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2005年07月09日
PB商品の購買行動に関する国際比較調査―アメリカとタイ(シャノン・マンダチターラ・矢作 2003)
要約
この論文ではアメリカとタイにおけるPB商品の購買行動について実証分析が行われている。ここでは,国際的な見地から新たな検討を加えることを目的とし,多様な商品分野でPB商品の開発が行われているアメリカと,外資系小売企業を中心にPB商品の市場投入が進んでいるタイの2カ国でグロサリー分野のPB商品における購買行動を対象に,両国で類似したサンプルを抽出し,実証分析が行われている。これまでのPB研究がデモグラフィック(人口動態的)要因,心理的要因,行動科学要因という3つの分析視点から行われていることが明らかになったと述べられており,この3つのグループからなる研究仮説をまとめ,分析結果からこれらの仮説についての検討が行われている。
実証分析から得られる考察は次の通りである。まず,学究的観点に基づき12の主要な分析次元を設定したとしており,アンケート調査はカンザス州ウィチタとバンコク首都圏の周辺都市であるバングダにおいてアメリカ人159名,タイ人204名のグロサリー買物客をサンプリングし,英語とタイ語で同一内容の質問表に基づき実地したと述べられている。データ分析にはロジスティック回帰と呼ばれる多変量統計解析が用いられている。PB商品の購買行動を特徴づける要因は3つの要因に分類されており,まず家族月収,大卒か否か,及び世帯人数といったデモグラフィック要因についてはPB商品買い物客がアメリカ人であるか否かについて説明もしくは予測するために適した変数とは言い難いとしている。次に心理的要因については分析結果を通じてアメリカ人がブランド間での品質的なばらつきについて知覚していないとしており,アメリカのPB商品を購買する消費者は利用するカテゴリーすべてのブランドを基本的に類似したものであると考えているということになるとしている。また,PB商品における低価格の重要性についてはタイ人とは対照的にアメリカ人にとって価格は,PB購入に関してあまり問題とされないことが言えるとしている。NB商品がPB商品より品質が高いと考えられているか否かという論点に関しては,アメリカ人はPBよりもNBの方が必ずしも高品質であるとは考えていないが,その一方でここでもタイ人についてはアメリカ人と対照的な結果が導き出されており,NB商品がPB商品よりも品質が優れていると考えている人が多く存在し,PB商品購入時における低価格の重要性が相対的に高くなるとしている。最後に行動的要因についてチェーンロイヤリティを持つかという論点に関しては,アメリカ人はあまりチェーン・ロイヤリティを重視せず,反対にタイではチェーン・ロイヤリティを持っていることが分かるとしている。タイ人がチェーンロイヤリティを持つ理由としてはタイにおけるチェーンストアの発展がごく最近であることと,交通手段の制約による店舗選択への制約があげられている。また,買物人数についてはタイ人はアメリカ人よりも多くの人数で買物をすることを好んでいることが分かるとしており,タイがアメリカと比較して集団主義的社会であることがその理由であるとしている。そして,この分析を通してアメリカ人がほとんどのブランドが同じような品質にあると感じ,そのことが知覚するPB商品の購入リスクを軽減させていることを確認できたことが収穫であると述べられている。
結論は次の通りである。アメリカとタイにおける国際比較研究を通じてチェーン・ロイヤリティ,買物人数,NB・PB商品のブランド間における知覚品質などの様々な論点において両者の違いが明確にされている。今後の課題としては個人主義者や集団主義的な文化が影響するのか否かについて調査・検討することがあげられている。
出典:ランドール・シャノン,ルジルターナ・マンダチターラ,矢作敏行(2003)「PB商品の購買行動に関する国際比較調査―アメリカとタイ」『経営志林』第40巻1号,127―143ページ。
投稿者 02takenaka : 2005年07月09日 23:58
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