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2005年06月20日

ポスター広告の色彩表現の特質と評価に関する日中台韓比較(千々岩 2003)

要約
 本稿ではポスター広告の色彩表現の特質を把握すること,またポスター広告の色彩表現を比較することによって,これらの色彩表現に対する国別の見方(評価)の一致点と不一致点を明らかにすることを目的としている。

1.ポスター広告の表現技法調査
 ポスター広告の色彩表現の特質の調査方法としては日中台韓の広告年鑑や図録から日本226,中国309,台湾278,韓国246,総数1059種類のポスター広告を収集し,データベースを構築している。そして,「制作方法」「表現方法」「印刷方法」「余白面積の大小」に区分し,複数の大学院生が一定の判断基準に基づき判定を行った。その結果,表現方法は4カ国・地域間で多少の相違が見られた。特にCGに関しては韓国と中国の使用率が高く,日本と台湾では,絵筆の使用率が高いことが判明した。印刷方法では,どの国でも4色刷りが一般的なものではあるが,日本と台湾のポスター広告には「墨+1色」という方法を用いたものが他の国に比べて若干,高い割合を示していた。また「日中台に比べ韓国は,CG使用率や4色刷り率も高く,制作に使用する色数もやや多く,色がにぶいものが多かった」(16ページ)。

2.ポスター広告の色彩解析
 140種類(各国35種類)のポスター広告の色彩解析結果,日本と中国のポスター広告は比較的使用する色数が少なく,韓国と台湾では逆に多い。また韓国のポスター広告は「ほかの3カ国のそれに比べて色が鮮明なものは少なく,色のまとまりを欠くものがやや多いことを示している」(11ページ)。各国,赤を用いたポスター広告が多いのが特徴だが,特に日本と韓国でその割合が高い。次に,ポスター広告の色彩表現に対する日中台韓の学生の見方(評価)を比較し,一致点と不一致点を明らかにするために先ほどの140種類のポスター広告を美術,デザイン,建築を専攻する493名(日本124名,中国97名,台湾150名,韓国122名)の学生に評価させた。その結果,韓国のポスター広告の色彩表現が優れ,中国が劣ると評価された。国・地域別の見方では,韓国の学生は自国のポスター広告の色彩を高く評価しており,日本の学生も韓国のポスター広告の色彩表現に高い興味を示している。台湾の学生は韓国よりも日本のものを高く評価し,自国のポスター広告の色彩に冷静な評価を下している。ポスター広告の色彩表現で4カ国・地域の学生に好感が持たれるものとして,まず挙げられるものが色数を控えたポスター広告である。またポスター広告が「その国の人の心に届くためには,その国の伝統や文化を踏まえること」(14ページ)が重要であるため地域色(ローカルカラー)やその国らしさ(ナショナルカラー)を意識した色彩表現が大切になってくる。そして,日本の学生の場合,中国,台湾,韓国の学生に比べて少ない色数で簡明な色彩表現をしたポスター広告を著しく高く評価する反面,韓国のような複雑微妙な色彩表現にも関心を示していることにより日本の学生にはポスター広告に面白さや新奇性を求める潜在的欲求が強いことを示している。

結論
 日中台韓の4カ国の学生間のポスター広告の評価に関して色彩表現が最も優れていたのは韓国であり,その逆は中国である。また色彩表現の優劣の主な要因は色数であり,どの国でも色数が少ない方が高く評価される傾向が見られた。

出典:千々岩英彰(2003),「ポスター広告の色彩表現の特質と評価に関する日中台韓比較」『日経広告研究所報』,37(5),10-16ページ。

投稿者 : 2005年06月20日 16:46

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