« 「存在」のマーケティングにおける価値と認識の探求(武井 2000) | メイン | メディア・プランニング・モデル-広告四媒体効果算定および最適予算配分-(井上 2000) »

2005年05月27日

台湾における日系百貨店の成功要因(朱・葉 2003)

要約
 この論文は,日本が不況の中,日系百貨店の成功要因について述べられている。台湾に進出している日系百貨店は著しい成長過程にあるが,台湾の一人当たりの所得に占める百貨店への消費支出がアメリカが30%と日本が20%に比べ,台湾は1.5%である。この事から,これからの成長余地がありそうである事から,日系百貨店の台湾進出を考察され,経営管理方法が具体的に分析されている。

 理論的検討は以下の通りである。1996年から2001年までの台湾百貨店業界の売上高の成長率は年平均7.05%と維持されてきていたが,2002年から落ちてきている。既存百貨店の約4割が伸び悩んでいる状況の中,日系百貨店は売り上げが好調である。そこで,台湾における日系百貨店の成功要因を検討されている。

Ⅰ.台湾の現状
 台湾政府は,地域均衡発展のために,公共施設に大量投資をしている事が流通業の発展促進につながっていると考えられている。また,2003年の台湾経済研究員の予測調査によると,台湾本島と世界の経済情勢が,台湾の流通業に最も重要な影響力を持っており,アメリカや日本などの影響に左右されやすいと示されている。もともと,1611年に日本初の百貨店が創業されて以来,次々と呉服屋が百貨店へと転換し,市場シェアを向上させたが,1972年以後は,売上高が下がっていったのがプッシュ要因となっている。

Ⅱ.台湾進出モデル
 台湾百貨店の第一号店は,1928年に日本人によって創立された「菊元百貨」であるが,当時国民所得が非常に低かったため,一般的な消費者が百貨店で買い物をすることはあまりなかった。1972年以後は,国民所得も上がってきたので一般消費者も百貨店で購買するようになったが,百貨店同士の激しい価格競争になり,大手百貨店などは日本人専門家によってノウハウを習得した。1980年以後は,台湾に多くの華僑系・外資系百貨店が進出した。その後,外資との提携ブームとなった。1990年代に入り,多くの日本百貨店が台湾の百貨店と合併した。そして,大都市以外にも中型都市にも出店され,百貨店業界の競争は激化していった。

Ⅲ.日系百貨店の経営管理モデル
 日系百貨店の経営管理モデルは大きく2つに分けられる。1つは,技術提携モデルで,日系側が台湾側に技術と管理サポートを行うと同時に,日本の百貨店商品を店頭に置くなどの店舗差別化をはかった。もう1つは合資提携モデルで,日本流通業の最も一般的なモデルとされている。コストダウンとリスクの最小化を目指すために最適なモデルとされている。経営管理モデルの成功要素は計画,組織構造,指導方式,コントロール方式とされている。まず,計画とは,合弁するにあたって,合弁相手の調査や詳しい契約内容の話し合いなどが含まれる。次に組織構造とは,本社と台湾合弁企業の地位設定と合弁会社内部の人事についてである。指導方式は,経営管理者を日本本社から派遣して日本百貨店のノウハウを普及させることである。コントロール方式は,目標を達成するために,計画や組織構造を調整することである。

まとめ
 台湾では今や百貨店とコンビニエンス・ストアの合計売上高が総合小売業の売上高の50%以上を占めている。この成功要因として,日系百貨店が開店当初よりも以下のように現地適応化してきているものが多い。組織構造や指導方式は台湾の現地従業員が運用しており,コントロール方式も現地適応化している。品揃えも差別化をはかり,ますます競争優位を高めている。また,情報システムの整備により効率性も上がってきている。今後の課題としては,台湾で日系百貨店を成功へと導いた管理者を他の事業でも活用できないかという事が述べられている。

出典:朱國光・葉翀(2003))「台湾における日系百貨店の成功要因」『流通科学大学論集―流通・経営編―』第16巻第2号,101-112ページ。

投稿者 02aiko : 2005年05月27日 23:47

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~t020026/blog/mt-tb.cgi/67

コメント

コメントしてください




保存しますか?


 
Copyright© 2005-2006 Baba Seminar. All rights reserved.