,と思う(印象)広告」と「なるほど,と思う(理解)広告」という2つの視点で評価観測することである。

出典:鈴木昭男・安田輝男(2003),「広告表現評価の尺度開発(上)―『おっ!』『なるほど!』と思われる広告―」『日経広告研究所報』,37(1),2-7ページ。

投稿者 : 2005年07月11日 23:55

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