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2005年06月27日

原産国イメージと生産国イメージとブランドイメージの関係(藤沢 2000)

要約
 グローバルな製品政策に関する研究領域において,原産国イメージと生産国イメージが互いに独立なものとして扱われていないことを受け,その二つの関係性を解明すること,また製品のブランドイメージへの影響を明らかにすることが,この論文の目的とされている。その目的達成のために「原産国イメージと生産国イメージが製品カテゴリーによってどういった違いがあるか」(36ページ)について実証的研究がなされている。まず,研究のフレームワークが示され,それに基づき2つの仮説が立てられている。次に,その仮説の検証ためにおこなわれたアンケートの結果,結果に対する考察が示され,最後にインプリケーションと課題が述べられている。

フレームワークと仮説
 まず,原産国は「ある特定製品ブランドの発祥国」(36ページ)と定義されている。基本的に原産国イメージは国ごとのイメージから形成されるが,それは特に発展途上国製品の場合,製品カテゴリーに区別なく,国の発展段階をベースとし原産国イメージに影響を与えるという。他方先進国製品の場合は,自動車はドイツと日本,ワインならフランスやスペインといったように「製品カテゴリー間での原産国イメージの格差が大きい」(36ページ)と述べられている。そこで,工業技術力とマーケティング力の2つで構成される国別イメージが,原産国イメージと生産国イメージを独立に形成し,その二つがブランドイメージに影響を与える,というような研究のフレームワークが提示されている。さらに,ここでは2つの仮説が立てられている。高関与型製品ほど原産国イメージと生産国イメージの格差が小さい,またブランドロイヤルティの高い製品ほど原産国イメージと製造国イメージの格差が小さいという仮説である。高関与型製品というのは,ある製品の購買意思決定までに,製品に関する情報処理に時間を多く要する製品である。

調査の結果と仮説検証
 仮説の検証のためにアンケート調査が行われている。アンケートでの国別イメージの対象国は日本,日本との貿易でかかわりの深い国々の13カ国,対象製品カテゴリーは乗用車,コンピュータ,音響機器の3つである。国別イメージである工業技術力とマーケティング力それぞれについて,高く評価できると判断した国順に順位をつけてもらい,また3製品についても原産国イメージ,生産国イメージにわけ同じ様に順位をつけるように求めている。その他個人属性として,3製品それぞれに購買意思決定するまでの時間の長さの順,特定ブランドへのこだわり度等の質問が用意されている。これらのデータをもとに,工業技術力とマーケティング力の相関,これら2つの国別イメージと製品カテゴリー別原産国イメージおよび生産国イメージの相関,原産国イメージと生産国イメージの相関が実証的に分析されている。
 分析の結果,工業技術力とマーケティング力の相関は非常に高かったことが示されている。また,原産国イメージと生産国イメージの適合度の最も高いものは乗用車であり,逆に低いものは音響機器であること,コンピュータは,原産国イメージと国別イメージ,生産国イメージと国別イメージともに相関が弱いことなどが示されている。コンピュータについてのこのような結果は,コンピュータはグローバルな標準化製品であること,買い替えサイクルが短く,買い替えの際にブランドスイッチングが起きやすいこと,ブランド・ロイヤルティが音響機器に比べて低いことなどに起因するとしている。また,購買意思決定するまでの時間の長さを関与度と定義し,関与度の高い製品は順に乗用車,コンピュータ,音響機器となっていることがアンケートから示されている。これらの結果から,関与度の高い製品ほど原産国イメージと生産国イメージの格差が小さいという仮説1は支持されるとされている。また,仮説2に関しては今回の調査からは明らかにされなかったと述べられている。

インプリケーションおよび今後の課題
 ブランド・ロイヤルティに関する仮説2は今回の調査からは検証されなかったが,「ブランド・ロイヤルティは同じ製品カテゴリー間で比較検討した方が望ましい」(43ページ)とし,いくつかその方法が示されている。その方法に基づいた,ブランドイメージと原産国イメージと生産国イメージの関係についての検討は次の機会としている。また,ブランド・イメージと生産国イメージの関係を明らかにすることも次の課題とされている。

論点
 工業技術力とマーケティング力が国別イメージを構成すると考え,その二つの相関を分析しているが,そのように考えた理由が明確にされていない。また,工業技術力とマーケティング力自体が何かという説明もなく,アンケート項目に盛り込み,それをデータとして使用しているのことにも問題があると思う。

出典:藤沢武史(2000),「原産国イメージと生産国イメージとブランドイメージの関係」『商学論究』第48巻第2号,35-44ページ。

投稿者 02eiko : 2005年06月27日 13:04

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