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2005年07月11日

ポプラの成熟市場型ビジネス・モデルの分析(佐藤 2002)

要約
 この論文では,市場成熟期における小売業のビジネス・モデルについての示唆を得ることを目的とし,コンビニエンスストアのポプラが取り上げられ,「消費者ニーズに合わせた規模の店舗を出店する」(1ページ)デマンド・チェーン・マネジメントと呼ばれる同社のビジネス・モデルが分析されている。はじめにポプラの沿革をたどり,ビジネス・モデル形成のプロセスに触れたのち,そのビジネス・モデルの特徴が示されている。さらに,M&Aを通じた地域拡大戦略,立地・出店戦略などについて検討がされた後,成熟市場型コンビニのビジネスモデルとしてポプラの特徴がまとめられている。最後に,考えられるポプラの今後の課題が示されている。

ポプラの沿革
 1976年,米国小売業の見学ツアーで知ったコンビニという新しい商売を導入し,父親が経営していた広島の酒屋を夜間営業の店に衣替えしたのがその始まりであると記されている。初めは近くのスーパーでよく売れているものを中心に品揃えしていたが,夜間営業の店に来るお客の要望は,スーパーのそれとは異なることを知り,ヒヤリングなどから得た情報をもとに品揃えを行った。その結果,売り上げが飛躍的に伸びたとされている。しかし,夜間に販売する商品の供給業者が見つからず,また温かいお弁当がほしいというお客の声に応えるために,弁当のポプラを設立し,その後「「製販一貫体制」を自社で構築,1992年には物流会社も設立した」(3ページ)と記されている。しばらくしたのち,セブン‐イレブンやローソンの進出があり,ナショナル・チェーンに対抗するか,フランチャイジーとして生き残るかの決断を迫られた。その際,あらゆるフランチャイズチェーンの契約書を取り寄せて検討し,それらの優れた点をミックスし,オリジナルの契約書を作り上げ,それをきっかけにフランチャイズチェーンの展開をはじめたという。

ポプラのビジネス・モデルの特徴
 まず,ポプラのビジネス・モデルの大きな特徴として,ロイヤルティの徴収方法が挙げられている。一般のCVSは各店舗の粗利の3~4割程度を本部に納める「「粗利分配方式」を採用しているのに対して,ポプラは売上高の3%を収める方式」(4ページ)を採用している。この徴収制度により,ポプラ加盟店の損益分岐点がかなり低くなり,その結果,売上高が少ない地域でも利益を出すことが可能になっているという。また,「ポプラが加盟店に対して柔軟な姿勢で臨む背景には,ポプラ本体がコンビニのフランチャイザーである前に,製造・卸売業としての意識が強いことも影響している」(6ページ)と述べられているように,ほとんどの日配品を独自で製造し,配送も自らで行っている。加盟店は商品全体の25%を本部から仕入れる以外はどこから仕入れてもよく,地域密着型の品揃えができるという。また,製販一貫体制は,消費者の声を直接製造に生かせるといった利点があり,また流通の中間コスト引き下げによる60円という安価なおにぎりの導入を可能にさせたと述べられている。

ポプラの地域拡大戦略と立地・出店戦略
 ポプラは,M&Aによる他地域への進出を多く行っている。具体的には,北九州への進出の際にはトップマートを,関東への進出の際にはパスコリテール,ハイ・リテイル・システム,さらにはジャイロを買収し拡大してきたことが示されている。M&Aを選ぶ理由として,すでに完成した人材が得られること,他社の運営ノウハウや商品政策がわかることなどがあげられている。また,売上高の3%徴収という制度がポプラへの移行をスムーズにさせたとも述べられている。
 コンビニがオーバーストア状態となっている現在,各社はオフィスビルの中層階や地下など,利用客が限定される「「特殊立地」への出店を余儀なくされて」(16ページ)いるが,ポプラの契約でなら負担は少なく,出店の決断はしやすいとされている。また,オフィスビルの中の店舗では,週休2日で営業時間も1日14時間程度であるという。このような店舗はハイ・リテイル・システムが展開していた生活彩家という店舗で展開されており,品揃えもサラリーマンやOLを対象としてポプラとの差別化をはかっている。このような立地向けに,M&Aにより得た「生活彩家」ブランドを活用しているという。

成熟市場型ビジネス・モデルの特徴とその課題
 ポプラのビジネスモデルの特徴は,「顧客価値実現のために加盟店に企業家精神の発揮を求めている点にある」(17ページ)とされている。「顧客満足を実現して,多く売れば売るほど加盟店主の利益は大きくなる」(18ページ)ことが加盟店主のやる気を促し,また品揃えの面などでの自由がそのやる気を削がせないという。また,ポプラの徴収するロイヤルティの低さが,ローカル・ニーズへの対応を立地の面でも可能にし,さらに,製販一貫体制によりローカル・ニーズへの対応がしやすく,またM&A戦略のような攻撃的な戦略も「成熟市場において十全に威力を発揮するビジネス・モデルであると評価できる」(20ページ)と述べられている。
 最後に,企業家精神が豊富な人材を募集し続けられるかどうか,大手のCVSチェーンと「ローカル・チェーン」としてどのように競争していくのかという2つの課題が挙げられている。そして,従来のビジネス・モデルとの関係を考えながらそれらをうまく調整していく必要性が指摘されている。

出典:佐藤 善信(2002),「ポプラの成熟市場型ビジネス・モデルの分析」『流通科学研究所モノグラフ』No.004。

投稿者 02eiko : 2005年07月11日 20:47

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