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2005年06月16日

良質のクリエーティブを阻害する要因から「効く広告」の考察 -「不良広告」から「効く広告」への道程(南 2003)

要約
 消費者に「広告が届かない」と言われている現代で,「効く広告」の何が広告を「効く」ようにしているのかをコンシューマー・インサイトをツールに,製作者目線で分析を試みている。ここでは,<インサイト>と販売効果の相関性を調べ,広告から<インサイト>の抽出を試みた。その結果,<インサイト>広告は,販売シェアが平均的に高く,<インサイト>と販売シェアの相関性は認められた。しかし,<インサイト>は,販売シェアを高める必要条件であるが,<ノン・インサイト>広告に「トップブランド商品」が属することから必須条件とは言えないことが判明した。

 この論文では,広告に対する消費者リアクションが,〔見る〕→〔知る〕→〔分かる〕→〔覚える・気になる〕レベルへいたるものを「良質な広告」と定義し、購買に結びつく消費者心理<インサイト>を持っていない広告を「不良広告」と定義している。ここで,<インサイト>がある広告が目指す「効く広告」とは,「市場を活性化する広告」という定義をもとに,<インサイト>がいかに広告に販促効果をもたらし,機能的にしているのかを調べていく。<インサイト>とは,人々の心の中に潜在している「感性概念」とし,解釈者(アカウント・プランナーあるいはクリエイティブ・ディレクター)の主観的判断で導くものである。ここで,<インサイト>と販売効果の相関性を調べ,広告から<インサイト>の抽出を試みる。まず,広告〔表現〕に〔問題〕を解くソリューション・アイディアがあると想定し,この〔解答〕から企業・商品が抱える〔問題〕を類推し,〔解答〕と〔問題〕が分かったところで,この二者の中間点にある<インサイト>を導き出すという簡略化された手法を行っている。ここでは,抽出商品として,広告依存度が高い飲料(ノンアルコール及びビール)二百十五品目の中から(TVCMに登場しなかった商品,低販売シェア商品を除き)三十一商品,対象メディアをTVCMとし,抽出を行った。結果,販売シェア上位で<インサイト>のある広告,販売シェア上位で<インサイト>のない広告,販売シェア下位で<インサイト>のある広告,販売シェア上位で<インサイト>のない広告の四つの商品郡に分類された。<インサイト>のある広告は,販売シェアが平均的に高く,<インサイト>と販売シェアの相関性は認められた。しかし,<インサイト>は,販売シェアを高める必要条件であるが,<インサイト>のない広告に「トップブランド商品」が属することから必須条件とは言えないことが判明した。「トップブランド商品」は,すでに存在を知られているため,再生想起だけで済むため,〔見せる〕〔知らせる〕〔分からせる〕の段階を省略した“スキップ広告”を甘受させる状況を作り,<ノン・インサイト>広告が集中する結果を創出しているのである。「しかし,理想的には<インサイト>を革新し続け,持続性のある「ヒット商品」であり続けることである」(20ページ)としている。

結論
 <ノン・インサイト>広告でも,消費者に届くが,「届く」と「効く」の間には<インサイト>と<ノン・インサイト>の距離があると言ってもいいだろう。広告キャンペーンの多面的,有機的,統合的な連携のある仕組みが必要であることは言うまでもなく,広告のダイナミズムは<インサイト>だけでは生まれない。「『効く広告』は,小さな<インサイト>の発見に始まり,大きな組織改革に至る」(21ページ)

出典:南勲(2003),「良質のクリエーティブを阻害する要因から「効く広告」の考察 -「不良広告」から「効く広告」への道程」『日経広告研究所報』,213号,14-21ページ。

投稿者 02hidemin : 2005年06月16日 23:34

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