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2005年06月08日

コンシューマーインサイトを考える-アカウントプランニングは今、経営に何をもたらすか- リサ・フォーティニ=キャンベル(2001)

要約 コンシューマーインサイトの目的は,深く感情移入しながら消費者を理解することである。「かつては,モノを作る人とその商品を買う人というのが現在よりも個人的なレベルで繋がっていた」(39ページ)。しかし現在は,マーケティングの機能が専門家・分化したことに伴い,また、企業が巨大化したことで,ビジネスの中心である『顧客』と深いつながり,『共感』を持つことが難しくなってきた。「マーケティング,広告のあらゆる段階で消費者に焦点を当てること」(45ページ)をひとつの重要な仕事と認識することは,非常に大事である。

 コンシューマーインサイトは,広告業界では比較的新しい考え方であるが,しかしその概念は非常に古く、『経営』・『売買』においての簡単で普遍的な考え方である。それはいつの時代も,消費者はビジネス成功の中核だからである。つまり,「製品を作ったり,サービスを提供したりする人が顧客との関係を見つけ,満足させ,消費者との関係維持・促進させることができなければそれはビジネスとして成立しない」(39ページ)。消費者への理解が欠如していると根本的な部分でうまくいかない場合が多い。メーカーと消費者の間に絆と理解を確立することが必要なのだ。そのためには事業規模が小規模で,顧客とのリーチが近いほうがいいのではないか?現在コンシューマー・インサイト,アカウントプランニング(AP)は,現在のマーケティングやのように多くの顧客を抱えた大企業,または国境をまたいだグローバル企業においてのそれは非常に難しいものではないのか?
 しかし,「シンガポール・エアライン,イケヤ,メルセデス・ベンツ,アップルコンピュータなどはグローバルビジネスであっても同じような顧客との結びつきを達成している」(40ページ)。消費者の特定の分野に焦点を当て,消費者が喜び、満足をもたらすように,彼らの理解に努めている。またそれが,ブランドロイヤルティ,利益・売上にはっきりと表れている。
 グローバルな市場においては,高いレベルの専門的なスキルが要求されるが,大企業の多くが機能・職能別に分かれており,専門化をすればするほど,メーカーと消費者間の距離は広がってしまう。大企業では「マネージャーが全ての顧客を個々に知ることは不可能である」(40ページ)。そこで,メーカーと消費者との間のつながりが薄い場合は,より形式化したコンシューマーインサイトとAPによって,両者の関係を強化する必要がある。そこで,つながりを再強化するコンセプトやスキルなどが必要になってくる。
①顧客を特定化すること(ターゲティング)。どの顧客と一番強いつながりを持ちたいかということを明確にするのである。「幅の広いターゲットの設定は,我々の顧客を見失う原因になりうる」(41ページ)。焦点が広すぎると消費者をひとつのカタマリとしてとらえてしまい市場全体のシェア・一年間の商品売れ行きの伸びなどのみに気を取られ,その商品を買ってくれた顧客は,ひとりひとり異なることを忘れがちである。
②顧客に対する真のインサイトを得ること。「海面下の心の部分を見ていかなければならない」(41ページ)。人間を理解する,動機付けを読み込むのである。
③「インサイトを応用し,顧客の経験をより良いものにしていくこと」(41ページ)。消費者との接点で,顧客を知り,理解し,尊重していることを伝える必要がある。

結論 コンシューマーインサイトは,コンシューマーインフォメーションとは違う。それらは「海面上の消費者に関する情報」(42ページ)である。顧客の購入パターン,人工統計学データ,広告キャンペーンの認識度など記述的な消費者を描写するデータの理解の他に,『どうしてこのように行動するのか』ということを考えなくてはならない。「表面的な声と中にある真実との違い。この真実を見抜くのがAPの仕事である」(42ページ)。消費者をビジネスの中にしっかり据えることが必要である。

出典:Lisa Fortini-Campbell(2001),「コンシューマーインサイトを考える-アカウントプランニングは経営に何をもたらすか」『日経広告研究所報』,35(3),38-46ページ.

投稿者 02tsukazaki : 2005年06月08日 22:41

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