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2005年05月24日

プライベート・ブランドと小売市場(関根 1999)

要約
 最近PB(プライベートブランド)が話題を集めている。特に,価格訴求のものではなく,高品質でNBに対抗することが目的のプレミアムPBに注目が集まっている。PB開発は大手小売商が製造業との提携によって行われる。こうしたPB開発のための組織化は小売市場の競争にどのような変化を及ぼすのかをPBを題材に検討されている。

1.PBの概念
 PBは「生産者ではなく製品の再販売業者によって設定されるブランドで,稀に生産者が再販売業者の場合もある」と定義されてる。
 小売商のPBには主に3つ種類がある。「ジェネリック商品といわれるもので,商品にブランドを設定しないもの。製品に小売商の店舗名や店舗名を表すロゴを付すもの。店舗名とは別に小売商が独自のブランドを設定するもの」(161ページ)。
 PBの開発において小売商が,新製品開発の一連のプロセスをすべて自分で行う必要がない。しかし,メーカーが最終的に商品化の意思決定を行う場合,それは本来の意味でのPBとはいえない。ここでは,「PBを商業者や消費者が製品の仕様書を自ら作成し,準備した商品に自ら設定したブランドとし,その主体としては主に小売商を想定」(162ページ)している。

2.PB商品の開発とチェーンストアの発展段階
 PBを設定する小売業の多くはチェーンストアである。PB商品の開発はチェーンストアの発展と関係がある。チェーンストアの発展段階には,量的発展と質的発展がある。「量的発展とは,チェーン化によって販売量が増加する段階である」(166ページ)とされている。ここでは,集中的な仕入れにより支払い条件などで有利さを発揮できる。「質的発展は,拡大した販売力を背景にPB商品を開発する段階」(166ページ)とされている。つまり,PB商品開発には,チェーン全体の販売量が生産の採算の取れる生産量を超えることが必要条件である。そして,PB商品は低価格,低品質の棲み分けPBから,消費者の一層の信頼獲得を得て,品質や価格を引き上げ,NBと対抗できるプレミアムPB開発の方向に進んできている。

3.PBと小売市場
 PB化の進展は小売市場の上位集中化と密接な関連をしている。小売市場の上位集中化は,チェーン化による大規模を意味しており、規模の利益,範囲の利益を発揮することによりPB化を推進することが出来るからである。そして,PB開発のための小売企業と生産者の組織化により,競争形態は同一の水平段階から,垂直的にグループ化されたVMS(垂直的マーケティングシステム)間での競争へと変化が起こっている。

 最後に,従来の研究においては,PB開発のために組織化が行われた場合,競争が促進するのか減殺するのかというという視点が欠落しているということを著者は指摘している。さらに,「小売市場の集中度が高まるとPB開発は進むが,その場合,生産者市場と同様,小売市場でも寡占化の弊害を顕在化させる危険がある。どういう条件が備われば小売市場を活性化させるのか」(176ページ)ということが今後の研究課題として挙げられている。

論点
 この論文では,これからの競争は,垂直的な組織化同士の競争になるとされているが,プレミアムPBの開発においては,生産者のライバルとなる商品を開発することにメリットはなく垂直的な組織化が行われるとは思えない。

出典:関根孝(1999)「プライベート・ブランドと小売市場」『専修商学論集』第69巻,159-177ページ。

投稿者 02daigo : 2005年05月24日 14:46

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