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2005年06月23日

広告マネジメントの日・欧米比較-日本的広告マネジメントの本質的特徴を探る-(亀井 1996)

要約
 現在において,わが国広告関係者の一般的な認識となっている欧米流の広告管理実務(への理解)との対比における,わが国広告主の一般的な広告マネジメントの実態と特質をこの論文では浮き彫りにしている。わが国広告界における広告マネジメントの本質的特徴として,主として①「関係性」重視の広告マネジメント②「多数値」結集型の広告マネジメント③「社外依存」と「社内集中」のクロスオーバー型の広告マネジメント④「期待」と「信頼」に基づく広告マネジメントがあげられる。

 広告管理技術や理論が欧米,とりわけ広告先進国であるアメリカから導入・消化され,わが国の広告や,広告マネジメント実務が高度の成長・発展を遂げたことは紛れもない事実であると同時に,未だ広告管理思想や技術などの面で見習うべき点や事例が存在していることも事実である(7ページ)。しかし,そうした欧米流の広告管理の実務や理論は,果たしてわが広告主にとっての模範的で理論的なモデル,または「模範」に即なりうるのであろうか?現在においてもわが国広告関係者の一般的な認識になっている,欧米流の広告管理実務(への理解)との対比における,わが国広告主の一般的な広告マネジメントの実態と特質をこの論文では浮き彫りにしていく。
 ここで,わが国広告界における広告マネジメントの本質的特徴を列挙していく。第一に,「関係性」重視の広告マネジメントが挙げられる。これは,わが国広告界では,マネジメントの際の活動ないしは処理の対象(人・モノ・システム・方法・組織等々)との関係性の重視にあると見ることができ,そしてより継続的な(取引・人間・処理手続き等々との)関係性の維持のほうが原則的に優先される傾向の存在が認められるのである。第二に,「多数値」結集型の広告マネジメントが挙げられる。これは,わが国広告主の一般の広告部門のスタッフの数の多さ,広告主が取引をしている広告会社や広告製作会社をはじめとする社外の広告関係企業や利用スタッフの数の多さからわかる通り,わが国広告主の一般的な広告マネジメントが,欧米の広告界に見られるような比較的限定された広告専門家郡による限定領域的な発想や実務や競争によって実現されているのではなく,新人からベテランに至るまでの幅広い,しかも極めて流動性の高い人材郡によって支えられていることを意味する。第三に,「社外依存」と「社内集中」のクロスオーバー型のマネジメントが挙げられる。これは,いわゆるAE制ないしは一商品一広告会社制,さらには広告マネジメントの質的大変身を現実化しうるものとして,関係者の間で最近期待されているアカウント・プランナー制に見られるような,原則として社外依存型の構造にはなっていないというものである。これは「身内意識」の徹底により,マネジメント上の秘密や各種ノウハウの社外流出を極力最小化し,広告競争上の優位性を確保し続けるという長所があるが,それが,社外の専門家の英知と高度な技術を活用するという機会が少なくなるという短所も併せ持つ。そうした長所と短所の狭間で,わが国広主の広告マネジメントは,社外依存と社内集中のミックスまたはクロスオーバー型の構造を選択している,と見ることができる。最後に,「期待」と「信頼」に基づく広告マネジメントがある。これはわが国広告界の広告マネジメントが原則的に企業という組織体ないしはその構成員相互の「期待」と「信頼」に基づいているということ(10ページ)である。確かに「期待」や「信頼」はある意味において一方的なものであり,客観的な事実に対しては泡沫のような存在ではあるが,広告マネジメントもそれが広告担当者という人間によって担われ展開されている限りにおいて,その根底に存在しうる根本的な要素であろう。

結論
 市場・経営環境などの激変(の予想)は,多少のマネジメント効率や費用効率性を落としても,このような特徴的側面を変えていかなければならない決断に広告マネジャーが迫られてきていることも事実であり,このことが今後わが国の広告界の広告マネジメントの性格を大きく変えていくことも予想されるところである。

出典:亀井昭宏(1996),「広告マネジメントの日・欧米比較-日本的広告マネジメントの本質的特徴を探る-」『日経広告研究所報』,167号,7-10ページ。

投稿者 02hidemin : 2005年06月23日 23:36

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