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2005年06月25日

スポーツクラブの従業員の職務満足が顧客満足に及ぼす影響に関する研究-両者の評価するサービス・クオリティの観点から(市野・清水・梁瀬・渡辺・永田 2002)

要約
 本稿はスポーツクラブにおける職務満足が,従業員と顧客,両者のサービス・クオリティ評価を媒体として顧客満足にどのように影響するかを述べている。

1.緒言
 多くの組織において従業員は組織のために働くのが当然で,職務に満足を得ることができなかった。満足の理論としてここでは,ハーズバーグの2要因理論と西田のモチベータ「引力」理論が挙げられている。組織によって従業員が満足を得るためには,衛生要因(職務をとりまく環境に関するもの)ではなく,従業員が直接満足を得る,つまり,「従業員が仕事それ自体に個人の目的を追求することが重要となる」(20ページ)と述べている。組織においても,従業員との「統合」こそが組織成果のプラス要因になるとしている。そこで本稿は,スポーツクラブの従業員の満足が「従業員と顧客の評価するサービス・クオリティを媒介として顧客満足に及ぼす影響について明らかにする」(20ページ)としている。

2.理論的背景の整理と実証モデルの構築
①従業員の職務満足が仕事を通じて組織成果に影響を及ぼすために前提となる条件
 従業員が仕事において満足を得ることが組織の利益につながるとし,サービス・クオリティを通じて顧客満足に影響を及ぼす要因となり得るための前提条件は『仕事による個人と組織の「間接的統合」と「プロフェッショナルな従業員」が理論的背景にあるものとする』(20ページ)としている。
②従業員の職務満足が従業員の評価するサービス・クオリティに影響を及ぼすメカニズム
 本稿において重要な点は従業員の満足がサービス・クオリティに影響を及ぼす要因としてどう捉えられているかである。Porterの期待理論のパラダイム,「期待→努力→遂行→報酬→満足」より2つのフィードバック・ループが存在する。本稿では,その1つの「実際に得られた,満足が報酬の価値への期待に影響を及ぼすもの」(20ページ)というフィードバックを使い,期待が高まれば遂行が高まるとしている。以上のことより従業員の職務満足はモチベーションへの継続過程を通じて,その後のサービス・クオリティを高める要因として捉えることができるとしている。
③従業員の職務満足が(従業員と顧客の)評価するサービス・クオリティを媒介として顧客満足に影響を及ぼす分析モデルの構築
 従業員個人の職務満足が影響を及ぼすサービス・クオリティ(仕事の成果)は従業員1人ひとりによって主観的に評価される。スポーツクラブにおける最も優れた組織成果は顧客の定着率であり,それを決定する顧客満足にほかならない。本研究はスポーツクラブの成果を顧客満足によって説明するものとしている。この章では分析モデルを挙げて,以下のことを明らかにすると述べている。①従業員の職務満足が,従業員の評価するサービス・クオリティに及ぼす影響②顧客の評価するサービス・クオリティが顧客満足に及ぼす影響③従業員の評価するサービス・クオリティと顧客の評価するサービス・クオリティの同調性。

3.研究の方法
①基本概念と操作化
 この章では「職務満足」,「顧客満足」,「従業員の評価するサービス・クオリティ」,「顧客の評価するサービス・クオリティ」がどのようなものであるか定義して,アンケート調査する時に使う質問項目の出し方を記している。
②調査
 対象は経営母体が同じであるスポーツクラブ4店舗で,2000年7月に実施されたとしている。回収数は従業員が109名,顧客が705名de有効標本はそれぞれ105名,691名である。
③分析
 前章で挙げた仮定について,一般統計法と有意差検定,因子分析,重回帰分析を用いて,検討したとしている。

4.結果と考察
①従業員の職務満足が,従業員の評価するサービス・クオリティに及ぼす影響
 分析の結果より職務満足が高い従業員は自分の提供したサービス・クオリティを高く評価している。つまり職務満足は従業員の評価するサービス・クオリティに影響を及ぼすとしている。
②顧客の評価するサービス・クオリティが顧客満足に及ぼす影響
 スポーツクラブ側が提供したサービス・クオリティを高く評価している顧客は,顧客満足が高い,つまり,「顧客の評価するサービス・クオリティは顧客満足に影響を及ぼしている」(24ページ)としている。
③従業員の評価するサービス・クオリティと顧客の評価するサービス・クオリティの同調性
 従業員と顧客の評価するサービス・クオリティの間には,1部違いが見られるが,基本的には同調性が認められるとしている。
④従業員の評価するサービス・クオリティが顧客の評価するサービス・クオリティを媒介として顧客満足に及ぼす影響
 分析結果より「従業員の評価するサービス・クオリティは顧客の評価するサービス・クオリティを媒介として顧客満足に影響を及ぼしている」(26ページ)と述べられている。

結論は以下のとおりである。従業員が職務に対して満足を感じるほど従業員と顧客の双方によるサービス・クオリティ評価を媒介として顧客満足に影響を及ぼすとしている。

出展:市野聖治・清水美恵・梁瀬歩・渡辺裕子・永田靖章(2002)「スポーツクラブの従業員の職務満足が顧客満足に及ぼす影響に関する研究-両者の評価するサービス・クオリティの観点から」『愛知教育大学研究報告書芸術・保健体育・家政・技術科学・創作編』,第51号,19-28頁。

投稿者 : 2005年06月25日 14:52

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