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2005年07月22日

広告と広報の融合に向けて―コミュニケーション中心の経営:MOTからMOCへ(小林 2005)

要約
 現場では,広告と広報の融合が始まっているとし,本論では三つの節で,テーマの序説を述べている。最初の節では,トップマネジメントの経営観と広告・広報観が,決断と実行により経営改革と広告・広報改革の成否を決めることを示し,次節では,広告・広報の側から融合を調べ,最終節では経営における全体的なコミュニケーション活動の側から融合を見ている。世の中が「インフォメーション」重視の時代から,「コミュニケーション」重視の時代に移っているという認識のもとに本論を組み立て,情報という言葉も,インフォメーションと訳すよりもコミュニケーションという意味で使う方が世の中の実態に合うようになったとしている。

 いまだに実務でも学者の議論でも,広告とは広報は違う仕事をしているという見方があり,広告か,広報かという二者択一がある。西欧を中心とする近代科学は,「垣根を低くする」「垣根を破壊する」のではなく,「垣根を高くする」「垣根を作る」というような,「AかBか」が問題の,物事を分けるという要素還元的な見方で発展してきた。このような考え方はもう古いため,ここでは化学反応と物理的反応を参考にしている。核分裂と核融合では,核融合の方が大きなエネルギーを放出する。広告・広報でも,分けるより結びつける方が大きな効果をあげるとしている。しかし,広告と広報を別の仕事と見ることだけを良しとする見方は間違っていると述べている。「広告・広報を取り巻く状況に応じた戦略を採用することが求められる。融合であれ,統合であれ,状況に応じた組み合わせ採用の必然性が見えなければならない」(35ページ)としている。
 次に,広告・広報を再定義している。広告には,情報提供型広告,説得型広告,比較広告,リマインダー広告があるとし,一方PR活動は,好意的評判を得て好ましい企業イメージを抱き、悪い噂や事件を未然に防いで,企業の様々な関係集団と良いリレーションシップを形成するとしている。また,広報部門の機能は,「報道対策,製品パブリシティ,社会環境対策,ロビー活動,投資家対策などである」(36ページ)と説明している。広告・広報の再定義でまず問題になったことは,広告・広報をマーケティングの中で捉えるだけでよいのかということであり,続いてコーポレート・コミュニケーションから見た広告・広報が問題になった。ここでは広告・広報をシステムズ・アプローチで考えることにしている。まず,システムの定義をJISより,多数の構成要素が有機的な秩序を保ち,同一目的に向かって行動するものであるとしている。システム工学の立場からシステムを見ると,外部構造と内部構造があるとし,「内部構造が与えられた時その外部機能を求めることが分析であり,外部機能が与えられた時その内部構造を決定することが統合である」(36ページ)と説明している。システムで見る広告・広報に期待されている外部機能には,広告・広報という二つの仕事の間に壁や差がなく,問題は,この外部機能を達成するための内部構造が十分に対応しているかどうかということであり,内部構造については,仕事の組織,取引構造,インターネットの登場による媒体革新など,システム各要素とその組み合わせを見て,外部機能に応える革新をしなければならないとしている。
 続いてMOC(マネジメント・オブ・コミュニケーション)について述べられている。まず,MOCは,八〇年代に技術力で差を付けられた米国のアメリカ企業への対抗意識と理論的・実践的な対応として生まれたMOT(マネジメント・オブ・テクノロジー)を教師として学ぶべきだとしている。「MOTについて書かれた文献を読むと,その実現のためにはコミュニケーションあるいはMOCを中心に据えなければならないことがわかる」(37ページ)としている。最後に,広告と広報はMOCの最重要なサブシステムとしての役割を果たすことを予想しており,「広告・広報の再定義の結論もここから導くことにしたい」(37ページ)としている。

出典:小林貞夫(2005)「広告と広報の融合に向けて―コミュニケーション中心の経営:MOTからMOCへ」『日経広告研究所報』,221号,33-37頁。

投稿者 02hidemin : 2005年07月22日 23:21

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コメント

出典が抜けているので付けてください!

投稿者 tsukazaki : 2005年07月23日 21:54

 
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