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2005年06月15日

台湾の小売業発展におけるセブン-イレブンのマーケティング展開(鍾 2001)

要約
 この論文では,台湾でのセブン-イレブンの発展について述べられている。近年,流通業の最先端の例として,セブン-イレブン・ジャパンが挙げられるが,隣国の台湾においてもセブン-イレブンは成功している。ここでは台湾セブン-イレブンの発展を見るために,まず台湾の小売業の発展を概観し,次にセブン-イレブンはどのようなマーケティングを行い,成功したのか,歴史的な側面から考察している。

Ⅰ.台湾小売業の発展と概況
 小売業の発展は,経済環境や消費者行動など多くの要因によって影響される。まず台湾での1人当たりGNPの増加と小売業の発展を見ると,GNPの増加に伴って,発展する業態は,百貨店,スーパー,CVS,大型ショッピングモール,と推移している。GNPが6000ドルを超えた1988年以降から,CVSが高度成長を始め,台湾のCVSの年間売上高の推移を見ると,1994年と1999年では,約2,5倍の増加が見られた。また店舗数においても,増加の傾向が見られることから,台湾の消費市場におけるCVSの影響力は大きくなってきているといえる。

Ⅱ.台湾セブン-イレブンのマーケティングの展開
 ここでは,台湾セブン-イレブンのマーケティング活動について述べ,またどのような経営活動によって成功いたのか,歴史的に考察する。
台湾では,CVS業態が導入されるまで,メーカーと卸との取引関係は卸主導であった。そこで,台湾セブン-イレブンの親会社である食品メーカーの統一企業が,他のメーカーに先駆けて,卸の支配を排除し,自社の小売チャネルを形成するために,セブン-イレブンを導入しようとしたのが台湾セブン-イレブンの始まりである。しかし,当初は台湾のGNPは低く,消費者のCVSに対する認識は低かった。又,米国のセブン-イレブンの標準化された戦略をとったため,経営は赤字であった。しかし,立地選択,価格政策,品揃え形成などの現地適応化のマーケティング活動に訂正することによって,次第に売上を伸ばし始め,黒字転換を果たした。「長時間営業,立地の選択,品揃えにおいてCVSの『便利さ』という経営特質を再確認して,小売形態の差別化を達成した」(101ページ)のである。その後,多数のCVSが参入し,競争が激しくなり,台湾セブン-イレブンは優位性を持続するために経営革新を進めた。具体的には,海外のセブン-イレブンの物流,管理システムのノウハウを積極的に学習した。中でも,日本のセブン-イレブンの弁当などの商品開発や物流システム,POSシステムの導入などの経営ノウハウの模倣は,台湾セブン-イレブンの成長に不可欠であったとしている。又,自社のブランド商品の開発,フランチャイズ・チェーンへの出展方式の転換による規模の経済の獲得も,重要な成長要因として挙げられる。このように,台湾セブン-イレブンは,外部の経営ノウハウのを模倣・革新し,台湾の消費環境に適応した形で台湾セブン-イレブン独自の経営ノウハウを生み出すことにより,優位性の持続をもたらしているとしている。

結論は以下の通りである。台湾セブン-イレブンの初期段階は,米国の消費環境に合わせた標準化戦略であったため,ターゲット市場の選択,立地選択などを誤り,成功しなかった。しかし,標準化できない部分を試行錯誤の末,現地に適応していくことにより成長が可能となり,さらにセブン-イレブン・ジャパンを始めとする海外のセブンイレブンの経営ノウハウの導入などの革新を行うことにより,他のCVSとの優位性を持続することができた。

出典:鍾淑玲(2001)「台湾の小売業発展におけるセブン-イレブンのマーケティング展開」『立命館経営学』,第39巻,第5号,87-115ページ。
 
 

投稿者 02umeda : 2005年06月15日 22:45

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