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2005年07月04日

Consumers' Perceptions of Imports (Dornoff, Tankersley and White 1974)

要約
 ここではまず,アメリカの貿易赤字とドルの価値低下は,アメリカ経済における海外製品の影響によるものであり,また,1962年から72年の10年間の輸入品のすさまじい成長が,この影響の大きさを証明していると述べられている。この海外製品の発展を理解するために,アメリカ経済の変化の原因に対する何らかの洞察が必要であると述べられている。そこで,この論文では,アンケートによって海外製品へのアメリカ消費者の知覚が調査されている。さらに,それらのデータに社会経済的分析が与えられている。

調査の概要
 これまでの研究は,特定の国からの海外製品の固定観念化や,固定観念にとらわれた消費者のイメージを変える方法といったことに焦点があてられてきたが,消費者の知覚については無視されてきたとして,消費者の知覚を調査することにしている。国については,マイナーな国ばかりが取り上げられてきたが,ここではアメリカ経済に影響を与えるような国からの製品について,消費者知覚を調査している。特に,輸入品への消費者知覚はどのようなものか,それらは国の間で違いがみられるのか,製品クラス間ではどうなのか,社会経済的指標に基づく分類で違いはみられるのかといったことが,主に調査すべき事柄とされている。
 この論文では,シンシナティ大都市エリアの電話帳から無作為に抽出された対象へ,質問表が送付され,そこから得られたものがデータとして用いられている。また,海外製品に関するReiersonの研究で以前に使用された質問表を,因子分析により要約したものが利用されている。国については,アメリカの主要な輸出国の代表としてドイツ,フランス,日本が選ばれている。

結果
 輸入品全体の消費者知覚と特定の国からの輸入品の消費者知覚は,全回答の算術平均から得られている。これらをグラフにし,さまざまな考察が与えられている。
 調査では輸入品は,アメリカ製品より優れているとは認識されていなかったことが示されている。また,特定の国々については次のような結果が明らかにされている。フランスはほめられることも,非難されることもなく,全体的にはっきりしていない。それに対して日本は大きく評価が分かれているが,トータルでみて優れていると認識されており,回答者は日本製品をアメリカ製品のよい代理品とみなしていることが示されている。
 さらに,機械製品,食品,衣料品,電機製品の4つの製品クラスにわけてみてみると,日本は電機製品においてアメリカよりも上位に位置し,またドイツは機械製品において優位である。Reiersonの7年前の研究では,全ての製品カテゴリーにおいてアメリカが一位,日本が最下位となっていた。このような結果は,未だにアメリカは全体を通して常にトップを維持しようとしており,他の国々は主要な領域に特化しているために得られたのではないかと述べられている。

社会経済的分析
 ここではさらに,市場細分化の基盤を提供するために,データに社会経済的分析が与えられている。回答者の性別,年齢,教育水準によってデータがわけられ,マン・ホワイトニーU検定による分析がなされている。分析の結果,いくつかの知覚の違いが見られた。男女間では輸入品の知覚に有意差は見られなかったが,年齢と教育水準には有意差があったことが明らかにされている。高い年齢層では輸入品全体にネガティブな知覚を持っており,特に日本製については強いネガティブな反応が見られている。逆に若年層は輸入品に好意的であることも示されている。また,教育水準については,大卒者など高学歴の者ほど輸入品に好意的であることが明らかにされている。学歴と所得の正の相関があり,所得は輸入品購買機会とも関係があるのではないかという考察もなされている。また,高学歴者は最新の情報に精通しているために,現在の海外製品の質についてそれなりの知識があるということも原因の1つと考えられている。

結論
 調査から,海外製品に対する知覚は過去2,3年の間に変化したことが明らかになった。また,社会経済的な分類間でいくつかの差も見られた。これは,市場細分化や販売戦略の立案に役立つと述べられている。
 海外製品がアメリカ経済に影響を及ぼし続けると,このような情報の重要性は増し,また,海外貿易市場でアメリカの競争優位が維持され続けるならば,今回のような調査はますます重要になると述べられている。
 
出典:Dornoff, Ronald J. , Clint B. Tankersley, and Gregory P. White(1974),"Consumers' Perceptions of Imports,"Akron Business and Economic Review,Vol.5, No.2, pp.26-29.
 

投稿者 02eiko : 2005年07月04日 23:39

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