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2005年05月26日

米国におけるマーケティングとインターネット広告(丹下 1999)

1)はじめに
2)マーケティングとインターネット
3)インターネットによる販売チャネル
4)電子メディアを用いる成功原則とは
5)インターネット広告時代への示唆
6)注目される新世代の「ネットコミ」

1)はじめに
 米国では現在,インターネットをベースとした競争が激化しており,これはソフトウェアやネットワーク機器のようなハイテク部門だけでなく,小売業のようなローテク産業においても主流になってきている。インターネットによって,企業間競争の在り方が様変わりしつつあるのである。それがマーケティングの手法や戦略,さらにその一環として行われる広告活動に大きな変革を迫っていると考えられる。このような米国における風潮は日本へも押し寄せてきている。ここでは米国におけるマーケティングとインターネットとの新しい関係を最初に考察し,それを基に二十一世紀におけるインターネット広告の課題を展望している。

2)マーケティングとインターネット
 本格的な情報化社会への変遷を背景に,フィリップ・コトラーの九九年に出版された著書『コトラー・オン・マーケティング』では二十一世紀に向けてのマーケティングにかかわる重要な環境変化が次のように指摘されている。第一に,「市場の変化が加速度的に起こるので,企業はその急激な変化を認識できないことが多くなること」(19ページ)。第二に,「市場(マーケット)やマーケティングが,従来とは全く異なる原理・原則に基づいて運用されるようになる」(19ページ)ことである。

3)インターネットによる販売チャネル
 一つ目に,顧客が直接,インターネットによって,マーケターのウェブ・ページを見ることとなる,製造業者との直接的な販売チャネルが挙げられる。大成功を収めた最も身近な例がデル・コンピューターである。もう一つの販売チャネルは,電子媒体チャネルと呼ばれるものである。この販売チャネルの方が広告業とは直接的な関連が強い。なぜなら,この電子媒体業者は広告主から会費や,ページビューによって収入を得ることになり,これがいわゆるバナー広告を中心とする,インターネット広告の草分けと考えられるからである。

4)電子メディアを用いる成功原則とは
 電子市場(エレクトロニック・マーケット)は購買者にとって多くの長所と短所がある。両方の観点から,コトラーは,新しい電子時代において現代の企業が成功を勝ち取るために尊守しなければならない四つの原則を抽出している。その第一は,「顧客に関するデータベースを構築し,それを積極的に活用すること」(20ページ)。第二に,「インターネットをどのように利用すべきかに関する明確なコンセプトを開発すること」(20ページ)。第三は,「関連するウェブ・サイトに企業のバナー広告を出稿すること」(21ページ)。第四は,「顧客が簡単にアクセスできるようにし,それに素早く対応すること」(21ページ)である。

5)インターネット広告時代への示唆
 マーケティングと広告の関係の変化について,ビル・ゲイツは九九年の『ビジネス・アット・ザ・スピード・オブ・ソート』の著書の中で,「情報技術の発達によって,企業は従来のマス・マーケティング・モデルに基づく顧客管理から,ワン・トゥ・ワンをベースとする顧客管理へシフトするようになる。このパーソナライゼーションこそがあらゆるメディアに大きな影響を及ぼし,実際問題として広告はマス化されたものから個人化されたものへ全て移行していくだろう」(21ページ)と述べている。米国において,インターネットの普及を背景とするパーソナライゼーションの浸透は,マーケティングと広告の領域に革命を起こすとまで言われている。

6)注目される新世代の「ネットコミ」
 広告コミュニケーションのスタイルは,不特定多数の一般大衆をターゲットとするマスメディアを用いた一方方向的なものから,個人を主体とするインタラクティブな双方向型のものへと大きく変化していかざるをえない。そして,この変化を推進する原動力となるのがまさにインターネットであると筆者は述べている。しかし,情報技術が十年後にどうやってマーケティングの手法を変えていくかは,おそらく誰にも予想がつかないであろう。しかし,従来から最も強力な広告媒体は人間による「口コミ」であり、このワン・トゥ・ワンのリレーションシップの重要性は普遍的なものであるといえる。このことから,「電子メールを利用したいわゆる,『ネットコミ』が二十一世紀の新しいインターネット・コミュニケーションの中軸概念の一つになり,インターネット広告もネットコミの基盤の上に成り立つことになっていくのではないか」(22ページ)と筆者は推測している。

出典:丹下博文(1999),「米国におけるマーケティングとインターネット広告」『日経広告研究所報』,45ページ。

投稿者 02hidemin : 2005年05月26日 23:56

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コメント

エントリーの内容(BODY)と追記(EXTEND)の部分は,しっかり(内容的なものも含め)分けるべきかと思います。出典の日系広告を→日経に直してください。

投稿者 tsukazaki : 2005年05月27日 17:33

先程のコメントですが,筋違いなものだったら無視してくれていいです。
Bodyの部分には(1)いらないかな?って思っただけです。

投稿者 tsukazaki : 2005年05月27日 17:39

訂正いたしました。ご指摘ありがとうございます。以後気をつけます。

投稿者 02hidemin : 2005年05月28日 23:42

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