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2005年07月19日

コミュニケーション装置としての「企業サイト」の役割とその評価手法(山下・日高 2003)

 ここでは,企業サイトの現状や評価の視点が述べられ,企業サイトをブランドイメージとの関係で評価する『e-Site index』という手法を用いて,企業サイトの企業ブランド評価に対する影響についての傾向が紹介されている。

 まず,企業サイトが重要なコミュニケーション手段となり,広告メディア・商取引・消費者アンケート・ユーザーとの窓口などの様々な機能を果たし,広報などの企業活動を支援するといった目的よりマーケティングを目的としてきているといったような企業サイトについての現状が述べられている。次に,企業サイトの運営体制が紹介されている。企業内でのサイト運営体制には,広報などの単一部署がサイトを管理する一極集中型,複数の部署で運営するが統括を単一部署が行う主管型,独立した事業部ごとにサイトを管理・運営する分散型があるとし,日本広告主協会が03年に実施した会員社向けアンケートでは,それぞれ24.5%,66.4%,8.2%,となっているとしている。また,従業員1000人以下の企業では一極集中型が6割にもなり,1000人以上5000人未満の企業では主管型が8割ほどになるなど,サイト運営体制は企業規模と関連があるとしている。しかし,それ以上にサイトに取り組む姿勢の違いによる影響が大きいとしている。最近ではネット単体でのコミュニケーションを考えるだけでなく,「コミュニケーション活動全体の中での役割を考え,各コミュニケーションメディアの相乗効果を図る」(24ページ)という考えになってきているとしている。その際,訴えたいメッセージが「メディア間で有機的に連携しているか」(24ページ)が課題となるとしている。自社サイトが巧く使えているのか評価して欲しいといった企業のニーズも高まっているとしている。
 
 企業サイトを評価する視点には①ユーザビリティ,②企業サイト価値の金額換算,③情報サービス主体としてのブランド力,④ブランド接点の1つとしてのブランド力,の4つがあるとしている。①は,ユーザーから見てストレスのないメニューデザインで使いやすさのチェックである。ダイアルアップが接続環境の中心で企業サイトも珍しかった頃のサイト評価の主な目的であり,ユーザリビリティのレベルが向上した現在でも発信する情報が膨大になったためサイト評価の重要な視点であり,チェックし続けることが重要だとしている。②は,サイトをマーケティング施策の1つと考え,利益への貢献度を推定するものでブランド評価の手法を援用したものであるとしている。③は,企業サイトを情報サービスを行う企業ブランドとして認知・好意・イメージ評価を中心に評価する視点で,ポータルサイトなどのネット専業企業にとっては企業ブランドそのものであるとしている。④は,企業サイトでの体験が企業ブランドの好意・イメージを向上させるのか,企業ブランドの評価向上への課題は何であるかということに答える評価手法であり,『e-Site index』はこの考え方に基づくものであるとしている。
 
 今回の調査で使用されたのは「企業サイトを企業ブランドへの貢献度で評価する視点を中心」(25ページ)とした『e-Site index』の一般企業版で,「企業サイトの企業ブランド評価への影響に関する一般傾向」(25ページ)をいくつか紹介するとして,①「企業でのサイト体験は『企業ブランドイメージ』に好影響を与えている」(26ページ),②「企業サイト体験は,企業ブランドイメージのうち『活気』『センス』という感覚的な側面にも好影響を及ぼす傾向が見られる」(26ページ),③「自社ブランドのユーザーから特に高い評価を受ける企業サイトもあり,企業サイトの内容が,ブランドユーザーへの情報メディアとして効果的なものになっていることが確認できる」(26ページ),の3点が示されている。①については,自動車やパソコンより食品やトイレタリーなどでその傾向が強く,相対的に訪問者は少ないがイメージの向上にはつながっているとしている。②については,サイトの活気やセンスが企業ブランドイメージに影響する傾向があるということだろうとし,イメージの高かった企業でもブランドイメージとの統一感が感じられなかったりすると評価が上がらないことがあるとしている。また,社会性やポリシーなどの企業姿勢への理性的な評価もサイトを通じて向上するとしている。③については,ユーザーの評価がノンユーザーの評価を上回る傾向が見られ,ユーザーの心理的ロイヤリティーの向上効果を期待できるとし,自動車やパソコンといった耐久財でその傾向が強いとしている。今後もブランド接点やコミュニケーション装置として企業サイトの影響は大きくなるとし,企業サイトの個別のコンテンツの目的に応じた効果測定法が必要になるが,個別評価と全体評価を合わせて定期的に調査・把握することが望ましいとしている。

出典:山下史郎・日高靖(2003)「コミュニケーション装置としての『企業サイト』の役割とその評価手法」『日経広告研究所報』,第37巻6号,22-27頁。

投稿者 : 2005年07月19日 23:27

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