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2005年05月18日

消費者行動と広告研究(石橋 2002)

 消費者行動は,社会心理学,認知心理学,社会学,経済学,人類学をベースにした学識的な研究分野であり,消費者行動を解明する手段に広告を用いて研究を行っている。広告効果の解明には,知覚,関与,態度,記憶といった消費者行動を構成する主要な概念が用いられている。広告の目的は,消費者を何らかの形で「動かす」ことである。

広告論文の細分類
 1)広告と関与,態度
 2)広告と消費者の価格感度
 3)広告と社会学的アプローチによる消費者行動
 4)広告と社会学的アプローチによる消費者行動
 5)広告と消費者情報処理
 6)広告と消費者意識
 7)広告と心理学(認知心理学、社会心理学を含む)
 8)広告と消費者行動(消費者行動プロセス、DAGMER含む)

 広告研究との深いつながりや研究成果の多い分野として,特に消費者行動の中心的概念と考えられる「関与」と「態度」を取り上げ,「広告と関与,態度」に関するわが国の研究系譜について本文では概観している。

1.広告と関与
 広告と関与の研究では,まずKrugmanによって提示された受動的(低関与)学習理論のわが国における検証から始まり,Assaelのよる消費者のインボルブメントの度合いとブランド間に認められる差異を基準とした消費者行動の4つのタイプや,「思考」と「感情」,「ハイ・インボルブメント」と「ロー・インボルブメント」の4つの要素で構成されたFCB社の広告プランニング・モデルについて検討を加え,我が国においてもDAGMARに代表されるリニアーなモデルからサイクリカルなモデルを開発する展望を論じている(中山・清水・加藤)。「関与と広告コミュニケーション効果」の関する研究も行われており,広告関与に関する測定尺度の作成について課題として挙げられ,今後の関与研究が取るべき方向が議論されている(小嶋・杉本・永野)。消費者関与が高い場合,論理的CMが情報度の面で評価され,消費者関与が低い場合,情緒的CMが高く評価される。また,製品の関与度が高い消費者ほど雑誌広告の影響が強く,また製品への関与度が高い消費者ほど認知的メッセージの反応が強いと論じている(金)。

2.広告一般への態度
 広告一般への態度への態度研究では,まず広告機能に対する消費者評価が探索的に行なわれてきた。広告についてさまざまな角度から35の意見を集め,それに対する消費者の反応を調査し,その結果に基づいて消費者の広告に対する態度因子を求めている(小嶋・佐々木)。その後,「調査の質的低下」をある程度緩和する方策を見出し,その一環として広告に対する態度と,マスコミ接触などの関係を数量化理論で分析した結果,「利用と満足」「マスコミ非接触」「広告拒否症的態度」の3軸を抽出した研究がある(吉田・飽戸・堀・奥田)。個々のテレビCMの表現評価と購買態度やテレビCMに対する一般的な態度と関連付けて検討した研究としては,佐々木があり,「CM表現評価」から「先有傾向としての一般的購買態度」までを連結する概念モデルの構成と,その実証的分析が必要であると結んでいる。ユニークな研究として,鈴木によるフェミニズムの視点を取り入れたものがある。フェミニズム意識という新たなサイコグラフィック変数を使い,それが企業イメージ,購買意図に与える影響にどのような効果を及ぼすかを明らかにし,広告描写の目指すべき望ましい方向を検討している。

3.Aad研究
 1980年代に米国を中心に提唱されてきた概念が,広告への態度(Attitude toward the ad=Aad)である。この研究では,特定の広告物を受け手が視聴したときの態度が対象となっている。嶋村における広告に対する態度の国際比較研究(杉本・Sighn・Laroche・申)などもある。この研究では,Aad形成要因を大きく取り扱った研究(岸・嶋村,岸,青木・恩蔵・三浦・桑原15,濱岡・古川・片平,仁科・鈴木・水野)。Aadとab間の関係について取り扱った研究(田中・阿部・青木,岸,青木・恩蔵・杉本,稲葉)に大別できる。

 「関与」概念が広告研究にもたらした最大の影響は,AIDMAやDAGMARに代表される一方的かつ線形的な広告階層効果論を見直す契機を与えたことであり,消費者の広告に対するさまざまな心理的反応の重要性を明らかにし,広告研究に広がりをもたらしたことである。

出典:石橋徹(2002),「消費者行動と広告研究」 『日経広告研究所報』,35(6),16-21ページ。


投稿者 02tsukazaki : 2005年05月18日 17:47

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