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2005年06月18日

サービス・クオリティとロイヤルティの構造に関する分析-ファーストフード業を事例にして-(鈴木・宮田 2002)

要約
 サービス産業の役割りが増加している世界の経済活動ではサービス・マーケティングの問題が重要となっている。この論文ではファーストフード業におけるサービス・クオリティ評価の構造化とサービス・クオリティ,顧客満足度とロイヤルティの関係を調査するための構造モデルの構築を行うとしている。

1.サービス・クオリティ評価とロイヤルティの構造
①サービス・クオリティ
 サービス・クオリティの最も有名な測定手法はSERVQUAL(Service Qualityの略)があり,これは知覚サービスを測定する際に用いられ,22項目のサービス評価に関する質問項目と信頼性,反応性,確信性,共感性,物理的な要素の因子分析により抽出された5つの尺度からなる。SERVQUALはサービス後の「パフォーマンス」とサービス前の「期待」との差によりサービス・クオリティを導き出している。しかし,それは不特定ベースの測定方法であり問題点が多くあるので,本稿ではパフォーマンスベースの測定,SERVPERF(Service Performance)を用いて測定するとしている。
②ロイヤルティ
 ロイヤルティとは企業が顧客のニーズに合わせて商品を提供して,再びその企業の商品やサービスを利用してもらうことである。しかし,サービス・クオリティや顧客満足度がロイヤルティに深く影響しているのは広く認められているが,その2つ以外にもいくつかの要因を取り上げて,ロイヤルティとの関係を検証するとしている。
③本研究で仮定する構造モデルと仮説
 この章では構造モデルを構築しており,知覚サービス・クオリティ(PSQ)は「要素レベルのサービスの評価から形成されるもの」(73ページ)としており,顧客満足度やロイヤルティへの影響については全体のサービス・クオリティ(OSQ)が直接与えるものと仮定するとしている。具体的な仮説は以下の9つである。①サービス・クオリティは顧客満足度に影響を与える②顧客満足度はロイヤルティに影響を与える③サービス・クオリティはロイヤルティに影響を与える④スイッチング・コストはロイヤルティに影響を与える⑤人間関係の絆はロイヤルティに影響を与える⑥価格はロイヤルティに影響を与える⑦インセンティブはロイヤルティに影響を与える⑧周囲の評価はロイヤルティに影響を与える⑨価格は顧客満足度に影響を与える。

2.アンケートの作成と実施
 PSQについてはSERVEQUALを参考に質問項目を作成しており,そこにオリジナルの質問項目を追加して40項目としている。しかし,実際分析に用いたのは因子分析を行って,共通性が低いものを削除した25項目で行ったとしている。次にロイヤルティ,顧客満足度,OSQに関する質問項目は先行研究からの参考とオリジナルのもので構成されているとしている。ともに7段階評定尺度で,マクドナルド,モスバーガーの両方について答えてもらう。2000年9月から11月に実施し,留置調査法または,集合調査法の形式で,学生123人を対象に行ったとしている。

3.調査結果
①サービス・クオリティに関する質問項目の因子分析
 マクドナルド,モスバーガー,それぞれの質問項目についてバリマックス回転後,因子分析を行い,因子得点をつける。さらにマクドナルドはAMOSを使いPSQ評価構造とOSQとの関係を示したモデルを構築している。
②サービス・クオリティ,顧客満足度とロイヤルティとの関係
 この章では,初めの章で記した仮説①~⑨が実証されたかが記されている。ただし,仮説①は先行研究により実証されているので本研究ではその検証が除かれている。仮説①,②は両者ともに確認された。仮設③,④はマクドナルドのみ,仮説⑧はモスバーガーのみ,仮説⑤,⑥,⑦,⑨は両者ともに確認されなかった。仮設①,②が確認されたことから,ファーストフード業界において,「サービス・クオリティが顧客満足度に影響を及ぼし,顧客満足がロイヤルティに影響を及ぼしていることを示唆している」(77ページ)と述べている。

結論は以下のとおりである。ファーストフード業界において,顧客満足度やロイヤルティにサービス・クオリティは深く影響していると記されている。

出典:鈴木秀男・宮田知明(2002),「サービス・クオリティとロイヤルティの構造に関する分析-ファーストフード業を事例にして-」『日本経営工学会論文誌』,第1巻53号,71-79頁。

投稿者 : 2005年06月18日 18:18

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