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2005年06月02日

アジアへの小売ノウハウ移転に関する考察-韓国・台湾への百貨店ノウハウ移転を例に-(川端 2003)

要約
 本稿では,小売業の技術移転問題について論じられており,まず,技術移転問題が製造業を中心とした研究が中心であったことや研究対象がスーパーマーケットに偏ってきたこと等の問題点を指摘した上で,①わが国からアジアへのノウハウの移転,②百貨店業態のノウハウ移転のの実態解明,さらに,韓国,ロッテ百貨店と台湾・中友百貨店の事例研究を基に③どのようなノウハウが,④どのようにして移転されたのかを具体的に検討している。

理論的検討は以下の通りである。小売ノウハウ移転問題を,韓国と台湾への百貨店との提携に焦点をあてて検討されている。まず,主な提携先が韓国と台湾に集中した要因としては,日本との歴史的な関係と,日本小売業が,両国を日本向け商品開発基地として捉えていたことがあげられている。次に百貨店という業態が選ばれた理由としては,1970年代までは韓国や台湾の小売業は既存小売業に店舗内の小間を貸し出す賃貸業の域を出ていなかったことと,製造業や保険業を主とする企業が百貨店を出店にあたり,統一的なコンセプトをもった日本の百貨店のノウハウが重要視されたためであると述べられている。移転されたノウハウの特徴としては,店舗関連のノウハウ項目が大半であり,小売ノウハウの中心的領域であるはずのMD関連や販売関連,業務関連のノウハウは現地環境への適応化が要求されるため,日本のものがそのまま通用しにくいので移転の対象にはなりにくかったと述べられている。続いて,移転手法の実態調査が,高島屋からロッテ百貨店への移転と,松屋から中友百貨店への移転を事例として取り上げながら分析されている。ここでは移転元企業からの長期駐在指導が,移転されたノウハウを日常の全体的な動き,そして諸活動の調整を行う点から効果的であると述べられている。
 
結論は以下の通りである。小売ノウハウ移転に関して重要なのは,移転元企業からの長期駐在指導に加えて,「日本の百貨店の社会的地位や消費者の百貨店への期待などを,経験的に知ることにより,習得すべきノウハウの必然性やその意味を理解」(45ページ)することが重要であるとされている。
 
論点は以下の通りである。小売ノウハウと暗黙知との関係の重要性が指摘されているにも関わらず,小売ノウハウの中の暗黙知に対する検討が十分なされていないところが問題点であると考えられる。

出典:川端基夫(2003),「アジアへの小売ノウハウ移転に関する考察-韓国・台湾への百貨店ノウハウ移転を例に-」,『アジア経済』,第44巻3号,31-49ページ。

投稿者 02kayasi : 2005年06月02日 19:49

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コメント

出典の「」の順番が違うと思います

投稿者 02daigo : 2005年06月03日 16:39

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