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2005年05月13日

アドバタイジング・マネジメント:広告意思決定の理論(D.A.アーカー,J.G.マイヤーズ 1977)

目次
16章広告の社会的,経済効果
17章広告規制

第16章では広告の社会的,経済効果について述べられている。「広告の社会的・経済的問題に関する議論は三つのカテゴリーに分類される。」(660ページ)一つ目は広告の性質と内容を表わすもので、虚偽,操作,嗜好の問題があり,特に広告訴求者が子供である場合には重大である。二つめは,家庭,音楽,学校といった他の社会的機関と競合し,それらを支配すると信じる社会の価値,ライフスタイルに及ぼす効果で,三つ目は広告の新製品の存在を知らせるための効果的手段としての広告の経済的価値はいったいなんなのかといった社会の経済システム運営の効率に及ぼす広告の効果である。
 広告は消費者に影響を与えるかどうかは三つの考え方があり,一つは潜在意識のレベルの動機に訴求して影響を与えるとする動機調査の使用,二つ目は,間接的な情緒的訴求の使用に関するもので,三つ目が広告の質や量により示される広告のパワーについての一般的な主張がある。広告は社会の価値やライフ・スタイルにプラスのインパクトを与えるだけではなく,マイナスの側面ももっていると議論される。それらの問題はどのような価値観が促進され避けられるべきなのか,広告がそれらに対してどのような影響を及ぼすかである。このように考えていくと「広告の経済的インパクトと社会的インパクトを分けることは理に合わないことである。」(677ページ)広告は基本的に経済制度であり、広告の経済的評価が明確になるべきである。ここでは消費者に対する情報提供,銘柄識別の補助,媒体援助,流通コストの問題,景気循環に及ぼす効果,製品効用の提供,新製品の販売促進が評価基準になるとしている。最も重要な問題として広告が競争に対してどのような影響をもっているかである。広告により製品を差別化でき,銘柄忠実度を生み出すことで価格競争を回避することができる。また特定の産業における大広告主は他の競争者より広告スペースを優先的に扱われ参入障壁を形成する。これにより小規模の競争者は銘柄忠実度でも支出面でも大きな苦労を要する。このような広告と市場集中に対する救済策として提案されているものの中には,「産業によっては広告を制限し,禁止したり,課税するというものがある。」(694ページ)

第17章では広告規制について述べられている。広告における虚偽の回避は産業界並びに政府の双方によって認識されており,概念的に虚偽は,あるオーディエンスの知覚過程に広告が導入され,その知覚過程のアウトプットが,(1)現実の状況とは異なり,(2)消費者の損失になるように消費者行動に影響をおよぼす場合に成立する。(701ページ)としている。広告がどのように解釈されているかを見極めるのに消費者調査があるが,裁判の虚偽広告の判例にはほとんど使われておらずその理由として虚偽が成立するか否かの決定を連邦取引委員会が独自に行う権限が,裁判所によって認められたからである。また,無知で信じやすい人をなくすことは難しく,連邦取引委員会は虚偽は誤解するする人は0%であるとしている。連邦取引委員会は虚偽広告に対して差し止めに終始していたが,救済策として訂正広告を提案した。訂正広告は「違法行為を犯した広告主は,過去の虚偽広告を,将来の広告スペースとタイムのうちの一定比率を使って訂正するように要求される」としている。問題は虚偽が消費者に対してどの程度与えるかによって罰をどの程度に設定するのか,それは妥当であるかが論議される。これらの事態をふまえ,連邦取引委員会は広告主に対して,安全性,性能,効力,品質,および他製品と比較した場合の価格に関する宣伝文句について提出させるよう要求する広告制度を検討している。さらに,「広告における真実の法案(Truth-in-advertising)」も提案され目的は,「(1)実証性ある書証が公衆にとって入手可能な情況にないかぎり,いかなる広告も流布されないことを保証するとともに, (2)知る権利,実体のない広告から自分を守る権利,および広告活動における公正の増進を図るために直接行動に訴える権利を,各個人が行使することを保証することにある。」(727ページ)広告業界は自主規制をするようになり,そのことが広告業界自身の発展に寄与している。

出典 D.A.アーカー,J.G.マイヤーズ著;野中郁次郎,池上久訳(1977)『アドバタイジング・マネジメント:広告意思決定理論』,東洋経済新報社,16-17章(659-734ページ).


投稿者 02taku : 2005年05月13日 17:29

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