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2005年07月04日

「新しい広告」の理論―AIDMAを超える新しい広告研究を求めて―(飽戸 2003)

要約
 今日,AIDMAやDAGMARなどの広告効果研究が行われてきたが,期待されるような効果は確認されていない。そこで,本稿では「『新しい広告』の理論と方法が今日の広報研究に新しい有効な視座を提供することを示唆している」(7ページ)。

1.「新しい広告」の機能
 戦後,広告量が急激に増大し,人々は広告に飽き飽きし,広告を嫌う傾向が増えてきた。テレビ視聴においてもザッピングなども一般化していた。そのような時にアメリカでおもしろ広告が出現し,人々に衝撃を与えた。このおもしろ広告は,これまでの「これを買ってください」や「こんなに安いですよ」などの販売促進広告とは異なり,「これは何だろう」と思わせるもので広告にうんざりしていた民衆に興味をもたせるものだった。このおもしろ広告は,瞬く間に日本にも普及した。その代表例は大橋巨泉が万年筆をもってつぶやく「はっぱふみふみ」広告である。おもしろ広告の特徴としてはただ表現がおもしろおかしいだけでなく,「斬新な発想と手法,さまざまな広告のタブーへの積極果敢な挑戦」(3ページ)である。また,やってはいけないことをするもの,やらなければいけないことをやっていないものやしゃれたもの,見て楽しいもの,ただ単に相手を誹謗中傷する競争広告などはネガティブ広告と言い,このネガティブ広告とおもしろ広告を総称して新しい広告としている。これまでの販売促進広告は送り手の意図の達成度を見るAIDMAやDAGMARなどの「広告のよる認知,態度変容,そして行動化が,効果研究の目的であり広告戦略の基本となる」(3ページ)。しかし,新しい広告は受け手の立場で,受け手にもたらすものを測定する利用と満足の研究が基本的視点である。つまり「自分の関心,興味に合わせて広告を楽しみ利用する,受け手の主体性の回復」(3ページ)である。

2.「新しい広告」研究の基本的視座
 新しい広告を捉えるための基本的視座は3つある。①広告の基本的機能の「プロモーション効果」と「コミュニケーション効果」のうち,新しい広告では「プロモーション効果」について検討する。②コミュニケーション効果をどのように測定するかについての理論と方法の開発に焦点が置かれるべきで広告の話題性,マスメディアのよる無意識学習の功罪,沈黙の螺旋効果,知識・情報機能,理想・夢・熱き想いを訴える機能,作品をそのまま楽しむコンサマトリー機能,新しいライフスタイルや文化をも提案していくという提案機能,広告の新しい機能の発掘と実践研究による確認・洗練が今後の課題となる。③これからの広告はインターネット,デジタルテレビ,ケイタイ電話などの新しいメディアとの協調が不可欠であり,これらのニューメディアとこれまでの新聞やテレビなどの巨大メディアをいかに連携させ,活用していくことが課題となる。

3.広報の利用と満足研究
 ここでは,新しい広告の理論が広報研究にも有効な理論と方法を提供すると考え,広報効果研究会の調査を基にプロモーション機能についてのテレビ広告と新聞広告の接触の違いについて述べられている。

結論
 これからの広告はインターネットなどのニューメディアとの協調が不可欠であるため,「インターネットとマスメディアとの機能の違い,そして役割分担と,それらさまざまな新しいメディアとの相乗効果を探ること」(4ページ)が新しい広告の重要な課題となる。
 
出典:飽戸弘(2003),「『新しい広告』の理論―AIDMAを超える新しい広告研究を求めて―」『日経広告研究所報』,37(2),2-7ページ。

投稿者 : 2005年07月04日 23:50

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