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2005年06月11日

日米の大学生の広告教育に対する意識調査-共通調査票による調査の結果とその意味-(嶋村 2003)

要約
 この論文は日本とアメリカの大学生の大学生活における,広告教育に対する意識の持ち方をアンケートによって調査し,その結果をまとめた物である。

1.調査実施概要,質問項目と調査票について
 調査対象は早稲田大学商学部「広告論」履修者,関西大学社会学部「広告演習」履修者,専修大学経営学部「広告論」履修者,計424名の日本学生とテキサス大学ホスティン校広告学科学生,ミシガン州立大学広告学科学生,フロリダ国際大学広告PR学科学生,計313名である。調査方法は各講義中に目的を告げて,調査票によって行う。期間は2001年12月19日~2002年2月15日としている。
 調査票は初めに日本人学生用を作り,その後日米の事情に応じて選択肢などを一部変更し英語の調査票を作ったとしている。主な質問項目は以下のとおりで,その結果の一部を次の章で記す。①大学入学前に広告について学んだ経験②広告に興味を持った時期③広告論の講座を受講している理由(日本),広告を専攻した理由(アメリカ)④広告論を受講する前に期待していた内容(日本),広告学科に入学する前に期待していた内容(アメリカ)⑤広告論で実際に扱われている内容(日本),広告学科で実際に扱われている内容(アメリカ)⑥広告論に必要な教育内容(日本),広告学科に必要な教育内容(アメリカ)⑦広告関連科目への満足度(日本),広告専攻であることへの満足度(アメリカ)⑧将来就きたい広告関連の職業⑨大学生活全般に期待すること。

2.調査結果
(1)回答者の男女比率
 日本では広告を履修している学生は関西大学の社会学部を除くと男子の方が多いとしており,これは社会学部が女子の割合が多いことと調査をしたのがゼミであったことが挙げられている。全体で見てもやはり男子の方が多い。しかし,アメリカでは男女比が逆転しており,女子学生の方が履修している割合が多いとしている。
(2)広告に興味を持った時期
 興味を持った時期は日米ともに「大学入学後」と答えた学生が多いとしている。ただし,日本と違いアメリカは高校時代から広告に興味を持ち始めていたことがうかがえるとしている。
(3)広告を専攻した理由,広告論を受講している理由
 アメリカな学生は「広告をマーケティング活動としてではなく,アメリカを代表するポピュラーカルチャーと考えている」(3ページ)としている。これに対して日本の学生は「マーケティングに関する知識として広告全般を知っておきたいからという目的が見える」(3ページ)とし,また広告に興味はあるが将来,広告を職業にしたいと考えている人は多くないとしている。
(4)広告学科,広告論で実際に扱われている内容
 アメリカでは「メディア・プランニング」,「広告制作の実技的なこと」,「広告に関する調査の方法」,「インターナショナル,グローバル広告」,「広告計画全体の流れ」,「広告と社会的責任」の6つの項目が平均値を超えたとしている。日本では「広告の規制」などいろいろな項目がアメリカを上回っているが,全体的に見ると「1つの講義の中でいろいろな内容が扱われているのが日本の広告論の特徴にも見える」(5ページ)としている。
(5)広告学科,広告論に必要な教育内容
 アメリカの学生は,全般的にどの項目も必要と回答しているが,リサーチ嫌いもあってか「広告に関する調査の方法」は相対的に見ると必要度のランクは低いとしている。日本の学生は「広告の規制」や「広告の効果測定」が講義を受けた後に必要度が増すとしている。また,「広告の歴史」は日米ともにランクは低かったと述べている。
(6)大学生活全般に期待すること
 日本の学生は「大学生活を社会に出るまでのモラトリアム期間と考えている」(7ページ)という言葉からわかるように「大学は楽しく生活するところであり,しっかり勉強して学士や修士といった学位を取得するための場とはとらえていない」(7ページ)と述べている。それに対してアメリカの学生は実際に社会に出た時のためにちゃんと勉強するための場ととらえているとしている。

 結論は以下のとおりである。日本の学生は消費者行動や心理学,マーケティング的な視点から広告を学びたいと考えている。将来どの分野にでも就職できるような幅の広い知識を必要としており,また,将来に役立つ技術をつけたいという意見も多く,これは従来の大学教育では不可能であるとしている。アメリカの学生は根本的に日本の学生と考え方が違い「大学を卒業するときには,自分を明確に差別化するものを身につけていることが当然」(8ページ)と思っている。広告勉強もすぐに役立つものを必要としていると記されている。しかし,大学生活を勉強だけで過ごすのではなく,友達と遊ぶことも日本よりポイントは低いが重要であると述べている。

出典:嶋村和恵(2003),「日米の大学生の広告教育に対する意識調査-共通調査票による調査の結果とその意味-」『日経広告研究所報』,37(4),2-8ページ。

投稿者 : 2005年06月11日 20:34

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