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2005年05月27日

「存在」のマーケティングにおける価値と認識の探求(武井 2000)

1.はじめに
2.方法の発展と成果
3.「意味」の発見と創造
4.「存在」のマーケティング
5.コミュニケーション活動の事例

1.はじめに
 現代のように生活が豊かな時代において,購買意思決定に際して製品が表現する「意味」や「価値」が重要になってくる。そこで,本稿では人間にとっての「意味」や「価値」を「生きがい」とし「人の幸せに貢献することのできるマーケティングの本質はどこにあるのか,また,そのためには消費者をどのように捉えていく必要があるのか」(24ページ)を論述している。

2.方法の発展と成果
 「戦後期の1950年代から60年代はマーケティングへの行動科学の導入が進んだ。そして,心理学の概念や方法などを応用することによって,消費者の言動の背後に潜む購買意思決定と関連し動機をモチベーション・リサーチなどの技法によって明らかにする研究が行われた」(24ページ)70年代以降の研究では情報処理,記憶,文脈,あるいは世界観などの認知科学を取り入れた研究がなされた。今日では多くの研究者が「生活経験」に探究している。例を挙げると「五感を刺激づけるもの(TIFFANY),エモーションの訴えかけるもの(HAAGEN-DAZS),認知や問題解決への貢献をうたうもの(MICROSOFT),身体やライフスタイルに影響を及ぼすもの(NIKE),人や文化との関係性を主張するもの(HARLEY-DAVIDSON)である」(24ページ)

3.「意味」の発見と創造
 ここでの「意味」は「対象についての知覚や解釈であり,したがって対象に内在しているというよりは,人,対象物,文脈の相互作用によってつくられる」(24ページ)ものであり「練り歯みがきと脱臭薬が,共に『身づくろいの儀式』という意味のなかに並んで位置づけられる」ように「意味」によって新たな製品グループを創造することができる。

4.「存在」のマーケティング
 人間の「存在」は家族,会社,地域社会のような「つながり」のなかにあり「存在」のマーケティングは人々に「つながり」に気づかせたり,再認識させるようなコミュニケーションである。

5.コミュニケーション活動の事例
 ここでは,資生堂,ミツカン,ベネッセコーポレーションのコミュニケーション活動の事例を紹介している。資生堂では「商品を通じての消費者との人間的接触という側面」(25ページ)に注目し,「象徴」としてのメッセージを掲げ,消費者に情報内容の「意味」を考えさせ,自然な形でマーケティング展開を理解させるコミュニケーション活動を行った。ミツカンは「鍋もの」などの家族団らんをテーマにしたテレビCMを展開することによって「家族愛をテーマとしたコミュニケーション活動」(26ページ)を行った。ベネッセコーポレーションは「顧客とのツーウェイコミュニケーションによる信頼感づくりを基軸にコミュニティーとのつながりを重視」(27ページ)したコミュニケーション活動を行った。

出典:武井寿(2000),「『存在』のマーケティングにおける価値と認識の探求」『日経広告研究所報』,34(4),23-27ページ。
    

投稿者 : 2005年05月27日 21:40

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