« グローバル事業創造と持続的競争優位性構築(高井,斉藤,竹之内,岸本 2000) | メイン | 米国におけるマーケティングとインターネット広告(丹下 1999) »

2005年05月26日

小売業国際化の推進力(田村 2004)

要約
 この論文では,既存のホランダー,カッカー,トレッドゴールド,ウィリアムズやアレキサンダーらによる小売業国際化研究が特定国ないし,特定地域の企業データにかたよっていること,また国際化企業のみを対称とした研究であり,非国際化企業を対象としていないという問題点を指摘し,自らの実証研究により,よりグローバルなレベルでの小売業国際化の推進力が何であるかを明らかにしようとしたものである。
小売業国際化を推進する要因には大きく分けて,①本国市場の飽和化,②外国における市場機会,③企業戦略特性によるものだと述べられている(4ページ)。
結論は,小売業国際化の推進力する要因となる変数は,企業規模,本国市場小売販売額成長率,専門店ダミーであり,さらに小売業国際化を進展させる推進力となる要因は,小売フォーマットの競争優位性に基づくヨーロッパダミーと,企業成長率であるとし,ホランダーの主張に加筆修正する形で「国内市場機会の消滅は,競争優位性に基づき成長力の高い挑戦者企業にとっては,国際化の強力な推進力となる。」(p,24)としめくくっている。

理論的検討は以下の通りである。既存の小売国際化研究が,特定の地域,特定国の企業データにかたよっていること,国際化企業のみを対象とした研究であり,非国際化企業を対象に入れていないことを問題点として掲げ,よりグローバルな適応可能性を見出すため,小売業売上世界ランキング100位に入る企業の1996-1998年データを用いて研究されている。
小売業国際化の推進力となる要因は大きく分けて3つあり,①本国市場の飽和化,②外国における市場機会,③企業戦略特性によるものだと述べられている。さらに本稿では,①の本国市場の飽和化,③企業戦略要因が企業の国際化を示す指標となる国際化ダミーをどのように指定するかに注目している。そこで,本国市場占有率,小売販売額シェア,専門店ダミー,本国市場小売販売額成長率,企業売上高成長年率,企業規模の6つの変数を用いて実証分析がなされている。
 
実証分析は以下の通りである。小売業国際化推進力となる3つの要因についてここでは,線形回帰モデルが,従属変数のとる値の上限,下限の境界問題等により適切でないとし,ロジットモデルを採用し,ロジスティック回帰分析が行われている。本国市場占有率,小売販売額シェア,専門店ダミー,本国市場小売販売額成長年率,企業売上高成長率,企業規模の6つの変数を用いた分析の結果,企業規模,本国市場小売販売額成長年率が最も小売業国際化影響を与えており,続いて,専門店ダミーが強い影響力を持つ。一方,本国市場占有率や小売販売額シェアなどは,小売業国際化に直接的な影響は与えないと述べられている。ここで重要なのは,企業売上高成長率についての結果であり,近年の小売国際化の研究では,市場の飽和よりむしろ,企業の成長志向,競争優位性が国際化のより重要な推進力であるという点であると述べられている。
さらに本稿では,小売業の国際化進展の推進力についても研究されており,外国売上高,外国売上高依存率,活動国数の3つの指標により分析がなされている。まず,国際化進展度により,対象企業を①進展企業,②市場拡張型進展途上企業,③市場深耕型進展途上企業,④未進展企業の4つに分類しクラスター分析を行った結果,国際化の進展パターンには2通りがあることが発見されている。1つは,活動国数を増やし,その後市場を深耕することにより外国売上高を増やしていく市場深耕型,もうひとつは,まず,活動国数を絞り,それらの市場を深耕することにより外国売上高を増やした上で,後に活動国数を増やすといったパターンがある。ここでの特徴は,ヨーロッパ小売業は国際化進展企業に多く見られ,小売国際化の先導企業であるという点である。ヨーロッパ小売業は,企業売上成長率を高めるために効果的に国際化していると述べられている。
 
結論
小売業国際化の推進力については,「国内市場機会の消滅は,競争優位性に基づき成長力の高い挑戦者企業にとっては,国際化の強力な推進力となる。」(24ページ)と締めくくられている。
 
論点
ヨーロッパ企業が非ヨーロッパ企業に比べて,国際化進展度が高い企業が多いことは述べられているが,非ヨーロッパ企業がなぜ国際化進展度を高め企業成長できていないかの要因についての言及がないように感じられる。

出典:田村 正紀(2004),「小売業国際化の推進力」『流通科学研究所モノグラフ』,No.59。

投稿者 02kayasi : 2005年05月26日 23:51

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~t020026/blog/mt-tb.cgi/64

コメント

出典の書式を確認してください。理論的検討、実証分析、結論の間は1行あけてください。必ず引用部分は「」で囲んで、直後に(p.2)のようにページ数を書いてください。

投稿者 02daigo : 2005年05月27日 01:21

出典の部分ですがまだ違うので他の人や先生のコメントを参考に早急に修正してください。

投稿者 02daigo : 2005年05月27日 18:46

コメントしてください




保存しますか?


 
Copyright© 2005-2006 Baba Seminar. All rights reserved.