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2005年05月03日

広告の理論と戦略(清水 2004)

目次
第4章 コミュニケーション・プロセスと送り手の組織,受け手の保護
第5章 広告計画のプロセスと広告予算の編成
第6章 広告媒体の特性と料金体系

第4章 コミュニケーション・プロセスと送り手の組織,受け手の保護
 第4章では,送り手から受け手に流れるコミュニケーション・プロセスについて述べられている。ソース,メッセージ,レシーバーのコミュニケーション3要素,コミュニケーションの付随的要素としてノイズ,反応,コミュニケーションの機能としてエンコーディング,デコーディング,フィードバックといった諸要素を説明し,モデルにまとめている。このプロセスを効果的にするには「情報が途中で欠落したり,歪められたりすることを防ぐことである」(110ページ)とし,「送り手の経験領域と受け手の経験領域の重複部分がより大きければ,コミュニケーションはより容易なものになるのである」(110ページ)としている。
 次に,送り手の組織として広告主,広告会社,媒体社の組織について説明がなされている。その後,消費者運動の発展,コンシューマリズムの台頭への流れが述べられ,消費者保護の具体的な中身として,ケネディーの4つの権利と消費者保護基本法が取りあげられている。ここでは消費者保護基本法の「施策の基本方向はケネディー大統領の4つの権利を満たし,さらに具体化したものといえよう」(126ページ)としている。また,CBBBとJAROの組織や活動が説明され,さらに広告の自主規制と公的規制について述べられており,自主規制については「法的拘束がなく,処罰規定もない訳であるが,わが国特有の業界相互の信用というものが,大きな抑制力となって作用している」(132ページ)としている。最後に,自主規制と公的規制の中間にあたる,自動車業界の表示に関する公正競争規約の一部を提示している。

第5章 広告計画のプロセスと広告予算の編成
 第5章では,広告計画のプロセスと広告予算の編成について述べられている。これまで行われてきた主な広告計画の研究を挙げ,その中から小林太三郎氏の考えをベースとしたモデルを提示して広告計画を説明している。「広告計画の前提条件であるマーケティング・プロフィールは『7Cs COMPASS MODEL』の各要素がそのまま当てはまる」(135ページ)としている。コーポレート,コモディティ,コミュニケーション,チャネル,コスト,コンシューマー,サーカムスタンスの7つのプロフィールである。
 マーケティング・プロフィールを把握したら,広告の基本計画を立てる。まずは,広告目標を設定するのだが,これは「具体的に数字で表せるようなものでなければならない」(138ページ)とされ,明確にされた広告目標に向かって作業を遂行し,結果を評価する。 広告目標を設定したら,広告予算の編成を行うのだが「自社で立案する場合と,広告会社を参画させる場合,広告会社に企画書を提出させる場合などがある」(139ページ)とされている。
 広告の基本計画が決まれば,次は媒体戦略,表現戦略を策定する。これらは「広告活動の2本の柱ともいえるような重要なものである」(139ページ)としている。媒体戦略から決められることもあれば,表現戦略から決められることもあるが両者は深く関連しあっている。
 媒体戦略・戦術であるが,ここではRichard P.Jonesの考えをもとにしている。媒体目標として,マーケティング計画に連動する大まかな目標と具体的な目標を設定する。媒体戦略では広告費配分の原則を決定後,使用する媒体を選択し,媒体利用の基本原則を決める。媒体戦術では,予算や媒体計画の概要を示したり,媒体費と売り上げの関連表やリーチ(到達)とフリークエンシー(頻度)その他の統計データの作成を行ったりするとしている。
 媒体計画立案の一方で行われる表現戦略・戦術は,1.これまで入手してきたデータの整理。特にコピーに直接結びつくもの(トレードマークやブランド・ネームなど)を把握しておく。2.商品のポジショニング(市場での位置づけや社会での位置づけがある)3.コピーコンセプトを決定。4.コピー・プラットフォームの作成。5.それに従ってコピー・アプローチ(ポジショニングや広告のコンセプトをコピーに接近させる)を決め,コピー・フォーマット(表現の形式)を検討。6.コピーを書く。7.作成されたコピーの代替案をコピー・テストにかけ,決定する。以上のような手順で検討されるとしている。
 制作されたコピーは媒体戦略と照らしあわされ出稿される。広告が掲出されると,計画の修正や次の計画の資料とすることを目的に広告効果測定が行われる。これには多数の方法があるが,結果は関連する活動にフィードバックされる。広告計画は,このようなプロセスを経て遂行されるとしている。
 以下,日本の広告費の推移などについて述べられ,売上高比率法,利益比率法,販売単位法,タスク法,任意法,支出可能額法,競争会社対抗法といった広告予算設定法が説明され,稲川和男氏の広告予算決定の数理モデルを提示した後,ワインバーグの広告予算決定モデルについて述べられている。

第6章 広告媒体の特性と料金体系
 第6章では,広告媒体が取りあげられている。ここでは「見込客に広告メッセージを到達(reach)させるためには伝達手段(communication carrier)が必要である。この伝達手段を広告媒体(advertising media)という」(160ページ)と定義している。
 広告媒体には,1.新聞,2.雑誌,3.ラジオ,4.テレビ,5.屋外広告,6.交通広告,7.映画・スライド,8.ダイレクトメール(DM),9.新聞折り込み広告,10.その他の直接広告,11.POP広告,12.ノベルティー,13.その他があるとしている。これまでの多種多様な分類を整理した分類として,マスコミ4媒体(1~4)と他の媒体(5~13)に大別し,さらに印刷媒体(1,2),電波媒体(3,4),場所媒体(5~7),直接媒体(8~10),POP媒体(11),特殊媒体(12),その他の媒体(13)という分類を示している。
 マスコミ4媒体については,発行・普及状況,媒体自身の種類(印刷媒体のみ),CMの挿入方法(電波媒体のみ),媒体特性,広告の種類,広告料金が詳細に説明されている。例えば,新聞では「一部当たりの人口が2.49人という高い普及率をもっている」(162ページ)ことや「全国紙の普及率も国際的にみて破格な高さである」(163ページ)が発行・普及状況である。ガバレッジ・エリア別でみた全国紙,ブロック紙,県紙,内容別にみた一般紙,スポーツ紙,専門紙,特殊紙,英字紙が媒体自身の種類である。記録性,説得性,反復性,安定性,融通性が媒体特性である。広告の掲載位置,スペース,内容,形態別による分類が広告の種類である。広告料金は各紙ごとの料金が記載された表が添えられている。
 屋外広告と交通広告については,広告の種類と媒体特性が説明されている。その他のものについては,媒体特性を中心に広告の種類にも少し触れて説明されている。また,ニューメディアやマルチメディアの出現として,CATVや衛星放送,インターネットなどについても簡単な説明がなされている。

出典:清水公一(2004),『広告の理論と戦略』 創成社,103-194ページ。

投稿者 : 2005年05月03日 16:08

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