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2005年05月28日

小売企業のグローバル戦略における現地の消費者―萌芽的研究の文献レビューを通じて―(白石・鳥羽 2003)

要約
 この論文は多文化型業態の可能性について提案することを目的としている。事例としてカルフールの日本進出があげられており,カルフールが日本の消費者の支持を得ることができなかった理由を,日本の消費者がカルフールに対してフランス的なものを期待したにも関わらず,実際には日本型のGMSと化してしまったことにあるとしている。異なる条件で生起し,発展してきた外資系小売企業は海外市場において容易に受け入れられるものではなく,何らかの差別的優位性を訴求しながら海外進出を行うと考えられるが,その優位性が現地消費者にそのまま受け入れられるとは考え難い。筆者はこの差別的優位性を海外市場においても発揮しうる手法であるとして多文化型業態を紹介し,その構築の必要性について明らかにしている。

 理論的検討は次の通りである。この論文はわが国におけるカルフールの展開事例を通じて,1つの対応策として多文化型業態構築の必要性について述べられている。日本の消費者はカルフールに日本型GMSでもフランスのハイパーマーケットでもない架空的な,日本の消費者が持つイメージにおいてのフランス的な部分を期待したが,実際には過度の現地適応化を実地したため日本型GMSと化し,消費者の不評の声を呼ぶこととなった。このことに対する対応策として多文化型業態の可能性について提案されている。多文化型業態とはエスニック型の小売店とメインストリーム型小売店が共存する社会において,エスニック型の小売店は自民族を,メインストリーム型の小売店はローカルの消費者を主なターゲットとしつつもお互いに提供し合い,異文化を提供する文化的な媒体者となり,補完的に存在するといった役割を担う小売店のことであると述べられている。筆者は海外進出を行おうとしている小売企業にとってこのような機能は有効な手段となり得るとしており,グローバル小売企業はこれまでの経験を反映するだけでなく,事前にフィージビリティー調査等を行い,現地の消費特性によって修正を試み,こうして,さまざまな規定要因の作用を受けながら提供物(オファーリング)をもたらすとしている。しかしながら,このようなプロセスを通じてもグローバル企業によってもたらされた提供物と現地の消費者が求めるものの間にはギャップが発生することがしばしばあり,それは,現地消費者の購買行動においての様々な規定要因が複雑に関連し,それが現地消費者の求めるものとして具現化されることに因ると述べられている。 多文化型業態を構築する際には,文化的に各国の消費特性を捉えることが重要であり,また,「実験的な初期展開を通じて経験的にフィードバックして行くことも必要である」(65ページ),としている。

 結論は次の通りである。多文化型業態を構築することは,グローバル小売企業が提供するものと現地消費者が求めるもののギャップを埋めるための媒体として必要であり,また,グローバル小売企業の大きな課題として,海外市場における文化的コンテクストに埋め込まれた消費特性について理解することがあげられている。

 論点は次の通りである。カルフールが日本において不評であった原因については,単にカルフールが日本型GMSと化したことのみで説明できることではないのではないだろうか。

出典:白石善章・鳥羽達郎(2003)「小売企業のグローバル戦略における現地の消費者―萌芽的研究の文献レビューを通じて―」『流通科学大学論集―流通・経営編―』第16巻第2号,49―68ページ。

投稿者 02takenaka : 2005年05月28日 16:32

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コメント

引用しすぎです。自分の言葉で記述してください(最近少々,がさつでは?)。もし,二文以上引用する場合は,インデントを下げ,ポイントをひとつ落として記しように。「 」で引用できるのは,基本的に一文ないし文の部分だけです。

投稿者 Baba : 2005年05月29日 02:57

ご指摘いただきました箇所について修正しました。
以後注意します。

投稿者 02takenaka : 2005年05月29日 18:55

改行は1行までにしてください。出典の下。

投稿者 02daigo : 2005年05月30日 14:40

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