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2005年06月02日

広告が消費者の価格感度に与える影響(上)・(奥瀬・上田2000)

1)はじめに
2)広告が消費者の価格感度に与える影響に関する既存研究
3)新しい枠組みの創造

1)はじめに
 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)のような,統合的な視点から,マーケティング戦略を構築していくためには,それぞれのマーケティング・ミックス間の関係性が明確にされることは重要であろう。また,パネルデータ,個人視聴率データ等の個人レベルデータの利用可能性が増大してきている。このことから,それらのデータを用いた個人レベルでの実証分析,および効果測定モデルの構築も可能になっている。この論文では,これらのマーケティング・ミックスの中でも広告と価格に注目し,特に広告が消費者の価格感度に与える影響に焦点を絞る。

2)広告が消費者の価格感度に与える影響に関する既存研究
 Nelson(1974)では,広告露出は消費者に情報を提供するため,消費者はそれらの情報により探索を行い,結果として消費者の考慮集合を拡大させ,ブランド間選択を価格属性に基づいて行うため,消費者の価格感度は高まるという見解を示している。この見解は一般的に「情報理論(Information Theory)」と呼ばれる。
 Comanor et al.(1979)では,広告は消費者の製品差別化を高めるものであるため,広告露出の結果としてブランド・ロイヤルティを高め,ブランド選択要因としての価格要因の重要性を低めるとする見解を示している。この見解は「市場支配力理論(Market Power Theory)」というもので,広告露出は消費者の価格感度を低めるとする,産業組織論の観点からの考え方である。
 八十年代に入ってから,両者の食い違いを解明しようとする研究が見られるようになり,それらの研究の中でも,広告が消費者の価格感度に与える影響に注目した研究に注目すると,①消費者行動要因②競争要因③広告要因の三つに分類できる。

3)新しい枠組みの創造
 現在までの研究をふまえて,①印刷広告,チラシ広告の場合には,広告は消費者の価格感度を高める傾向にあり,TV広告の場合には価格感度を低める傾向にある②価格広告は消費者の価格感度を高め,非価格公告は消費者の価格感度を低めるということがわかっている。「しかしながら,価格研究の視点からこの問題について見た場合,まだまだ議論の余地がある」(11ページ)。また,価格研究において,「損失の回避」のために,同程度の利得と損失がある場合に,利得への反応よりも損失に対してより大きく反応するという理論である,プロスペクト理論という理論がある。「これに照らして考えれば,消費者は同程度の値上げと値下げに対して,値下げよりも値上げにより多く反応すると考えられる。従って,同一の消費者であっても,同程度の値上げに対する反応と,値下げに対する反応の程度は異なると考えられる」(11ページ)。価格研究の視点から,広告が消費者の価格感度に与える影響について議論することは,価格設定は広告内容と同様に操作可能な要因であるため,マネジリアルなインプリケーションが期待され,価格研究の概念を取り入れた新しい枠組みを示唆するものである。
 
出典:奥瀬善之・上田隆穂,「広告が消費者の価格感度に与える影響(上)」『日経広告研究所報』,190号,8-12ページ。

投稿者 02hidemin : 2005年06月02日 23:00

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コメント

タイトルと出典に出版年が抜けています。また,出典のカンマも一箇所抜けています。

投稿者 Baba : 2005年06月04日 16:43

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