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2005年05月06日

アドバタイジング・マネジメント:広告意思決定の理論 (D.A.ア-カ-,J.G.マイヤ-ズ 1977)

目次
第1章広告管理の領域
第2章広告意思決定
第3章予算意思決定

第1章では広告管理の領域について述べられている。具体的には広告の制度を述べ,広告文献の展望を行い,広告意思決定者が避けては通れないモデルとモデル・ビルディングの有効性を説いている。
 広告の制度として,良く知られている三つの形態があり,広告主,広告代理店,媒体がある。広告主は多種多様ではあるが,産業財広告と消費財広告,どちらに出しているかにより分類することができ,産業財広告は非消費者を含む業界紙に強く依存しており,ダイレクト・メールや見本市などによく見られる。消費財広告は消費者に対して広告するのはもちろんであるが多様な形があり,P&Gなどの包装消費財製品,GMにみられる耐久消費財,シアーズロバックによる小売業といった区別がある。広告代理店は媒体配分意思決定を行うことが多く,その報酬として広告費の15%を受け取りこれは昔から変わっていない。今後は長く変わっていない報酬の検討の必要がある。また媒体の発展は広告に影響を与えてきたが1922年のラジオ,1948年のテレビが革命的な変化をもたらし,広告の飛躍的な成長の転機をなった。
 広告の文献の展望として今まで膨大な文献が存在するが多くは学問的なアプローチがなされ,経済的な視角をもっていたり,記述的な入門的参考書がそれである。他にも社会学者,哲学家,政治家の著作などもあるが,本書のアプローチとしては「広告キャンペーンを生み出す意思決定に焦点をあてた経営管理的視角に動機づけられている」(28ページ)としており広告意思決定者が利用できる多くのモデルが利用されているが,これらは「暗示的,言語的,論理フロー,数学的,意思決定的,記述的,あるいはこれらのタイプの組み合わせ」(28ページ)であり、モデルは情報処理者,語彙の基盤,調査を導くものとして役立つとしている。
 
 第2章では広告意思決定について述べられている。広告意思決定に影響を与える要因は内部要因と外部要因があるが,内部要因は主にマネージャーが関係しなければならないもので広告の目的と予算の選択,広告表現の意思決定,選択すべき媒体の決定がある。これらの要因は他のマーケティング計画と別に行うことはできず,「広告はマーケティングの一部分でしかなく,広告努力に関係した種種の意思決定は全体のマーケティング実施計画に対して調整され,統合されなければならない」(63ページ)としている。広告意思決定に影響を与える外部要因としては,一つ目に社会的・法的制約があげられ,虚偽広告の規制の問題や社会的,倫理的判断が求められる。二つ目には競争的環境で,広告は多くものと競争しなければならない。それは同業者かもしれないし,他業種の者かもしれない。競争者に気を使うばかりで消費者をないがしろにしがちである。三つ目の要因は協力機関で,広告代理店,調査会社といったものは広告意思決定に参画する。そして四つ目の最も重要な決定要因は広告意思決定者が影響をあたえようとしている人々である。訴求対象層の動機づけと行動を理解することが広告意思決定において最も重要な要素であるとしている
 広告訴求層に働きかけるにあたって市場の細分化は欠かせない。広告訴求層を明確にしてそのターゲットにむけて広告活動することがより効果的だからである。細分化には二つの異なるタイプの戦略があり,二つ以上のグループが識別され,それぞれにマーケティング実施計画を開発する「非差別化」と一つのグループに向けてマーケティング実施計画を開発する「集計化」がある。それらの戦略においては細分化変数による分割が可能で細分化変数の選択にあたって「第一に変数は有望な広告実施計画のアイデアを刺激できなければならない,第二に細分化変数は価値あるセグメントを識別すべきである,第三に結果として出てきたセグメントは適度のコストで接近可能でなければならない」(46ページ)としている。広告意思決定者は不確実性になやまされるが,これらはマス・コミュニケーションの性質である一方的発信に起因している。そのために広告主は消費者がどのように広告メッセージを知覚する傾向があるか,消費者はいかに製品,サービス,銘柄について学習し,これらの態度にはどのような変化がおきるか,消費者に広告がどのように伝播されその過程の人的影響をも知っておかなければならない。

 第3章では予算意思決定について述べられており,「広告予算意思決定の理論的意思決定は限界分析に基づいており,簡単に説明できる。企業の支出の生み出す限界収入が単位あたりの支出増部分を上回っている限り広告予算を増加し続けるべきである」(67ページ)としている。ただ,広告支出と売り上げ間の関数決定は難しく,その理由として広告費が売り上げに影響するというのは間違いであり,また広告費と売り上げの関係の形とパラメーターの決定は容易ではないこと,最後にその関係は時間的に変化することである。限界分析のこのような問題の解決策として3つあり,1つは「意思決定の指針として経験法則に頼ることである。このようなルールはしばしば確固とした経済原則に基づいていないように思えるが,結果的に最適に近い支出をもたらす例が多い」(96ページ),二つ目は困難ではあるが,広告費と売り上げに関係づける反応関数を無理にでも決定することである。そのためには二つのアプローチがとられ,1つは実験でフィールド実験はいつくかの問題はあるが限界分析モデルが依拠する反応関数を明らかにするための最良のデータになりうる。2つめは既に行われた回帰分析のデータを利用することで今まで行われたモデルを比較することにより反応関数を決定するのを推定する一つの要素になりうる。3つめの解決策は限界分析を使うがインプットとアウトプットをより明確にするために従属変数及び独立変数の幅を広げることである。インプットには広告実施計画,訴求対象者,使用媒体などのあらゆる環境状態などが挙げられ,アウトプットは消費者が学習したこと,消費者の態度へのインパクト,購買意思決定へのインパクトなどが挙げられる。

出典:D.A.ア-カ-,J.G.マイヤ-ズ著;野中郁次郎,池上久訳(1977)『アドバタイジング・マネジメント : 広告意思決定の理論』 東洋経済新報社,1-3章(1-101).

投稿者 02taku : 2005年05月06日 17:20

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コメント

最後の出典のとこですが ページ数入れた方がいいかもしれないです。あと 本文の「、」は「,←全角」に直しましょう!

投稿者 tsukazaki : 2005年05月06日 23:43

訂正しました。すいません

投稿者 02taku : 2005年05月07日 01:37

コメントしてください




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