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2005年05月13日

カルフール:日本市場進出のシナリオ (田村2003)

要約
 この論文では,アジアで成功を収めているカルフールが,2000年に現地法人化によって日本市場の参入を表明したので,日本の流通業市場は脅えていたが,カルフールのフォーマットが日本の顧客価値にあわず,フォーマットの変更を迫られたが,2003年になってカルフールは日本の顧客志向にあわせて学習し,小売ミックスへ反映させていった結果,軌道に乗り始めたプロセスについて書かれている。カルフールははじめ,フランスの基本フォーマットを日本に持ち込んだが日本に勝ることがなかった。今ではどれぐらいの水準まで,カルフールの店舗競争力が達しているかのを実証分析によって明らかにした。


理論的検討は,カルフールは内部情報を漏らさないことで有名な企業のため,ヒアリングを使わずにカルフールの日本進出における現地適応化の特質と戦略を明らかにして,流通戦略論にてらしあわせることによって,戦略行動を明らかにすることです。また,店舗競争力は特定店舗の魅力度であるため,顧客満足の水準によって測定することができる。

実証分析は以下の通りである。競合点との比較における店舗競争力を見るために,カルフール幕張店,イトーヨーカ堂幕張店,イオン・マリンピア店,イズミヤ検見川浜店の4店舗で買い物調査を行った。回収標本数は804票で,顧客交流率は80.8%で,消費者の71.3%が平日に利用できる車を保有している。カルフール光明池店,ダイエー光明池店,イズミヤの和泉中央店,泉北高島屋店の4店で806票を回収した。顧客交流率は63.5%で,63.2%が平日に利用できる車を保有していることがわかった。また,店舗全体レベルにおけるカルフール幕張店の競争力は,店舗全体満足と全体属性についての競合店舗の平均スコアとマンホワイトニー検定によるスコア分布の差異の有意差検定の結果,「店舗全体満足の水準で見ると、カルフールの店舗競争力の重要な特質は,イトーヨーカ堂とは優劣がつけがたく,イオンやイズミヤに関しては優位になる」(12ページ)と述べられている。この差は,CTAREGにおけるプラット測定によって顧客価値を推定したところ,バーゲン割引率,店舗雰囲気,食品売場満足の3つの要因が60.2%であるため,他の要因で差異がなくても,この3つの要因で優位に立てば顧客価値が高くなる。イズミヤ検見川浜店とイズミヤ和泉府中店を比べたところ,和泉府中店が優位性を持っているのは店舗年齢と物流支援体制の相違によるものである。

結論は次の通りである。平日利用できる車を保有している人が多いので,車利用による各店舗の買い回りにより顧客交流率が高くなっている。顧客価値が高いのは,カルフールの店舗雰囲気や価格訴求力が顧客志向と合致しているからである。地域市場特性に合わせて調整し個店対応をしているのは,顧客志向能力の情報を店舗業務に落とし込む柔軟性があるからである。戦略としては,店舗雰囲気と若干の価格競争力があれば,日本のスーパーや郊外型百貨店などと競争しても顧客満足が獲得できるが,物流センターが整っているイトーヨーカ堂に対しては今のところ劣位に立つ傾向があることも明らかになった。消費者は,カルフールにフランスらしさを求めているため,PB商品と輸入品の比率を拡大するであろうと述べられている。そうすることによって,カルフールは中国市場のように日本市場でも成功を収めることができると思われる。

出典:田村正紀(2003),「カルフール:日本市場進出のシナリオ」『流通科学研究所モノグラフ』No.042

投稿者 02aiko : 2005年05月13日 18:01

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