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2005年05月25日

グローバル事業創造と持続的競争優位性構築(高井,斉藤,竹之内,岸本 2000)

要約
 近年,技術と市場環境が絶えず変化し続けるハイテク業界では,企業の売上げ順位は大きく変動しており,企業が持続的に成長することが困難であることを示している。この論文では,このような企業の成長差を説明するため,企業の組織能力に論拠を求め,組織能力を構成する要因を,グローバル・ベンチャーの事例を取り上げ考察することで,組織能力を構成する要因を見出すことを目的としている。ここでは事例として,日本のハイテク業界のグローバル・ベンチャーであるナナオ,アライドテレシスを取り上げている。

Ⅰ.事例研究
 まず,ナナオの事例について。家電製品の下請け企業であったナナオは,高い技術力をもって海外市場に参入する事業創造を行った。しかし,自社製品の品質へのこだわりから,価格低下という市場の変化に適合できなかった。その対応として,ナナオは品質重視の戦略のコア部分は変えずに,コスト戦略をも考慮した戦略に転換するとともに,製品についてのサービスの供給を行い他者と差別化するなど,複数の競争優位性を持つことで,持続的競争優位性を構築することに成功した。
 次に,アライドテレシスの事例について。LANについて技術先進国であるアメリカ市場に後発的に参入したアライドテレシスは,徹底したコスト戦略を行う事業創造を行った。また,「技術レベルの高い国で開発し,コスト競争力の強い国で生産し,市場の大きい国で販売する」(52ページ)つまり,低価格で質のよい製品を市場に投入するというビジネス・モデルの戦略を一貫して追求することで,競争優位性を持続させた。グローバル・ネットワークを確立することで,スピーディな環境適応を生み出したのである。

Ⅱ.事業創造から持続的競争優位のプロセス
 両企業の事業構造の成功要因として,「高い技術力を武器に製品やシステムの完成度を高めた」(54ページ)点が挙げられる。しかし,高い技術性をもったとしても,市場ニーズに対応した戦略をとらなければ市場において成功しない。そこで両企業はさらに,市場ニーズを捉えつつ,自社の強みが生かせる戦略を立てたことが事業創造においての成功要因であったとしている。そして,変化し続ける市場環境で持続的に競争優位を保つために,複数の競争優位性を持ち,市場環境の変化に対応して,強みを変えること,また市場への柔軟性を創り出すために,「環境の変化が激しいほど,逆にその環境の中で,中核となるようなモデルや,核となる戦略思考が必要となる」(56ページ)とし,一貫したコア技術の必要性を示唆している。

結論は次のとおりである。これまでのベンチャー企業は卓越した技術をもって市場でのシェアを獲得する,技術特化戦略が特徴であった。しかし,両企業は技術力と市場戦略の両方を重視する組織能力をもつことで,大企業との競争に対抗することが可能であったとしている。しかし,今回は分析した事例が二社であることから,今後の課題として,「事例を積み上げることで導き出したインプリケーションの普遍性を検証していく必要がある」(56ページ)としている。

出典:高井 透・斉藤泰裕・竹之内秀行・岸本寿生(2000),「グローバル事業創造と持続的競争優位性構築」『世界経済評論』2000年8月号,45-56ページ。

投稿者 02umeda : 2005年05月25日 23:56

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コメント

事例を積み上げることで導き出したインプリケーションの普遍性を検証していく必要がある。」(56ページ)について「・・・・である。」←閉じカッコの句点はとる。 セクションの書式:半角数字+全角ピリオド+セクションタイトル(例:1.タイトル)を参考に変更してください

投稿者 02daigo : 2005年05月26日 02:55

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