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2005年07月09日

広告戦略立案のためのブランド連想分析-「方向性」概念を基軸として(佐藤 2003)

要約
 過去の研究では,ブランドを起点として発生する連想に関するものがほとんどであったが,本稿ではブランドの外側の概念からブランドへ向かう連想が重要な意味を持つという考えより,独自の分析フレームを作り,自由連想調査を行い,連想の構造の視点より強いブランドとは何であるのかを分析するとしている。

1.はじめに
 過去のブランド連想に関する研究はブランド・エクイティ研究とともに発展してきたとし,ブランドを起点としてそこから抱くイメージや連想するものを対象とした研究が大半であったとしている。しかし,本稿では実際の購買,消費行動において「製品カテゴリ」や「製品属性・ベネフィット」からブランドを連想することも重要な意味があるとし,ブランド連想の定義を広く捉え,方向性概念を基軸とした連想の分析フレームを提案し,その枠組みより自由調査を行い,連想構造の視点より強いブランドの要因を分析するとしている。例として「アミノ酸」,「アミノサプリ」が挙げられておりその方向性は以下のとおりである。アミノ酸からアミノサプリを連想するのか,アミノサプリからアミノ酸を連想するのかということである。

2.ブランド連想における方向性概念と「ABCトライアングル」
 Farquhar and Herr(1993)は,ブランドを起点として連想するものと,あるものから連想してブランドに向かう方向性には強度に不均衡があるため両者を区別すべきであるとしている。阿久津・石田(2002)のビタミンCとアセロラドリンクの関係性の研究をみると,その差は明らかであるとしている。ここで『ビタミンCの摂取を目的とする考慮集合を想定してブランド想起の問題を考える場合,「ビタミンC→アセロラ」の連想は,「アセロラ→ビタミンC」よりもはるかに重要』(44ページ)であるとしている。次に指標については以下のことが述べられている。ブランドを起点とした場合,そこから連想した項目はブランドの「理解度」を示す指標としては適切であるが,消費場面において連想からブランドに向かった方がブランドの強さの指標としては適切であるとしている。
 つまり,「ある概念からブランドへ向かう連想が強いということは,その概念のグループ内にいる他の競合銘柄に比べて優位にある」(45ページ)としている。また,ブランドを連想させる機会が多いものも非常に有利であるとしている。
 前章でも紹介したように本稿ではブランド連想を広義の範囲で捉えている。これに基づき「ブランド(Brand)」,「カテゴリ(Category)」,「製品属性(Attribute)」に分け,各項目より残りの2つに矢印を引いたものを「ABCトライアングル」と呈示している。ここでのブランドはKeller(1998)の定義に従って,「ブランド部分を単なるブランド名のみならず,ブランドを識別させる要素も含めて考える」(45ページ)としている。広告戦略においてこの考えを適用する時には,ブランド,広告間の連想を,ブランド,カテゴリ・製品属性の関係と同一に考えずに広告を手段的要素,カテゴリなどのブランドに関する連想を目的的要素として分けて考えるとしている。

3.自由連想調査調査概要
 前章で記した分析フレームに従って,機能性飲料(ポカリスエット,ダカラ,アクエリアス,アミノサプリ)と茶飲料(おーいお茶,生茶,まろ茶,爽健美茶)について大学生を対象として2002年の10月下旬から11月下旬に,一銘柄についてカテゴリ,ブランド,属性の各々を起点とした連想をリサーチしたとしている。この際,連続して質問すると互いの連想に悪影響を及ぼすので,調査は分けて行ったとしている。

4.調査結果
 各ブランドのカテゴリ,属性,ブランドを起点とした調査を行ったが,本稿では主要部分を抜粋して紹介するとしている。
 まず,ブランドを起点とした自由連想の飲料銘柄連想の総合的分類を行っている。次に各ブランドについて個別に分類すると以下のとおりである。「ポカリスエット」,「アクエリアス」,「おーいお茶」はカテゴリ関連の連想が多いカテゴリ型,「ダカラ」や「生茶」はブランド周辺の連想が際立っている広告型,「アミノサプリ」,「爽健美茶」はその商品の特性の知識などが相対的に強く表された属性型,「まろ茶」は全体的に連想反応が低い,埋没型であると記されている。また,広告型の2つはマインド・シェアの高いブランドであるともしている。
 強いブランドの連想構造とは何かについて「ポカリスエット」,「ダカラ」,「アミノサプリ」の3銘柄に焦点を当てて考察するとしている。「ポカリスエット」の調査結果より,ロングセラー・ブランドは「利用目的連想の構築は長期にわたるコミュニケーションの蓄積がないと難しい」(47ページ)としている。「ダカラ」の調査結果より,広告によるところが大きいブランドは効能・ベネフィットを補強する知識を加えていくことや,効能イメージを消費者側の日常生活にうまく浸透させて結び付けていくことが必要であるとしている。「アミノサプリ」の調査結果より,消費者の知識内で属性部分がカテゴリと機能するようになると,追随する競合銘柄に対して優位に立てるとしている。
 カテゴリを起点としてブランドの連想を構築するには,コミュニケーションの面から考えるとブランドに流れやすくすることやブランドへ向かう連想数を増やすことが挙げられている。製品戦略の視点から見れば,サブカテゴリの構築やパイオニア戦略があるとしている。広告戦略において連想を流れやすくするということは,「広告メッセージに内包されるコンテクストを強化して説得力をもたせること」(48ページ)であるとしている。つまり,結節点を入れることによって概念間を強化することであるとしている。そうすることにより強固な連想が構築されるとしている。

 結論は以下のとおりである。①消費者のブランド知識を知るためには,ブランドの連想構造を十分に調べなければならず,②考慮集合概念からブランドに向かう連想強化のための鍵概念の洗い出し,そしてそれがブランドに帰着するための独自のコンテクスト創造,③長期的コミュニケーションにおけるブランド想起のためのきっかけ増加,④連想することにより,自社ブランドがどれだけ連想のシェアがあるのか知っておくことが必要であるとしている。

出典:佐藤志乃(2003),「広告戦略立案のためのブランド連想分析-「方向性」概念を基軸として」『日経広告研究所報』,第37巻4号,44-49頁。

投稿者 : 2005年07月09日 19:21

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