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2005年06月09日

ヨ-ロッパ小売業の国際化への途(河野1995)

要約
本稿では,まず既存の企業国際化に関する多くの分析が,製造企業を対象としてきたものであるという問題点を指摘している。そして,流通企業の国際化を論ずる本稿の目的は,①流通企業が販売するサービスの特徴を明確にすること,そして,次に過去の主な流通革新はヨーロッパから誕生したことにより,②ヨーロッパ小売業の国際化の要因を明確にすること,③ヨーロッパ小売業の国際化の現状を分析することであるとしている。

サービスの基本特性
サービスの,無形成であること,生産と消費の不可分,不均質性,貯蔵が不可能であるという4つの特性を述べ,そこから①サービスが物的財に包含される程度が,サービスの取引能力を規定すること,②供給されるサービスが有形製品に含まれる場合,外国市場に輸出したりすることが可能であること,③サービスの提供が人に依存すると企業消費者の所まで移動したり最寄に立地しなければならないことの3つの考察が行われている。

国際化の動機
 ヨーロッパ小売業の国際化の動機は,大きく分けてプッシュ動機とプル動機の2つに分けられる。プッシュ動機とは,海外市場の相対的魅力度を高めるために作用する要因であり,換言すれば小売業の本国市場を魅力の無いものにするように作用する要素である。プッシュ動機の例としては,市場の飽和,新規開店や営業時間を規制する法律や労働法があり,実例として,オランダの1990年代における市場の飽和や,フランスのロワイエ法などが挙げられている。
プル動機は,海外発展を魅力的にする要因であり,未開拓の海外市場,ニッチ市場となる可能性などが挙げられている。実例としては,差別化された商品あるいは取引フォーマット並びに普遍的手段における強い信念により,マーケティングニッチの創造と拡大を目指してきたイタリアのBenettonが紹介されている。
さらにもうひとつ,プッシュプル動機以外の要因として文化的要因が挙げられている。

国際化の現状
 ここでは,フランスが事例として取り上げられている。フランス小売業の1960年から1980年における海外進出は近隣諸国に徐々に進出するというものであった為,フランス本国や,身近な文化から遠く離れていないために,これらの諸国への進出は困難性や大きな危険性も示さなかったとしている。
次にヨーロッパ小売業の戦略について述べられている。第一の戦略は「商業信用と金融信用及び最高の収益性に達するために,生産性の利益を獲得する事のみならず,全国のリーダーになったり,あるいは,外国への競争者に対して道を閉鎖したりすることに代表される」(27ページ)としている。これには産地における強化,買収等の多様化における強化,排他的販売等の攻撃による強化が含まれると述べられている。
第二の戦略として,内部成長として,海外での子会社の設立により活発に変動する形態を与えることが可能であり,さらに外部成長としては,外国企業の買収や資本参加を介して地方パートナーと共に子会社の比較もなすことが可能である点が挙げられている。
今後の課題としては,「ヨーロッパ小売業の国際提携の問題が残っている」(29ページ)としている。

 論点はヨーロッパ企業の海外進出要因について,文化的要因も大きな影響を与えていると考えられる
が,プッシュプル要因に比べ文化的要因に関する言及があまりにも少ないように考えられる。

出典:河野三郎(1995)「ヨ-ロッパ小売業の国際化への途」『富大経済論集』,第41巻第2号,159-175頁。

投稿者 02kayasi : 2005年06月09日 23:53

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