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2005年05月06日

カルフールの中国進出 -先発者利益の追求-(田村 2003)

要約
この論文は,中国の外資系小売業の先発者であるカルフールの中国進出における戦略を明らかにしている。カルフールは主要都市だけでなく,地方中核都市に最初の外資系ハイパーマーケットとして,売上高成長中のスーパーマーケット業界でシェアを確保し,先発者利益をねらう。中国消費市場の急速な成長で,大型店同士が近接立地して,市場を奪い合っていないので,カルフールは独占段階にあるといえる。この場合,カルフールは消費者の店舗の判断基準を自分に有利なように学習させることができる。そして,後発店舗は消費者に店舗属性を基準に評価されるようになる。そして,カルフールが中国消費者の顧客価値をどのように学習しているのか実証分析している。

理論的検討 
発展途上国で成功することが多いと言われているカルフールの海外進出の中でも「中国における外資系小売業最大の成功例」(1ページ)といわれているほどの中国進出の成功条件は何かを明らかにする。そのためにも,消費者が来店する理由と中国消費者の顧客満足の水準を以下で実証的に明らかにする。

実証分析
カルフール曲陽店と南方店と共江店の3店舗で消費者が来店する理由としてカルフールの新しい店舗属性を列挙し,複数回答方式で選択してもらったところ,「店舗面積が大きい」「商品が新鮮」「店舗が清潔」「とくに食品が清潔」(p12)というようなハイパーマーケット特有の項目があげられている。しかし,外資系の流通業である項目の回答者比率は低くなっているので,カルフールは外資系というよりもハイパーマーケットという点で中国の消費者に受け入れられていることがわかる。
 また,顧客満足の水準を調査するために,各店舗の各売り場の評点スコアの有意差検定をマンホワイトニー検定によって行った。食品売り場では,曲陽店と他店舗との間にはほとんどの点で有意差が発生するが,南方店と共江店は多くの店舗属性で有意差がなくなっている。このことから,新しい店舗では,食品売り場は標準化されていることがわかる。そして,小売ミックス要素が中核要素になっているかについて段階的回帰分析を行った。売り場満足度を従属変数とし,顧客価値を独立変数候補として,回数係数が5%水準以下で優位になった属性を店舗別に示した。

S = b1A1 + b2A2 +…+ bnAn
Sは満足度,A1~Anは属性,b1~bnはデータから推定される標準回帰係数とする。

食品売り場では,接客サービスと安全性配慮はどの店舗の属性にもなっている。それは,中国のどの地域の消費者共通顧客価値にも対応しようとしてからである。スコアからみると,衣料品売り場は低価格のベーシック商品を売り場に展開していることがわかる。生活雑貨売り場でも,すべての商圏顧客に共通する顧客価値の属性が評価されている。

この論文では,以下のような結論が述べられている。流通業の外資進出が難しい中国に進出し成功した戦略は,中央政府と交渉し,運営会社を合弁会社に転換したみかえりに,比較的短期間の間に,購買・物流センターを設立できたことによって急速に店舗展開できたことである。そして,実証分析で新しい店舗ほど評価スコアが高くなっていることから,カルフールは中国市場の顧客志向を学習しているといえる。このように顧客満足を向上させて先発者利益を追求している。このまま先発者利益を維持できればいいが、中国消費市場が急成長している今、マイカーの普及や人口の郊外化が進み、カルフールの立地独占が崩壊した時、カルフールの競争力がどれぐらいあるかによって、先発者利益が維持できるかが決まるので、店舗競争力についてがこれからの課題であると述べられている。

出展 田村 正紀(2003),「カルフールの中国進出-先発者利益の追求-」『流通科学研究所モノグラフ』No.35

投稿者 02aiko : 2005年05月06日 22:56

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