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2005年06月09日

広告が消費者の価格感度に与える影響(下)・(奥瀬・上田2000)

4)非価格広告が消費者の課買う感度に与える影響についての実証研究
5)広告が消費者の価格感度に与える影響を考慮した広告効果測定モデルの構築
6)まとめ

4)非価格広告が消費者の課買う感度に与える影響についての実証研究
 この章では,非価格広告が消費者の意識レベルの価格感度に与える影響に関する実証分析を紹介する。奥瀬(2000)では,コンジョイント分析を用いて,被験者五十一人のアンケートデータを基に非価格広告が消費者の価格感度に与える影響についての実証分析を行っている。この実証分析では,非価格広告が消費者の価格感度を引き下げる効果があることが実証された。消費者の価格感度研究分野の先行研究との流れから言えば,今回の調査では,非価格広告の提示は被験者がブランド選択する際の「価格」の相対的な重要性を低める傾向が見られた。「これはComanor et al.(1995)の『広告は消費者の価格感度を低める』という仮説,Kaul et al.(1995)による仮説の一つである『非価格広告は消費者の価格感度を低める』という仮説を支持する」(28ページ)としている。

5)広告が消費者の価格感度に与える影響を考慮した広告効果測定モデルの構築
 この章では,「上方価格弾力性」「下方価格弾力性」と呼ばれる概念を考慮した広告効果測定モデルの構築を試みていく。上方価格弾力性とは「値下げに伴う売上の変化を示す弾力性」であり,下方価格弾力性とは「値上げに伴う売上の変化を示す弾力性であり,この上方弾力性概念,下方弾力性概念は,価格弾力性を分離することによって,値上げ時と値下げ時とで異なる消費者の価格反応を示している。これに関連して,Rossiter et al.(1997)は,「値下げに対する反応を大きくし,値上げに対する反応を小さくする」ような上方弾力性を増大させ,下方弾力性を減少させるような広告が望ましいことを示唆している。ここで仮説の再構築を試みる。今回の実証分析で用いられる広告のデータは非価格広告のデータであるため、「非価格広告は値下げに対する反応を大きくするが,値上げに対する反応を小さくする。」という仮説を検証する。また,仮説を検証する広告効果測定モデルは①広告は価格感度に影響を与える②広告が増加する場合と減少する場合とでは,その効果の変化過程は異なる③価格が引き上げられる場合と価格が引き下げられる場合で,そのインパクトの大きさは異なる,以上3つの特徴を備えている。この三つの仮説について,今回は六ブランドの台所用洗剤データを用いた。広告が消費者の価格感度に与える影響の有意性を検証するために,「広告が価格変数に影響を与える」と仮定しないモデルによる推定も行い,推定結果の比較も行うことにした。分析の結果は,価格感度への影響を仮定しないモデルの方が,モデル全体の当てはまりが良いことが示された。そして,今回提示した広告が,消費者の価格感度に与える影響を考慮したモデルの有効性を強く支持する結果は得られなかった。

6)まとめ
 以上のように,広告が消費者の価格感度に与える影響に関する二つの実証分析事例を提示した。二番目のモデル構築に関してはあまり芳しい分析結果は得られなかったが,一番目のコンジョイント分析による分析結果からは非価格広告が消費者の価格感度を低めることが示された。「このことを踏まえると,広告が消費者の価格感度に何らかの影響を与えていることは言えそうである」(31ページ)今回提示したモデルは単純なものであったため,今後ロジット型モデルなどによって検討を重ねる必要がある。

出典:奥瀬善之・上田隆穂,「広告が消費者の価格感度に与える影響(下)」『日経広告研究所報』,190号,27-31ページ。

投稿者 02hidemin : 2005年06月09日 23:59

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コメント

出典のことですが、(上)を(下)に変えてください!

投稿者 tsukazaki : 2005年06月13日 17:03

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