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2005年06月18日

台湾のコンビニエンス・ストアの展開(許 1996)

要約
 この論文は台湾におけるコンビニエンス・ストアの登場と発展について述べられている。ここでは主に台湾の商業の現状,コンビニエンス・ストアの導入と展開,日本と台湾のコンビニエンス・ストアの比較について述べられている。台湾のコンビニエンス・ストアは1979年に食品メーカーである「統一企業」が「統一超商」の開店したことにより登場したが,日本の1店舗当り人口が2756人であるのに対して,台湾では1万6967人であるということに示されているように,台湾のコンビ二エンス・ストアは成長段階にあり,飽和状態に達するには時間を要すると述べられている。今後の課題としては,現状では不十分であるEOSやPOSなどの情報システムを導入することがあげられている。最後に今後コンビニエンス・ストアの発展に伴い,中小零細小売業が廃業・転業に追い込まれるという社会問題が発生するであろうとしている。

1.台湾商業の現状
 台湾では零細商店が大半を占めているが,その一方で1986年以降綜合小売業(百貨店,スーパーマーケット,コンビニエンス・ストア,量販店を指す)が急成長したと述べられており,また,大手企業は外国の流通企業との連携や合弁会社の設立を行い,外資や経営ノウハウを導入したとしている。その中でも百貨店は主に日本企業との提携・合資が多く,コンビニエンス・ストアはアメリカ企業が多いとしている。

2.台湾におけるコンビニエンス・ストアの導入と現状
 台湾のコンビニエンス・ストアは1979年に食品メーカーである「統一企業」が「統一超商」を展開することにより登場したとしている。同社は同年10月にサウスランド社との提携を行い,系列下の店舗名をセブンイレブンに変更したと述べられている。この統一企業の小売業参入は自社の工場で生産された商品の専売店を開くことを目的としたものであり,「この場合のコンビニエンス・ストアはメーカーの商品がうまく売れる経路をつくるためにつくられた店舗である」(5ページ)としている。台湾におけるコンビニエンス・ストアは始め主婦を対象として住宅地に出店したが,伝統的な雑貨店や市場は客との馴染みが深い上,価格もコンビニと比して安価であることやコンビニの店舗が少なかったことから,消費者にとって疎遠な存在だったと述べられている。しかしながら,1988年以降,それまで統一超商一社であったコンビニ業界に多くの会社が参入していると述べられている。女性の社会進出や世帯人口の減少により消費の多様化や少量化が引き起こされたことが追い風となり,標的を主婦から学生やサラリーマンを中心に設定を変更し,店舗についてもそれまでの住宅地から人通りの多い交差点のコーナーや道路端に出店するようになったとしている。また,統一超商のセブン・イレブン,統一麵包,全家便利商店,OK便利商店,萊爾富の上位5社が全店舗数の約78%売上高で97%と占めるとしており,上位集中度が極めて高いことが述べられている。

3.台湾におけるコンビニエンス・ストアの展開
 まず,チェーンシステムにおいては1989年にはRCが中心であったが,1994年にはRC占有率が減少し,FC(フランチャイズチェーン)やVC(ボランタリーチェーン)が増加したとしている。また,VCについては利益のほとんどがオーナーに帰属し,組織面では小売業者の資本,経営上の独立性が確保され,台湾人に受け入れられやすいシステムであるとしている。情報システムについてはコンビュータを導入している店舗は32.4%,コンピュータを在庫管理に利用している店舗が約10%,コンピュータを店頭の運営管理に利用している店舗が約27%であることから,コンビニにおける情報システムの普及は不十分であり,今後普及させることが課題になるとしている。

4.台湾と日本の比較
 台湾におけるコンビニエンスストアは小売業全体の0.4%,売上高は全体の1.6%であるのに対し日本においては店舗数3.2%,売上高5.8%を占めているとしている。参入主体については台湾では主として食品メーカーであるのに対し,日本の場合はスーパーが多くを占めるとしており,その理由として台湾では食品メーカーによる自社商品におけるチャネル確保があげられており,日本ではスーパーの売上鈍化による多角経営の発展や大店法回避があげられている。店舗展開については台湾においてはポランタリーチェーン方式が有力であるのに対し,日本においてはフランチャイズチェーンが有力であると述べられている。そして,物流システムにおいては台湾では,自社の配送センターをつくるものや専業物流会社に委ねるものやメーカーや卸売業者が直接店舗に配送するものなどに分類されるのに対し,日本では自社配送センターや,既存の問屋ルートが利用されることが多いとしている。

 結論は次のとおりである。台湾におけるコンビ二エンス・ストアは発展段階にあり,今後の出店地域は北部地域への過剰出店を避け,中・南部地域へ店舗展開を行うことが予測されると述べられている。

 論点は次のとおりである。主婦が家庭のために食品を買う時間を減らしたいと願ったことや働く女性が増えたことが追い風となったとしながらも,ターゲットを主婦から学生やサラリーマンを中心としたものに設定し直したと述べられていることに少し矛盾があるように思われる。


出典:許家彰(1996),「台湾のコンビニエンス・ストアの展開」『千里山商学』第41号,1―20ページ。

投稿者 02takenaka : 2005年06月18日 20:26

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