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2005年06月28日

原産国,生産国,ブランドのイメージに関する調査(藤沢 2002)

要約
 多国籍製造企業が海外生産を実施する際,消費者が抱く生産国イメージは重要な役割を果たす。「日本の消費者は中国の現地生産車といえどトヨタ・ブランドゆえに日本製と大差ない購入姿勢をみせるであろうか,それともメイド・イン・チャイナに抵抗感を顕にするであろうか。さらに,ホンダ,日産など他のメーカー品にはどういった購入態度が期待されようか」(549ページ)ということについて分析がなされている。ブランド・イメージが生産国イメージの悪さを払拭するのか,それとも生産国イメージによりマイナスの影響を受けやすいのか,ブランド比較を通じての実証がなされている。

実証分析
 この論文における実証分析の目的は,「製品のブランドイメージに対して原産国と生産国が異なる場合の影響度を図る」(552ページ)ことである。あるいは逆に,「ブランド・ロイヤリティが強い製品が果たして原産国と生産国のイメージのギャップを克服することが出来るのか」(552ページ)ということについても分析が行われている。
 まず,乗用車,パソコン,ステレオの3つの製品カテゴリーを抽出。抽出された3製品のそれぞれにブランド力の強いメーカーと弱いメーカー(強いのにトヨタ・ソニー・NEC,弱いのにマツダ・アイワ・シャープ)の2社を挙げている。そして,3種類の製品のメーカー(2社)の造る製品を日本生産,進出拠点先で自社生産(タイ,マレーシア,中国),OEM委託生産に分けたうえで,それぞれの購入希望価格を答えてもらう。例えば,トヨタの2000CCクラス乗用車の国内生産車の日本国内生産車を購入するときの希望価格を100とした場合,その他(進出拠点先で自社生産とOEM委託生産)の購入希望価格を答えてもらっている。そして,生産拠点間,ブランド間において比較がなされている。

実証分析の結果
 原産国と生産国のイメージの一致度が強く要求されるのは,高関与型製品(消費者が製品の購買意思決定するまでに要する情報処理プロセスの長さによって決定される。ここでは自動車・パソコン・ステレオの順に関与が高いとされている)の中でもローブランド品においてである。高関与型の中で,ハイブランドは強いブランド・ロイヤリティのおかげで,アジア生産品でも希望購入価格指数が相対的に高く,両国イメージが一致しなくてもそれを相殺できる。
 海外での自社内生産がもっとも強く要求されるのは,高関与型製品の中でブランド・ロイヤリティが高い製品においてである。低関与型製品であっても,ブランド・ロイヤリティが高い製品ではアジアにおいて自社生産が望ましい。 

結論
 原産国イメージと生産国イメージのギャップを解消するには,同製品カテゴリーでもブランド・ロイヤリティの大きい製品を持つ企業のほうが有利であることが示されている。また,消費者の関与度が高い製品分野でブランド・ロイヤリティが弱い企業において,原産国イメージと生産国イメージの一致度が最も強く要求されることが明らかにされている。さらに,海外自社生産への転換と拡大にはブランド・ロイヤルティが強い企業ほどにスムーズに事を運べないという指摘がなされている。
 この論文で明らかにされている原産国イメージ,生産国イメージ,ブランド・ロイヤリティの関係を考慮することで,他国籍企業の市場参入行動原理につながると結ばれている。

論点
 日本生産とその他(進出拠点先での自社生産とOEM委託生産)の購入希望価格を答えてもらっているが,海外自社生産とOEM委託生産の違いについてそれほど回答者や消費者が認識されているとは思えない。また,それについての有意差についても明記されていない。さらに,ブランド力による比較がなされているがそれらのブランドを選択した理由が示されていない。

出典:藤沢武史(2002),「原産国,生産国,ブランドのイメージに関する調査」『商学論究』第50巻第1・2号,549-563ページ。 

投稿者 02daigo : 2005年06月28日 16:17

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