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2005年05月28日

メディア・プランニング・モデル-広告四媒体効果算定および最適予算配分-(井上 2000)

要約
 この論文は広告メディアの多様化の中,広告目標を最大化するために広告4媒体への最適予算配分モデルを提示している。また,「本論で採用されたモデルは4媒体に限定されず,将来生じる多媒体全体に適用可能な柔軟なモデルである」(9ページ)。

1.広告効果算定モデル
 まず,広告効果算定を構築するためには4媒体の各広告GRP(出稿量)とその媒体から生じたブランド認知率やキャンペーン認知率などの広告効果に関するデータが必要であるとし,この論文では「1993年8月から97年11月のビール製品に関する135のキャンペーンに対して,30代男性に限定したデータ」(10ページ)を事例として扱っている。なお,その内53は新製品ビールキャンペーン,82はリニューアルされたビールに関するキャンペーンのものである。次に,初めに挙げた各出稿量の算定方法は,テレビは「ビデオリサーチ社が行っている個人視聴率データPMを算出する」(10ページ)。ラジオは「広告出稿統計にビデオリサーチ社が行っている日記ラジオ聴取率データの30代男性に関する結果をウェイトとして積算」(10ページ),新聞と雑誌は「それぞれの広告出稿統計にビデオリサーチ社が行っているACR調査から得られたビークル閲読率を積算」(10ページ)するとし,さらに新聞は段数別注目率,雑誌はスペース別注目率を積算する。それを元に,ブランド認知効果算定モデル,ブランド認知率最大化最適予算配分モデル,キャンペーン認知広告効果算定モデル,ブランド認知率最大化最適予算配分モデルの計4つのモデルを新製品,既存商品別に記しており,そのモデルを算出するための方法が書かれている。最後に計算より導き出された新製品ブランド,新製品キャンペーン,既存ビール製品ブランド,既存ビール製品キャンペーンの各認知率を記している。

2.最適予算配分問題モデル
 最適予算配分問題を考えるためには,「各媒体におけるGRP単価を算定し予算制約式に代入する必要がある」(13ページ)。GRP単価を算定する場合,単純平均,キャンペーン平均,最頻値の3つが考えられるが本稿では,単純平均に基づく結果のみ示されている。次に,さきに述べた広告効果算定モデルならびにGRP単価に基づいて,3億円,10億円,20億円と広告予算が与えられた時におけるブランド認知率,キャンペーン認知率を最大化する4媒体の最適予算配分を解いている。得られた結果以下の7点で,①雑誌において新製品は,ブランド認知率,キャンペーン認知率を上げる効果が期待できない。②「新聞は,既存製品のブランド認知ならびにキャンペーン認知率を伸ばす媒体としては効果が期待できないことがわかる。新聞という媒体には,他の役割が大きいと思われる」(14ページ)。③新製品に対する1媒体としては圧倒的にテレビが有効である。④既存ビール製品に対してはテレビが有効だが飽和状態になりやすい。⑤新製品に対してはテレビと新聞を効率的に併用する必要がある。⑥「既存ビール製品に対しては,テレビと雑誌を併用すると非常に効果的である」(14ページ)⑦「既存ビール製品に対する最適予算配分問題の方が,新製品に対する問題より安定していた」(14ページ)と記されている。

 結論は以下の通りである。この論文のビールのモデルでは既存製品より新製品の方が適合度は高かった。これは「広告以外の要因による影響を受ける程度が高いということが考えられる」(14ページ)。すなわち,「広告以外の要因を考慮したモデリングを広告算定に対して行った上で,新製品に関する最適予算配分問題を考えることが,既存製品に関するより重要となるであろう」(15ページ)と指摘している。

出典:井上哲浩(2000),「メディア・プランニング・モデル-広告四媒体効果算定および最適予算配分-」『日経広告研究所報』,34(5),9-15ページ。

投稿者 : 2005年05月28日 15:21

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